賃金とCPI(消費者物価指数)
皆さんこんにちは。
今回は法則を用いるときの注意点を書いてみたいと思います。
私も15年ほど前から書籍で知識を得ていましたが、世の中にはメジャーな法則がたくさんあります。
代表的なものでは、「ランチェスターの法則」、「パレートの法則」、「ナンバーワン企業の法則」等々です。
そんな折り、ちょうど今から5、6年ほど前に、このような法則をテーマにしたセミナーがあり、より知識を深めようと実際に参加したことがあります。
講師の先生は、某大手メーカーB社で営業実績を重ね、現在はコンサル会社を経営されている方でした。
選択と集中
パレートの2:8の法則などを営業職に当て、分かりやすく実体験の話を交えながらの構成で、これまでに学んだことを復習するいい機会となりました。
講師の先生は、このセミナーの内容からして、例外なく合理的な判断をされる方だと思いました。
先のパレートの法則を当てはめたのは、営業担当エリアの販売店(当時130社)の売り上げ実績で、上位2割の販売店に注力し、残りの8割を切り捨てるというものでした。
他には個人的に手間の掛かる商品は、注文があっても敢えて販売しなかった、という徹底ぶりです。
要するに、非情&合理的に「選択と集中」で実績を上げた経験談というもので、この方法を行った3年間の在籍で実績を上げ、その後は起業して現在に至っています。
これらは理論的には有効な方法で、合理的な解決方法なので、そこに至ったことも一定の理解はしています。
地方の中小にはリスキー
…ですが、私の心の中は曇天でした。
この方法で気になったのは、これまで諸先輩方が苦労して開拓してきた顧客の8割を、この方の一存でバッサリ切り捨てたという点です。
百歩譲って、自らの力で開拓した顧客ならまだしも、そうではありませんでした。
これまでの努力の成果を合理性だけで割り切り、ご本人は営業で結果を残して3年で辞めています。
その後はどうなったのでしょうか?
この想像はさほど難しくはありません。
営業担当者が交代した場合、一般的には顧客との相性が生じるもので、約20%程度は顧客が流動的になる可能性があります。
次に、毎年約20%程度の顧客は自然消滅で目減りすると言われています。
残された方がこの穴を補うにしても、一度一方的に切り捨てられた顧客が喜んで戻って来るでしょうか?
つまりこの方が退いた後、最悪の場合「焼け野が原」だったかもしれません。
分かりやすく書くと、『会社がこれまで掛けたコストを水泡に帰し、先輩が築いた資産に傷を付け、自分だけひと時の業績と次へのステップアップの機会を得て、バトンを渡す後任者に全てのしわ寄せを行った』ということになります。
つまり結果的には、目先の目的を達成するために、多くの犠牲を出すかもしれない方法です。
ただし、この方が在籍していたのは誰もが知る大手メーカーで、一部門のこれくらいの失態では、会社へのダメージはそれほど大きくなかったのかもしれません。
気を付けなければいけないのは、中小がこのような方法を拙速に真似るのは、大きなリスクを伴う行為だと言えます。
他には、首都圏と地方との条件の違いも考慮する必要があり、顧客を選べるほど商圏の余裕があるかどうかでも違ってきます。
もしこの法則を地方に当てはめ、有効活用するとすれば、法則を応用して効率を高めつつ、将来に繋がる次の一手を打つ必要があると考えられます。
大切なのは本質
近年、政府が国内の労働生産性を向上すべく目標を掲げています。
それもそのはず、2019年の統計で日本は1人当たり労働生産性が、OECD加盟36カ国中21位でしたので。
⇒ 労働生産性の国際比較2019
常日頃の時間的な制約がある中、即効性がありそうなこのような方法が持てはやされることもあります。
しかしながら、仮に一時的には労働生産性を向上することに寄与したとしても、根本的な本質を置き去りにすれば、その代償はあまりにも大きいのではないでしょうか?
論語にこのような言葉があります。
「子曰く、人にして遠き慮り(おもんぱかり)無ければ、必ず近き憂い有り。」
(先々の事を考えて行動しなければ、禍(わざわい)は身近な所からやってくる)
いつの時代も『本質は不変的な真理』ということを、念頭に置きたいものですね。
このようなコラムが、少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。