早期退職制度と「キャリア顧問」のアプローチ

遠山えり子

遠山えり子

テーマ:早期退職制度導入支援

昨年から今年にかけて、早期退職制度を導入する企業が増加しています。パナソニック、リコー、第一生命といった大企業では1000人規模、その他の企業でも15名~500名規模で発表されています。「セカンドキャリア支援」等の言葉で導入が発表されている企業もありますが、実質は条件と募集人数を設定した早期退職制度です。
大企業の場合は、現在は黒字だが5年先10年先のビジネスを見据えて、構造改革や人員配置を見直したいという趣旨のようです。
経営の考え方としては正論だと思いますが、一緒に頑張ってきた従業員を年齢や条件でくくって退職募集をかけるというのは経営側としても苦渋の決断だと思います。
また、赤字企業の場合も厳しい判断と思います。自社の商品やサービスが衰退し、持ち直そうと努力しても戻らず、株主から文句を言われながら決断した経営者も少なくないかもしれません。

一方、従業員からすれば、自分が属する会社から一方的に早期退職制度導入を発表され、混乱すると同時に裏切られたという気持ちを抱く方が多いと思います。愛着があればなおさらであり、「これからどうしよう」の気持ちで仕事が手に付かない事も多発すると思います。
これは私達の面談経験から明らかです。

●キャリア顧問のアプローチ
早期退職制度は、企業の変革期に導入される事例が殆どです。
そして応募する従業員には人事的支援施策が設置され、転職や今後のライフスタイルに対しての個別支援が行われます。
一方、残留する従業員には複雑な心境が働きます。「自分は対象にならなくてよかった」「まだこの会社に居られるんだ」という安堵感とともに、「あの先輩は辞めてしまう」「自分だけ残ってよいのだろうか」といった「サバイバーズ・ギルト」という心の状態になる事が多いです。「サバイバーズ・ギルト」とは「なぜ自分は助かってしまったのか」「自分に何かできたことがあるのでは」といった罪悪感を心理学で呼ぶ言葉です。
残留する従業員への支援まで会社側は手が回らないのが殆どですが、残留された社員の心理的ケアやキャリア支援は必須です。この支援を行わないと「サバイバーズ・ギルト」や業務負荷の偏在が起きやすく、結果的に早期退職によって組織改革を行っても生産性やエンゲージメントの低下に繋がる懸念があります。
大企業の場合は、人的リソースが豊富にあり、残留した社員向けの支援を行うことが可能かもしれません。一方で中小企業の場合は、人事担当者は退職者の事務手続きに追われ、経営者側も残留社員のケアまで至らない事が多いのが現状です。
「キャリア顧問」は専門のキャリアコンサルタントが残留社員への心理的ケアと変革期における今後の取り組み方を支援します。
早期退職制度を導入せざるを得ない状況になったのは、業界毎に個々の事情があると思いますが、従業員が減れば結果が出るのでなく、痛みを伴いながら残った従業員の士気を高め、今後の企業の成長に繋げていく方法を考えるにあたって、是非「キャリア顧問」サービスをうまく活用して欲しいと思います。

●「人的資本経営」という考え方
日本でも「人的資本経営」という意識が芽生えつつあります。
経済産業省は「人的資本経営」を「人材を【資本】として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上に繋げる経営の在り方」と定義しています。
[人的資本経営~人材の価値を最大限に引き出す~ https://www.meti.go.jp/policy](METI/経済産業省)
人的資本に関する考え方や取組は世界的に広がっています。特に日本では人口減少が進み、企業や経済を維持する為に社員ひとりひとりの付加価値を高めていく事が不可欠と思います。私達はそのお手伝いができる専門家チームです。

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専門家

遠山えり子(キャリアコンサルタント)

オフィス遠山合同会社

プロのキャリアコンサルタントチームが、組織の中で従業員との対話と傾聴を通じて現場の声を丁寧に引き出し、現場課題を可視化。適切に経営層に伝える事で人材の定着と活性化、エンゲージメント向上を支援します。

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