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松野絵里子

複雑な遺産相続に強い弁護士

松野絵里子(まつのえりこ) / 弁護士

東京ジェイ法律事務所

コラム

相続放棄の手続き

2019年12月17日

テーマ:相続・遺言

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続税

亡くなった方が会社経営をしていて借金があるような場合、相続しても結局債務を負うだけなら相続したくないですよね。そういう場合のために、、相続放棄という選択肢があります。

相続放棄することで、被相続人の借金を負うことが回避できます。しかし、相続放棄にはメリットがある反面、デメリットもあり、慎重な判断が求められます。
一方ですばやく相続放棄をしないと、債務も相続してしまうという怖い面もあるのです。知らないうちに債務まで負うなんて・・・・ちょっと怖いですよね。さらにさらに、いったん相続放棄の手続きをすませると、その後、取消すのは非常に困難です。

ですので、相続放棄のメリット・デメリット、そして、相続放棄の手続きの流れをもしものときのために、確認しておきましょう。

相続放棄のメリット

相続財産はプラスの財産だけとは限りません。被相続人(亡くなった人)の債務(借金、ローン)など、マイナスの財産が含まれていることがあります。

このような場合、誰しもプラスの財産だけを相続し、マイナスの財産は遠慮したいと考えると思いますが、基本的には相続ではそれはできません。相続するとなれば、プラスの財産、マイナスの財産ともに相続することになります。(この点、遺言であれば特定の財産だけを残してもらうことが可能です。)

被相続人にかなりの借金があり、プラスの財産(不動産とか預金、株など)と比較するとマイナスの財産のほうが大きいという場合は、速やかに相続放棄を検討したほうがよいでしょう。

相続放棄をすれば、亡くなった人の借金を負わずにすむようになります。これは、相続放棄の大きなメリットです。
被相続人が、誰かの連帯保証人になっているというケースもありますので、それも相続放棄の検討対象になるでしょう。

また、遺産分割で親族間がもめそうな場合、相続放棄をすることで、遺産“争族”に巻き込まれるのを回避することができます。遺産分割でもめだすと、その精神的なストレスは非常に大きいですし、幾度となく遺産分割協議に時間を取られるのも負担になります。こうした負担から解放されることも、相続放棄のメリットです。

負の遺産

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットとしては、やはり、遺産のすべてについて相続できないことです。遺産の中にほしいものがあってももらえないのです(住んでいる家はどうしても欲しいと思ってももらえない)。

●十分な検討が必要な場合

場合によっては、続放棄するかどうかについて、十分な配慮が求められます。

例:
父親Aさんが亡くなり、遺産を一人息子であるBさんと、父親Aさんの配偶者でありBさんのお母さんが相続することになったとしましょう。遺言書はなく、Bさんは事業を成功させているので、父親Aさんの遺産をすべてお母さんに譲ることにし、相続放棄の手続きをとりました。

「これで遺産は全部、お母さんのものになる」と安堵したのもつかのま、父親Aさんの兄妹が「遺産を分けてもらいたい」と言ってきました。Bさんにとっては叔父・叔母にあたりますが、生前、父親Aさんとの折り合いが悪く、Bさんとはほとんど交流がありません。さて、父親Aさんの兄妹の言い分は通るでしょうか。

実は、この要求は通るのです!

民法では、相続において法定相続人の順位と法定相続分が定められています。配偶者は常に法定相続人で、そして、第1順位は被相続人の子どもです。上の例では、つまりBさんです。

法定相続分は配偶者が1/2、子どもが1/2と定められています。子どもが2人いれば、各々1/4ずつになります。上の例では、Bさんのお母さんが1/2、Bさんが1/2になります。

しかし、子が相続放棄をした場合、相続放棄をした人は「相続人としてそもそも最初からいなかった」ということになってしまうのです。法律というのは面倒なものですね。

すると、第2順位の人が繰り上がることになります。
第2順位は、被相続人の両親です。
なぜなら、Bさんの父親Aさんの両親はすでに亡くなっているからですね。

すると、第3順位の人が繰り上がることになります。被相続人に子どもや孫、親や祖父母などもいない場合、兄弟姉妹が第3順位の法定相続人となります。この例では、Bさんにはまだ子どもがいませんので、父親Aさんの法定相続人は、Bさんのお母さんと、父親Aさんの兄と妹ということになるのです。

せっかくお母様にすべて相続させたいと思ってもこれでは、意味がないですよね。

相続が発生したときには、なるべく資料を早く集め、状況をよく分析し、相続分の譲渡など別の方法がよい場合もありますので、なにがよいかについては、弁護士に相談をされることをお勧めします。

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄は、自身に相続があったことを知った日から3カ月以内に手続きをしなければなりません。これは、かなり厳しい期限ですね。手続きの流れを見てみましょう。

◆1:相続放棄に必要な書類を用意します

必要になる書類は、亡くなった人の住民票除票、戸籍の附票。亡くなった人の戸籍謄本、相続放棄する人の戸籍謄本などです。生まれてからずっとの戸籍なので本籍地が変わっていたりすると複数必要です。

◆2:相続放棄申述書を作成し、添付書類を提出します

相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロードすることができます。必要項目に記入し、捺印。添付書類とともに裁判所に提出します(郵送でもかまいませんが、裁判所によって異なる場合がありますので、確認してください)。提出先は、亡くなった人の最後の住所地を管轄している家庭裁判所です。ですから、とても遠い場合もあります。

◆3:裁判所から照会書が送付されます

裁判所からの照会書には、相続放棄は自らの意思か、なぜ相続放棄をしたいのかなどの質問が記載されています。質問事項に回答し、返送します。

◆4:相続放棄受理通知書が送付されます

相続放棄に問題がないと判断されると、裁判所から「相続放棄受理通知書」が送られてきます。

◆5:相続放棄受理証明書

この「相続放棄受理通知書」だけでは他者への証明が不足する場合、「相続放棄受理証明書」を家庭裁判所から交付してもらうことができます。これは、相続放棄の受理を証明する書類ですので、念のためにもらっておきましょう。。


以上が、相続放棄手続きの大まかな流れです。

相続放棄手続き
相続放棄の手続きは自分でできないことはありません。しかし、必要な書類を自分で集めるのは大変ですし、申述書、照会書は正確に記入する必要がありますから、できれば相続放棄が適切な判断なのかも含めて、専門家に依頼したほうがよいでしょう。

特に、相続放棄は不適切なこともありますので、弁護士に相談してから判断することをおすすめします。いったん相続放棄をすると、取り消すのはとてもに難しいものです。取り消しはできないと思っていた方がよいでしょう。

この記事を書いたプロ

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