『「話せる英語」予想通り失敗の兆候あり』
こんにちは。与一の井上です。
先日徳島新聞でこのような記事が掲載されました。
『県内から東大 狭き門』
この春徳島県から東大へ合格した生徒数が、全国で最小の3人であったという記事です。
この事実だけでタイトルにある「教育後進県」というのは少し乱暴かもしれません。
「徳島県は人口が少ない分、東大合格者も少ない…?」
「地理的な条件から、東大より京大への志向が強い…?」
こうしたことを考えるかもしれません。
ですが同記事では人口がほぼ同じ福井などの県を比較対象として挙げ、東大・京大共に徳島が大幅に下回るというデータを示しています。
また同紙では翌日、『徳島の受験生 医学科49人合格』という記事が掲載されました。
記事にもあるように、「東大合格者は少なくても、医学科に進む生徒は少なくない。よって一概に学力が低いとは言えない」
ということを考えさせる狙いがあったのかもしれません。
しかし記事の最後に「決して合格者が多いとは言えない」とあるように、私もこのデータをもって徳島県の学力の低さという考えを覆すことはできないと考えます。
医学科に合格するのに高い学力が必要なのは間違いありません。ですが全国に国公立大の医学部がない県は3県しかなく、特に地方においては国公立大学医学部の地元の生徒の合格者占有率が高くなる傾向があるため、医学部医学科の合格者が多い=学力が高い、とはなりません。
寧ろより上位の大学の医学部受験をしなかったため、合格者が少なくないという側面もあるでしょう。
これらのデータから言えることは、やはり「徳島県は教育後進県である」
ということです。
皆さんはこの状況をどう思いますか?
以前よりこのコラムで徳島県の中学校・高校における学習の現状が非常にまずいということをお伝えしてきましたので、
私にとっては何の驚きでもありませんでした。
どうして徳島県は「教育後進県」になっているのか
では何故こうした状況が生まれているのでしょうか。
同紙では「原因はわかっていない」と述べられていますが、原因は恐らくこれといった1つではなく、様々な要因の積み重ねによるものであると思います。
私の考える要因を、大きく3つに分けて共に述べさせて頂きます。
以前のコラムでお伝えした内容の繰り返しとなりますので、詳細に興味を持っていただける方はそちらをお読み下さい。
①基礎学・人数調整・学区制という高校入試制度の甘さ
・“徳島の高校生”が抱える危機感の不足(『他塾でもOK! 新高1生 “塾に通うこと”の必要性』)
・参考書活用率の低さ(『塾に勝る!?参考書活用の重要性(特に新高校1年生向け)』)
・中3からの受検勉強で高校に合格してしまうこと(『第一回基礎学終了! 学区外からの流入率
変更を考える 2』)
②学校・塾問わず提供する学習内容の不足
・教員の慢性的な不足
・明らかな“学習内容不足”(『他塾でもOK! 新高1生 “塾に通うこと”の必要性』)
・塾のレベルの低さ(『良くない塾ってどんな塾』)
③生徒の意識の低さ
・目の前のテストに対し点数を取る意志が弱いこと(『定期テスト“ごとき”で点数が取れない高校
生が入試で失敗する当然の理由』)
・受験に対しての認識の甘さ(『高2の2月には合格できる大学が決まる?』『“部活動を頑張る子の
方が成績が伸びやすい”って本当?ー高校生編』)
・大学入試を意識した高校選びができていないこと(『県内高校の国公立大学への進学率/進学者数
を見る』)
全てが正しいという訳ではないかもしれません。
ですがどれも否定しきれない“事実”であり、何らかの影響を与えていると私は考えます。
どうすれば改善されるのか
それでは、この状況はどうすれば改善されるのでしょうか。
一番手っ取り早いのは、やはり首長・自治体が何らかの解決策を提示することです。
大阪市では習い事・塾代に助成金が出たり、東京都では教育に対する無利子の貸付を行っていたりと、教育資金の援助を行う自治体もあります。
また子育てに手厚い補助を行うことで有名な明石市では、小学・中学1年生の授業を少人数で行うようにしているそうです。
このように自治体が具体的な政策を実施すれば、状況が改善に向かう見込みは大きくなります。
徳島ではどうでしょうか。先月徳島県知事選があり、後藤田正純氏が当選されたことは記憶に新しいと思います。
このような状況に危機感を抱いていたため、後藤田氏が教育に関してどのような考えをお持ちなのかを注視していました。
しかし残念ながら、現在後藤田氏の公式サイトで確認できる限りでは、教育についての具体的な政策は何一つ述べられていませんでした。
どうやら徳島において現在の教育の状況に危機感を持ち、改善しようという動きはしばらく見られそうにありません。
それでは前出の福井県・富山県で進学実績の改善のきっかけとなったように、高校側の動きによって改善を期待することはできそうでしょうか。
私の考えるように大学受験を意識してなのかは不明ですが、以前からお伝えしているように、城東高校では学区外の撤廃・使用教材の変更・授業を進める速度の変化とここ数年で具体的な動きが色々と見られます。
現状県に期待ができない以上、各高校の取り組みに期待するしかないのかもしれません。
生徒・保護者はどうすべきか
私たちは自治体や高校が何か改善に向かって動くことを手をこまねいて待っているしかないのでしょうか。
少し前に、他県を出身とする、ある保護者の方とお話をする機会がありました。
その方は「徳島に来て受験や大学に対する認識の甘さに驚いた」と仰っていました。
少し乱暴な言い方をしますが、子供の受験に対する認識の甘さは、保護者の認識の甘さに由来すると私は考えています。
何かを変えていくためには、誰かがどうにかしてくれるのを待っているだけではどうにもなりません。
まずは現状を正しく知っている人を増やすことです。
私の拙いコラムを読んで頂いている方は、きっと教育や受験に対する意識の高い方であるとお見受けします。
どうかこうした事実をご自分の中だけに留めず、ご家庭やご自分のコミュニティで少しでも多くの方と共有して下さい。
私達一人一人の力で、少しでもこの現状を変えていきましょう。