貼り薬はとても便利だけど、注意が必要なこともあります
富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。
今日は錠剤の粉砕や粉剤の一包化についてお伝えしたいと思います。
目次
1)「粉剤」とは?
「粉剤」というのは、もともとお薬が粉状のものになっているお薬のことです。「粉剤」と言っても、お水に簡単に溶けるように工夫された「ドライシロップ」や溶解性を高めたり飛び散らないように加工された「顆粒剤」などがあります。
粉剤は、錠剤の飲めない小児用のお薬として取り揃えられている場合が多くあります。また飲み込む力の低下した高齢者にあえて粉剤が処方されることも少なくありません。
2)計量する
計量はmg単位で行います。秤(はかり)としては電子秤が用いられることが殆どですが、電車秤の場合、ボタンを押すと10mgの単位から確認することができます。
実際のところ薬剤師業務の指針である調剤指針では、粉剤の秤量(ひょうりょう)もしくは計量の誤差に関して、全量では2%以下、個々の分包の誤差に関しては10%以下という基準が示されています。
全量で2%以下ということは、例えば小児のお薬として全量12gのお薬の秤量では、多くても12.24g以下のお薬を計量しなければなりません。ところがg単位しか表示されないとなると、12.4gも四捨五入で許容されてしまうことになるのです。よってこのような正確な秤量の出来る計量器が必要になってくるのです。
このように計量した粉材を分包機にかけて、シート状の分包紙に印字して調剤することになります。
3)ヒート包装からお薬を取り出す
お薬の入ったシートのことを専門用語で「ヒート包装」と言います。英語で表現するとHeat Sealで、熱を用いてお薬を密閉したシートのことを指します。このヒートからお薬を取り出すのには、指先に力と、繊細な力の入れ具合が必要です。慣れないとお薬がどこかに飛んでいってしまいますし、量をこなすとなると指にかなり負担がかかります。
その点、このトリダスという取り出し器はとても有効で、女性であっても手軽かつ確実にヒートからお薬を取り出すことが出来、重宝します。
このような便利な道具のなかった時代の薬剤師は大変でした。長年の調剤で指の形が変わってしまう例もあったそうです。
4)錠数を確実に確認する
これは粉砕時に限りませんが、錠剤のシートに表示されているバーコードをiPadで読み取って、処方箋通りかどうかをAIを活用してチェックすることも怠っていません。
5)錠剤を粉砕する
場合によっては元々、錠剤として薬局に取り揃えてあるお薬を粉砕して一包化することもあります。やはり錠剤の飲めない小児や高齢者にこの手続きが取られることがあります。
6)粉砕機を用いてお薬を粉砕する
薬剤師が粉剤を混合するときに用いられる乳鉢(にゅうばち)というものがあります。粉砕する錠数が少ない場合には、この乳鉢と乳棒(にゅうぼう)を用いて潰すこともあります。
しかし多くの場合、粉砕には、特殊な粉砕機を用いています。ボタンひとつで粉砕してくれます。
この粉剤の分包機の原理は、粉砕したお薬を均等に円盤状の皿に落とし、360度の円盤を分包する包数で割って落とすというものです。
この場合、注意しなければならないのは、粉砕前の錠剤の数を確実に処方通りにしておくことです。粉砕後は、もともと何錠の錠剤だったか分からなくなってしまうためです。ふじやま薬局では、錠剤の写真を保存しておくことと、錠剤を取り出した錠剤のシートの殻を監査チェック時のために保存しておくことなどで対応しています。
7)粉砕したお薬からコーティングの膜を取り出す
錠剤を粉砕する場合に気を付けるべき点は、第一には、間違って取り揃えをしない点です。その上で細かな点としては、錠剤を粉砕したときに出るゴミの処理の問題を解決することです。
錠剤の中には、お薬の成分を閉じ込めて安定性を持たせたり、有効成分が胃酸で分解されることを可能な限り防ぐために錠剤がコーティングされているものがあります。粉砕した時にこのコーティングが剥がれて、ペラペラの紙片のようなものが粉の中に紛れ込みます。
コーティングには、成分の苦味などを隠す(マスクする)ために糖などが用いられていたりします。そのままでも体に害はありませんし、場合によってはお薬の苦味を誤魔化すために粉の中に入れておいた方が良い場合もありますが、見た目の問題が生じることがあります。「何かゴミが入っている」と考えて、お薬を飲めない方もいらっしゃいます。
そのため、コーティング剤を取り除いた方が良いと判断した場合には篩(ふるい)にかけてこのコーディング剤を取り除きます。
通常、錠剤には、お薬を見分けるために「刻印」(こくいん)がなされています。この刻印が薄く剥げて、粉の中に何かゴミが入り込んでいると感じる方もおられます。なので錠剤の粉砕後の処理も結構きを使うことになります。(粉砕したお薬の中に紛れ込んだ刻印の文字)
8)分包機を用いて粉材を調剤する
粉剤は、別々に一包化されて製品化されたものもありますが、お薬によっては患者様の体重に合わせてコンマ単位で微妙に調整が必要なものもあるため、薬局内で、その患者様一人一人に合わせた分量で一包化する事があります。その際、分包機という機械を用います。
こちらの機械では、粉材と錠剤を一緒に分包することも出来ます。
お薬の服用を出来るだけ守っていただけるために薬剤師はさまざまな配慮をさせて頂いてます。