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キャリアとは(3)

福島治男

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テーマ:キャリア




キャリアにおける好き嫌いの重要性



弊社コラムでお伝えしている「キャリアとは」の第3回目です。おさらいとして、第1回では「職業」と「キャリア」との違いについて、職業は個人から独立して存在するのに対し、キャリアは個人から独立して存在し得ないものであることをお伝えしました。第2回では、キャリアを理解する3つのポイントとして、①生涯にわたる連続的な過程であること、②空間的な広がりをもつこと、③自分らしい生き方を志向していること、を挙げています。

厚生労働省はキャリアをどう説明している?


キャリアコンサルタントは、「職業能力開発促進法」という法律で定められた資格です。この法律では「キャリアコンサルタント」や「キャリアコンサルティング」に関する説明はありますが、「キャリア」そのものを説明する文言は見当たりません。
一方で、厚生労働省のホームページ内の政策ページ「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」では、キャリアを次のように説明しています。

「キャリア」とは、過去から将来の長期にわたる職業経験や、これに伴う計画的な職業能力の連鎖を指すものです。「職業生涯」や「職業経歴」などと訳されます。


私が前回お伝えした3つのポイントのうち、②空間的な広がりや③自分らしさについてはあまり読み取れませんが、①生涯にわたる連続的な過程であることは明確に示しています。また、「職業生涯」や「職業経歴」といった漢字を使った訳語を加えているのは、日本の政府機関のこだわりなのかも知れません。

日本人研究者が定義した「キャリアとは」


キャリアに関しては海外の研究者の名前が多く知られていますが今回は、神戸大学の金井壽宏名誉教授によるキャリアの定義をご紹介します。『働くひとのためのキャリアデザイン』(PHP新書、2002年、p.140)では、次のように記されています。

成人になってフルタイムで働き始めて以降、生活ないし人生(life)全体を基盤として繰り広げられる長期的な(通常は何十年にも及ぶ)仕事生活における具体的な職務・職種・職能での諸経験の連続と(大きな)節目での選択が生み出していく回顧的意味づけ(とりわけ、一見すると連続性が低い経験と経験の間の意味づけや統合)と将来構想・展望のパターン」というのが、われわれ自身によるキャリアの定義である。あまりに長いので、私は通常、「長い目でみた仕事生活のパターン」と言っている。



非常に詳細な定義であり、ご自身でも「あまりにも長い」としたうえで、「長い目でみた仕事生活のパターン」という簡潔な表現も提示されています。

食べ物や行動、そしてキャリアにも、私たちは好き嫌いがある


金井先生のキャリア定義がこれほどまでに長い理由については、書籍の中で5つ挙げられています。一般の方にはやや専門的に感じられるかもしれませんが、キャリア支援に携わる方や、会社の経営者の方には、ぜひ一度目を通していただきたい内容です。会社を経営する意義について、新たな気づきが得られるかもしれません。ここでは、そのうちの1つ、3つ目に挙げられている理由に少し触れておきます。これは、先ほどの短縮表現にも含まれている「パターン」という言葉に関わるものです。私はこの「パターン」の重要性を、「好き嫌い」という言葉で説明しています。

「好き嫌い」という言葉から、多くの方は食べ物を思い浮かべるのではないでしょうか。お腹が空いてコンビニに入ったとき、手に取る食べ物は、その人の好みに少なからず影響を受けているはずです。それと同様に、日常生活における選択――たとえば移動手段や休日の過ごし方――も、自分の好き嫌いの影響を受けています。もちろん、常に「好き」を優先できるわけではありませんが、行動の軸として確かに存在しているものです。
キャリアにも私たちは「好き嫌い」があり、新たな選択の場面で無意識のうちに影響を与えているのではないでしょうか。ただし食べ物ほど単純に、何が好きで何が嫌いかを口にできないようにも思います。

自分のパターン(好き嫌い)を探る重要性は高まるばかり


「キャリアとは」というテーマでよく用いられる比喩に、轍(わだち)があります。キャリア(career)がラテン語の「車道」に由来するという話は、さまざまな解説で紹介されています。これまで歩んできた轍(軌跡)を振り返ると、そこには一定のパターンがあり、それを将来の展望に活かすことができるという考え方です。

変化の激しい時代を表す言葉として「VUCA」が広く知られるようになってから、すでに10年ほどが経ちました。その不確実性は、むしろ増しているようにも感じられます。COVID-19やロシアによるウクライナ侵攻、さらには中東情勢などのニュースを通じて、私たちの生活が大きな影響を受けていることを実感する場面も少なくありません。だからといって、流れに身を任せるだけでは、自分らしさや生きる意義を見失ってしまう可能性があります。こうした時代だからこそ、自分なりの方向性を持つことが重要です。その方向性とは、自分の「好き嫌い」にほかなりません。言葉で明確に表すのは難しいかもしれませんが、その積み重ねこそが、これまで歩んできたキャリア(=職業生涯・職業経歴)に見出すことができるはずです。そして「何をしてきたのか」だけでなく「なぜそうしてきたのか」という問いが、とても大切になります。職業経歴そのものだけでなく、その職業経歴を選んだ理由に注目するという視点です。

今回は、金井壽宏先生のキャリアの定義をご紹介しながら、「パターン」という概念に注目し、「好き嫌い」という観点からキャリアを捉えました。この「好き嫌い」については、またの機会に触れたいと思います。

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キャリアデザイン・メンタルサポート株式会社

製造業での会社員経験を生かしたキャリアコンサルティング。丁寧な傾聴で相談者の自律的な成長を支援します。組織課題を可視化することで、働く人と企業が共に成長できる環境づくりに貢献します。

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