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正誤を見抜くこと

栗原憲二

栗原憲二

テーマ:在宅医療、ナラティブ医療

富士市富士宮市にて在宅医療に携わっている薬剤師の栗原です。

1)インターネットによる知識社会の登場

最近はインターネットの世界にも多くの情報が溢れかえるようになりました。インターネットが始まって少しずつ情報が仮想空間上に集まり始めて、本(や週刊誌)では得られない情報がそこそこ手に入るようになったのが今から20年近く前だったと思います。

ビットコインが登場したのも私は覚えています。当時はこんな仮想通貨が物品の購入にも当てられるようになるとは思ってもみませんでした。

健康やお薬についての情報も、Googleで検索したり、SNSを開くことで、一人一人の関心に適合した形で集まるようになっているのですから本当に驚くべきことです。

何よりchatGPTの登場はびっくりです。コンピューターがインターネット上の情報を集め、編集して情報を提供してくれ、意味のある文章を提示してくれるのです。私も時々使いますが、インターネット上の情報を整理するのに役立てています。

2)読書は人との対話だと思う

問題は、情報を提供してくれるchatGPT自身は、文章の内容を全く理解していない、ということ。

最近購入した本は、明らかにchatGPTに書かせたような内容でびっくりしました。私はその著者の本をこれまで何冊も読んで来たので、「これは本人が書いたものではなく、本人がchatGPTに書かせた文章に手を加えたものだということに途中で気がつきました。

気がついた時点で、中身を疑い始めて、一見、正しそうなことが書いているけど、事細かく吟味する意味はないと思いました。

本を読むということは、私は古い考えかもしれませんが、著者との対話だと思うのです。

会えば大変な方がしっかりと自分1人に向き合ってくれるもの。それが私にとっての「本」というものでした。その著者の考えの偏り方、情報バイアスの様子・・。ある意味ネガティブなそういった要因も、私にとってはとても大切な情報だったのです。

3)問題は責任の所在

何か自分の専門があるのであれば、そのことについてchatGPTに調べてもらってこれを読んでみると、「ああ、なるほど」と思うこともあるし、「??」な点も少なからず出てきます。

人間だってもちろん間違えます。だけどそれは責任が伴います。私のお薬の服薬指導も、間違ったものであれば私の責任です。

でもchatGPTが書いた文章には、責任が伴っていません。それをどう利用するかが問われることになりますが、その道の専門でなければ識別できないことは少なくありません。「なんでもとことん調べる」という人に出会ったことがありますが、専門家とは、一つの分野に一万時間費やした人と見るのはそれほど間違ってはおらず、一般的な知見からインターネットの情報でそこに辿り着くのは容易ではないはずです。

4)識別するのが専門家のする仕事


映画『ブレードランナー』では、学者レベルの知能と感情の芽生えを持った人工知能であるレプリカントが人間社会を脅かします。人間と彼らを見分けるブレードランナーが地球を守る物語です。

chatGPTはますます、能力を飛躍的に高めていくでしょう。あと数年経てば、あらゆる専門家の知識を凌ぐかもしれません。私も正誤の判別ができないお薬の情報も出てくるかもしれません。

それでも、現状のところ、人工知能は言葉の意味を理解することは出来ないのですから、「判別する」という務めを専門家は担っていると思います。

その他、
1)目の前の一人一人に目を向け、個性と人間性を重視すること
2)顔の表情など、データ化出来ていないない情報から仮説を立てること
3)人格的に交わること


など・・、当面は人間にしかできそうにないことを大切にして、私もインターネットに対してはブレードランナーしていきたいと思います。

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栗原憲二
専門家

栗原憲二(薬剤師)

ふじやま薬局

店舗は整形外科並びに内科、透析医院の処方の授受を受けているため、普段から幅広いお薬を取り扱っています。在宅では、個人宅並びに施設担当。富士・富士宮地区を幅広く車で訪問させていただいております。

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