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商社業界におけるDXとは?DX導入事例やデジタル化に向けた動きを解説

上村公彦

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テーマ:DX

商社業界におけるDXをご存知でしょうか?商社業界だけにいえることではありませんが、DX推進は自社の持つ優位性を大きく伸ばすことができるほか、現状抱えている問題を解決に導きます。このDXを商社業界に導入すれば、既存の取引関係のパワーバランスから抜け出すきっかけとなり、さらなる利益拡大に期待が持てるはずです。

そこで本投稿では、商社業界が抱えている課題、商社業界のDX推進事例を解説します。最後までご覧になれば、商社業界におけるDXのあり方が理解できる上、これから目指すべき方向が明確になるはずです。

商社業界について

商社業界について
まずは商社業界について知っておきましょう。日本における商社の起源は、江戸時代末期に坂本龍馬が設立した「亀山社中」だとされています。「亀山社中」の主な業務は、運搬や貿易の仲介などであり、外国の軍備品などを販売していました。

そして現在では、幅広く複数の商品を取り扱う「総合商社」と、少数の顧客ニーズを満たす「専門商社」の役割に区分されています。また、戦前から複数分野の商品を扱っていた会社は「三井物産」と「三菱商事」の2つだけでしたが、戦後の経済復興や高度経済成長を経て、「丸紅」「住友商事」「豊田通商」などのさまざまな商社が成長を遂げています。

商社の主な仕事内容

商社の仕事内容は大きく分けて、「トレーディング」と「事業投資」の2つがあげられます。

「トレーディング」は、商材の売り手と買い手をマッチングさせ、中間業者として仲介料をいただくビジネスモデルです。その際、売り手と買い手をただマッチングさせるだけでなく、商社独自の付加価値を提供する必要があります。また、商材の仲介は調達だけでなく、加工、製造、流通、宣伝といった一連の流れにかかわることもあります。

一方で「事業投資」は、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などの資源を企業に投資し、企業価値を向上させていくビジネスモデルです。目をつけた企業に出資を行い、商社自らが経営に参画していくケースもあります。出資先の企業の利益が拡大すれば、結果として商社の利益にもつながります。

商社業界が現状抱えている2つの課題

商社業界が現状抱えている2つの課題
商社業界については大まかに理解できたでしょうか?続いて、商社業界が現状抱えている課題を2つ解説します。商社業界の課題を明確にし、それに対する解決策を模索しましょう。

非資源分野に向けた注力

商社業界が抱えている課題1つ目は、非資源分野に向けた注力です。いままでの商社業界は主に鉄鉱石や原油などの資源を取り扱っていました。しかし、最近は資源価格のコントロールが難しいことから、安定した収益が得られないという難点があります。

そこで、商社業界は非資源分野に目を向け始めました。非資源分野とは、食料品や機械、住宅、情報通信事業などのことです。この非資源分野に注力していけば、さらなる利益拡大につながると多くの商社が予想しました。結果、非資源分野で最もシェアを持っている「伊藤忠商事」は近年の業績を最も伸ばしています。

しかし、未だに資源の収益割合が大きい商社も多く、非資源分野への取り組みが課題となっています。非資源分野に対するさらなる注力が必要なのです。

有力な投資先がみつからない

商社業界が現状抱えている課題の2つ目は、有力な投資先がみつからないことです。投資の鉄則は小さく買って大きく育てることであり、多くの商社がその鉄則を意識しています。

しかし、総合商社のような大規模な企業が事業投資で利益を得る場合、ある程度大きな事業会社に投資をしなければ、管理コストがかかることから投資効率が悪くなります。つまり、投資先は大企業のみに限られてしまうため、上記で解説した投資の原則は活用できません。

また、投資先の経営陣は商社と組むことによるメリットが得られない限り、資本を受け入れないという可能性もあります。これらのことから、「商社が大きくなればなるほど有力な投資先がみつからない」という課題を抱えてしまうのです。

商社業界におけるDXとは?

商社業界におけるDXとは?
ここまで、商社業界が現状抱えている課題について解説しました。次に、それら課題を解決に導くための商社業界におけるDXをみていきましょう。DXの重要性を理解し、積極的に取り入れましょう。

従来のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用した業務効率化による、大規模なビジネスモデルの変革のことを指します。商社業界だけにいえることではありませんが、このDXを推進することで自社の持つ優位性を最大限に発揮することができます。また、既存の取引関係のパワーバランスから抜け出すきっかけとなり、さらなる利益拡大に期待が持てるはずです。

なお、商社業界におけるDXの重要ポイントは下記のとおりです。これら5種類を単独で実行する、もしくは複数を組み合わせてDXを推進させます。

  • BtoBのSaaS
  • 事業者のマッチングサービス
  • 商品のマーケットプレイス
  • SPA(製造小売事業)の延長線としてサプライチェーンを強固に垂直統合するD2Cモデル
  • オンラインを起点にマーケや製販仕のオペレーションを構築し、業界内の一事業者として取り組むOMOモデル

商社業界におけるDXの対象となる分野は、流通や資源、電力などさまざまです。また、トレーディングだけでなく、事業投資の分野でもDXは有効です。商社業界における業務の効率化や生産性向上を実現するためにも、デジタル技術やITシステムの導入が必要となります。

商社業界におけるDX推進事例3つ

商社業界におけるDX推進事例3つ
前項では、商社業界におけるDXをお話しました。続いて、商社業界のDX推進事例を3つご紹介します。DX推進事例を知って商社業界におけるDXをより明確化しましょう。

「長瀬産業」が「IBM」と協力した事例

商社業界におけるDX推進事例1つ目は、化学品商社の「長瀬産業」が米国の「IBM社」と協力した事例です。本事例では、AI技術の活用によりMI(マテリアルズ・インフォマティクス)の導入が進められました。

これまでの新規素材の開発においては、実験や試作を繰り返す必要があったため、膨大な時間とコストがかかっていました。しかし、最先端のデータ処理技術と材料科学を組み合わせた新しい材料開発の導入により、開発までにかかる時間効率を大幅に向上させました。また、このMIは革新的な素材発見につながる可能性があることから、日本だけでなく世界中から注目されています。

なお、今回共同で開発するプラットフォームには、AIが素材に関する文献や実験データを読み取ることによって、「顧客が求める新材料を推測する技術」と「顧客が求める物質の化学構造式を示す」2つの技術が搭載されています。この2種類を同時に利用して新しい素材をみつけるプラットフォームは日本初であるため、開発のコスト削減に期待が持たれています。

「伊藤忠商事」が「NTTテクノクロス」と協力した事例

2つ目の事例として、「伊藤忠商事」が「NTTテクノクロス」と協力したイノベーションをご紹介します。「伊藤忠商事」と「NTTテクノクロス」は互いに協力し、世界で初めてソフトウェアと専用端末が一体となった、小型で軽量な豚の体重推定システム「デジタル目勘(めかん)」を開発しました。

本システムはNTTグループのAI技術「corevo」の1つである「NTTテクノクロス独自の画像認識技術」と、機械学習で構築した「計測ロジック」を活用し、2.8秒ほどで豚の形状から体重を測ることができるソフトウェアです。

いままでの豚の推測は目視によって実施していたため、推定の精度にバラつきがあるほか、体重測定の豚の誘導業務は重労働でした。それら豚の推測における課題は、「伊藤忠商事」と「NTTテクノクロス」が協力開発した「デジタル目勘(めかん)」によって改善されつつあります。業務の効率化や生産性の向上につながり、それに伴い家畜農家の悩みが改善されたことで飼料の販売も増加しています。

「三菱商事」が実現しているDX事例

「三菱商事」は産業全体の変革を促進する「産業DXプラットフォーム」の構築を目指し、商社業界のDX推進に取り組んでいます。

具体的な取り組みとしては、AI技術を活用した食品流通における余剰在庫の大幅な削減、位置情報データベースを用いたドライバー不足や買い物難民の課題解決など、さまざまな取り組みを実施しています。

そのほか、産業に変革をもたらすための取り組みとして、鉱山事業で利用するフリート・マネジメント状況をデジタル化する「マイニング」、自動運転等を組み合わせた「次世代モビリティ」なども開発中です。

このように、「三菱商事」は「要求を超える成果を達成し、顧客にバリューを提供しよう」を合言葉にし、DXに関するさまざまな取り組みを実施しています。

商社業界におけるDXに向けた動き

商社業界におけるDXに向けた動き
ここまで、商社業界におけるDX推進事例を解説しました。最後に、商社業界におけるDXに向けた動きをみていきましょう。

これまでの商社業界にはDXを実現するために必要なノウハウや人材、ネットワークを十分に持ち合わせていませんでした。しかし、最近ではDXに向けた企業の動きがいくつか確認されています。

例えば、2019年10月に住友商事は「株式会社Insigt Edge」の設立、2019年12月に三菱商事は「エムシーデジタル株式会社」を設立したなど、DXを目的とした子会社の設立が行われています。

そのほか、商社機能の中心である流通領域でもDXに向けた動きは活発化しており、「伊藤忠商事」と「NTT」によるDX化の動きは世界中から注目されています。このように、商社業界全体でDXに向けた新しい取り組みが実施されていることから、商社業界の発展に期待が持たれています。

まとめ

本投稿では、商社業界が抱えている課題、商社業界のDX推進事例を解説しました。

商社業界は時代の変化に伴い、さまざまな課題を抱えています。その課題解決のきっかけとなるのがDXです。あらゆる業界で推進されているDXですが、商社業界でも多くの企業がDXの推進を始めており、今後の商社業界に期待が持たれています。

ぜひ本投稿でご紹介したDX推進事例を参考にし、商社業界におけるDXを深く理解しましょう。また、DXの成功事例をもっと知りたいという方は「日本・海外におけるDX成功事例を8つ紹介!失敗しないためのノウハウも公開」もチェックしてみてください。

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上村公彦
専門家

上村公彦(システムコンサルタント)

株式会社クラボード

新規事業のためのシステムコンサルティングおよびシステム・アプリ開発で豊富な実績。ベンチャー企業での事業開発経験で培われた「提案力」を発揮し、ニーズに対応。経営者目線でIT戦略を導きます。

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