野地板について

後藤卓志

後藤卓志

テーマ:分離発注

野地板

先月半ば頃に上棟したこの物件は先日まで構造等を担当していた大工さんが一旦抜けて、
お施主様による作業工程に移行しています。
主な内容としては、外壁、内壁、断熱材、床板です。

野地板の種類による問題点


当住宅では屋根の下地にあたる野地板を杉板にしています。もちろん無垢板です。
最近の野地板は構造用合板を使用することが一般的になっていますが、これには重大な問題が隠されています。
それは前回の投稿にも記載した水蒸気(湿気)の問題です。

野地板の劣化するメカニズム


空気に水分が多く含まれていると単位当たりの空気の重さが軽くなるため上昇していきます。
例えば、冬季はその湿った空気が上昇し、天井断熱を通過してしまうと屋根下地で外部からの冷たい熱に触れ結露します。この現象が繰り返されることで構造用合板は徐々に劣化していきます。
屋根を葺き替えたり、塗装し直したりする際に、屋根に職人さんが乗れない程ふかふかしたり、屋根を突き破ってしまう状態になっていたりすることがあります。その多くは雨漏りか、結露が原因です。
積層された薄い木材の間には接着剤が使用されているため、水分の通過を阻止したり、水分を保持することができないためです。
昨今は耐震性を確保するためと称し、屋根下地に構造用合板を使用することが推奨されている、或いは問題視されていないことが常態化されています。

現在住宅の問題点


ここで考えなければいけないのは、耐震性と耐久性についてです。
耐震性とはいつかくる大地震、または度々来る地震に対し備えること、耐久性とは気候の変化や日々の気象、昼夜の寒暖差等からくる影響に対する備えのことです。
建物は徐々に劣化していきます。耐久性に関する内容ですが、耐震性のみを追求し耐久性を蔑ろすると、新築時は充分でも、時間経過とともにいつか来る巨大地震に耐えるための耐震性も既に棄損されている状態が有りうるということです。
耐久性を考慮せずに耐震性を高めることが現在の住宅づくりにはよく見られるのは憂慮すべきことです。

解決方法


そのため、このお宅では耐震性への対応は屋根の野地板では無い部分で行うことをお施主様に提案し、耐震性と耐久性を両立して進めています。
無垢板は水分を吸放出することでバランスをとり周辺環境に適応し、劣化速度を大幅に低減させることができます。

水蒸気(水分を含む空気或いは湿気)が上昇する化学的な理屈は次回に投稿したいと思います。

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後藤卓志
専門家

後藤卓志(一級建築士)

choord一級建築士事務所

建築プロセス全体を持続可能な視点から捉える建築家。お施主様それぞれのサステナブルを具現化する。東南アジアでの植林活動を主宰し、地球環境への直接的な貢献を行う。

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