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賢い相続のポイント⑩【遺言の基礎知識】

石原幹司郎

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テーマ:相続の専門家だけが知っている


【遺言の基礎知識】

遺言とは

遺言とは、個人が築いてきた財産を、有効かつ有意義に活用してもらうために、一定の方式のもとで行う遺言者の意思表示です。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方式が定められています。

遺言でできる事項

(1)身分関係に関する事項(認知、未成年後見人の指定など)
(2)遺産の処分に関する事項(遺贈•、相続させる旨の遺言、信託の設定など)
(3)相続の法定原則の修正(相続人の廃除、相続分の指定・指定の委託、遺産分割方法の指定・指定の委託、特別受益の持戻しの免除、遺留分減殺方法の指定など)
(4)遺言の執行に関する事項(遺言執行者の指定など)
(5)その他(祭祀主催者の指定、生命保険受取人の指定・変更、相続人相互間の担保責任の指定、一般財団法人の設立・財産の拠出など)

成年被後見人の遺言についての特則

意思能力のない者の遺言は無効です。具体的基準として、通常人として正常な判断力・理解力・表現力を備え、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識できる意思能力を有していることが必要です。民法はその基準を満15歳としています。しかし本人又は取引の相手方を保護する等の目的で行為能力を制限する成年後見制度においては次の条件のもとに遺言をなしうる場合があります。なお、後見人の不正行為を防止するため、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者もしくは直系卑属(子や孫など)の利益となるべき遺言は無効とされます。(民法966条1項)
成年被後見人の遺言(第973条)
1  成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2  遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書による遺言にあっては、その封紙にその旨の記載をし、署名し、印を押さなければならない

遺言の撤回

遺言者は、その生存中は、いつでも、何度でも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。たとえば遺言の方式に従って「○年○月○日付遺言書による遺言の全部(又は△△の部分)を撤回する。」とすればよいのです。また、次の場合は遺言が撤回されたものとみなされます。
①後の遺言で前の遺言内容に抵触する遺言をした場合
②遺言の内容と、その生前処分とが抵触する場合
③遺言者が故意に遺言書を破棄したり遺贈の目的物を破棄した場合

遺言の種類と方式

遺言の種類と方式は次のとおりです。なお、同一の証書で複数の者が遺言をすることは禁止されています。
(1)自筆証書遺言の方式
自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、作成した日付、氏名を自分で書き押印して作成します。誰にも知られず、いつでも手軽に作成することができ、費用もかかりません。ただし、方式に不備があると無効とされる危険性が高く、紛失したり、偽造・変造されたりする危険もあります。また、家庭裁判所の検認を必要とします。
(2)公正証書遺言の方式
公正証書遺言は、遺言の内容を公証人に伝え、公証人がこれを筆記することによって公正証書てして遺言書を作成する遺言のことをいいます。法律のプロである公証人が作成することによって、内容的に適正であり、意思確認もしっかりされるため、後に無効などと主張をされる可能性が少ないといえます。また、家庭裁判所の検認の手続きが不要であり、公証人が原本を保管するので破棄・紛失や隠匿される危険性がありません。
(3)秘密証書遺言の方式
遺言の存在は明らかにしておきたいが、その内容を生前は秘密にしておきたい場合に、秘密証書の方式によることができます。作成した遺言書に遺言者が署名(自書)押印します(遺言の文書は自筆である必要はなく、ワープロでも代筆でも構いません)。遺言者がその証書を封入し、証書に用いた印章で封印します。かかる遺言書の入った封紙を証人二人立会いのうえ公証人に提出して、それが自分の遺言書である旨およびそれを書いた者の氏名と住所を公証人に申述するか遺言者が封紙に自書します。公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載し遺言者及び公証人並びに証人二人とともにこれに署名し押印します。なお秘密証書遺言は、執行時に家庭裁判所の検認を必要とします。また、公証人が保管することもないため遺言書の滅失・隠匿の心配があり、実際にはほとんど利用されていません。

遺言書を必要とする事例

以下のような状況の人は遺言書の作成を特にお勧めします。
(1)子供がいない夫婦の場合
夫婦で築いた財産も遺言書が無いと、普段交流のない亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹(あるいは甥姪)に権利が発生します。たとえば財産が夫婦の暮らす土地や家屋だけであった場合、その不動産を売却することにもなりかねません。きちんと遺言書を作成しておけば、財産全部を配偶者に相続させることができます。
(2)息子の嫁などに介護の面倒をみてもらっている場合
息子の嫁には相続権はありません。年老いて何年も親身に介護してくれた息子の嫁に、形として残る財産を遺贈したりメッセージを残したいと思われる方はたくさんいらっしゃると思います。遺言書は、相続人以外の人にも、財産をわけてあげたり、お礼の気持ちをあらわすことができます。
(3)内縁の妻(夫)がいる場合
事情により婚姻届の出されていない事実上の夫婦関係を内縁といいます。たとえ何十年も連れ添った内縁であっても、婚姻届が出されていなければ、法律上の配偶者とならず、相続権はありません。そこで、内縁の配偶者に財産を残したい場合は、遺言書を作成することによって遺贈することができます。
(4)精神上の障害のある子供がいる場合
親亡き後問題に備え、スムーズな遺産承継のために遺言書は有効な手立てとなります。
(5)事業承継と遺言書
自分の事業を特定の子供に継がせたい場合など、遺言は、事業用財産や株式等のスムーズな承継対策となり、あるいは経営理念の伝承に寄与することができます。
(6)行方不明の推定相続人がいる場合
将来の相続人の中に、音信不通の者がいる場合、あらかじめ公正証書遺言において遺言執行者と相続する者を指定したり、ケースにもよりますが、その相続人を廃除する等の遺言書を作成しておけば、預貯金の引き出しや、遺産分割協議の進行がスムーズに行えます。

ぜひ当事務所ホームページも、ご覧ください。
石原法務司法書士事務所
http://ishihara-souzoku.com/

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石原幹司郎(司法書士)

石原法務司法書士事務所

少子高齢化社会の相続問題に向き合うプロフェッショナル。空き家問題、任意売却、相続財産の管理・処分も手がける地域密着型の司法書士

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