遺言書作成を弁護士に依頼するメリット
「遺産分割協議」とは、亡くなった人の財産をどのように分割するかを相続人全員が納得できるまで協議して決めることをいいます。
しかし、不動産があったり生前に贈与を受けた人がいるような場合、相続人全員が納得できるかたちで財産を分割することはなかなか難しいということがあります。
特に、どうやって現実にお金を払って終わらせるかというのは、なかなか当事者ではできません。そのため、話し合いから紛争へと発展することも少なくありません。
今回は、遺産分割協議の流れと、遺産分割における弁護士の役割などについてご説明します。
遺産分割協議の流れ
遺産分割協議は、「遺産、相続人調査」「遺産分割の話合いをしましょうという提案」「協議、話合い」「遺産分割協議書の作成」の順に進めていきます。
【遺産、相続人調査】
まず、遺産分割をする前に誰が相続人になるのか、また、亡くなった方にどの程度の資産と負債があるのかを調べます。不動産などは分割が難しいだけではなく、相続税の評価額と遺産分割の実務での評価額が異なるので、協議がまとまりにくいです。
あるいは、「長男はこういっているけど、本当なの?」「私があんなに介護したのに平等に分けるの?」というような気持ちのもやもやから、なかなか決められないで数年たってしまうこともあります。なるべく早く、遺産はなにか、その評価額はいくらかについて、把握しておくことが重要です。
戸籍を取り寄せて各相続人について調査を進め、亡くなった方が遺言をしている場合は、その内容も確認します。相続人に相続する気がない人がいる場合、その相続分の譲渡を受けるとかそういった法的技術も必要になります。
相続人がだれかのみではなく、相続割合についても、確認する必要があります。
【遺産分割の通知】
遺産分割協議は、一人でも欠けた状態で行うと無効になるので、全ての法定相続人が必ず参加しなければなりません。
ですので、相続人全員に遺産分割の協議(話し合い)をしましょうという提案をする必要があります。弁護士であれば、配達証明付きの内容証明郵便で手紙を送付しています。
【協議、話し合い】
そうして、全員が「そうしよう!話しましょう!」ということになれば、遺産分割協議の話合いを行います。協議はどのような方法で行ってもよいのですが、一般的には相続人が集まって話し合いを行うことが多いです。話し合いの内容は、録音や書面作成などを行い、記録に残しておくとよいでしょう。録音することは、全員で納得してから行うのがよいでしょう。
遺産分割協議の内容は、原則、自由に決めることができます。つまり、遺産から誰がどれをもらってもかまわないのです。できる限り柔軟に決めていくと、協議が紛争化することを避けることができます。
しかし、協議書の内容は「長女には500万円」「次男には800万円」「残りは長男がもらう」というように簡単にわけられるならそれでよいのですが、通常は、そうはいきません。
不動産、株式や投資信託など、売却しないとわけられないことがありますし、株をそのままもらうことにする場合、いつの日の終値で計算するのかというような問題が発生します。
葬儀代などの精算が必要ならそれも明確にする必要があります。
よくあるのは、死亡時より少し前に引きだされた預金がたくさんあって、使い込みの疑義がでてしまって、喧嘩のようになることです。もめだしてしまうと、当事者ではなかなか協議書はつくれないでしょう。
【遺産分割協議書の作成】
協議・話合いで決めた内容を記した書面を「遺産分割協議書」といいます。遺産分割協議書には署名・押印します。押印は実印で行うべきです。
署名と、実印を使った押印がない遺産分割協議書は、預貯金や不動産の相続手続きの添付書面として認められません。
遺産分割協議書は、万一、審判や訴訟などの争いが起きた場合、重要な証拠となることもあるので、専門家である弁護士に作成を依頼することをおすすめします。
また、先に株や投資信託、不動産を売却してお金に換えてしまったがほうが、分けるのが簡単であることも多いので、そういった工夫もするのがよいかと思います。遺産分割調停を申し立てているとそういったことも、スムーズに進めることができやすいでしょう。
【遺産分割協議書の保管】
遺産分割協議書は相続人の人数分作成して、全員が保管しましょう。
遺産分割での弁護士の役割
遺産分割協議では、
「自分が住んでいる土地と建物はどうしても欲しい、居住権があるはずだ」とか、
「生前、介護などで尽くしてきたから相続財産の配分を多くしてほしい」
「生前贈与されていた分を差し引いて遺産を分割してほしい」
などなど、各相続人が自分にとって有利になるように、要求を出し合う場合が多いです。
そのため、感情的になったり膠着してしまうことが、遺産が多いほどありえます。
相続人が互いに直接に交渉する場合、提案された分割案に合意しない相続人が一人でもいると、相続問題の解決ができず、遺産分割協議は不成立となります。
その場合には、家庭裁判所での調停申立を行います。家庭裁判所でも合意に至らなかった場合は、審判手続きへと移行します。
感情的な対立が激しくなるのは、
「遺産管理をしていた人が使い込んでいるようだ。会計報告がない。これでは協議できない!」
「故人の葬儀費用はあまりに高かったので遺産から支払うのはおかしい!香典についても喪主から説明がない!」
「自分が住んでいる家を売れとは、ありえない要求だ!」
などなど、それぞれ言いたいことがたくさんあるからです。
ひとりひとりの言い分としてはわかるところはありますが、これでは前に進めません。
そうなると、他の親類の集まりで相続人同士が顔を合わせるのもいやになるほど、人間関係が悪化してしまう残念な結果になることもあります。
遺産分割協議を速やかに進め紛争化させないためには、初期の段階から専門家のアドバイスを受けることが重要です。弁護士に依頼した場合は、弁護士が代理人となるので、交渉のために他の相続人と顔を合わせる必要がない点も大きなメリットといえます。
弁護士をたてるのはきちんとした遺産分割協議書をつくりたいからだという理由でかまわないわけなので、穏便に進めることもできるでしょう。
また、まとまっている方、三人などで一人の弁護士をたてて、不動産に住んでいるご長男との協議をするような使い方もできます。
弁護士費用の相場
遺産分割協議の弁護士費用は、旧報酬基準に従っている事務所が多く、着手金と報酬金が必要となります。
遺産やトラブルの有無によって料金は変動しますが、最低着手金は、東京であれば20万か30万円程度かと思われます。
協議では合意に達することができず、調停に移行した場合は、通常は追加の着手金がかかりますが、これも弁護士によっては調停になるのを見越して追加をとらない場合もありますので、契約で明らかにしておきましょう。