【事例紹介】希望の間取りと法規制を両立させる建築士の考え方
構造設計だけの観点から言えば弱い壁がいたるところに配置されているのがベストです。しかしそれでは「窓をもっと大きくしたい」「窓の数を増やしたい」といった要望が満たせません。窓を増やせば、その分だけ耐力壁の量が減り、建物の強度は低下します。ここで多くの現場では、数少ない壁を高強度化するという選択がとられます。しかし私は、その前にできることがあると考えています。
構造設計と意匠設計は、一般には別々の担当者がそれぞれ進めていくものです。骨組みを考える人と、間取りや外観を描く人が分かれているため、意匠側の要望が構造側に届いたときには、もう高強度化するしかない段階になっていることが少なくありません。これはつまりコストアップにつながります。
一方で私は、その両方を自分一人で担っています。構造設計一級建築士を取得したうえで、意匠設計も同時に進める。この二刀流だからこそ、耐震性能を確保しながら、間取りやデザインを犠牲にしない設計ができるのです。
たとえば窓の話であれば、建物全体のバランスに配慮して窓を配置する、上下階で窓の位置をそろえるといった工夫があります。図面を描く段階で構造の理屈が頭に入っていれば、こうした調整は設計の中で自然に織り込めます。結果として、過剰な補強によって無駄なコストがかかるのを防ぐことができます。自由度が高く、効率的なプランニングができるのは、二つの視点を一人の頭の中で行き来させているからにほかなりません。
この考え方は住宅に限りません。工場や倉庫では、柱や梁といった構造部材が太いので、機械同士が干渉しないよう必要な有効面積、いわゆる内法を計算したうえで骨組みを決めていきます。柱や梁が目立たないよう収納やカウンターを造作したり、洗濯室とキッチンを一直線でつないで家事動線を整えたり、木材のぬくもりにあふれるリビングや家族の気配が感じられる吹き抜けを設けたり。安全性の裏づけがあるからこそ、思い描く空間に踏み込んだご提案ができます。
広々とした空間がほしい、外の景色を臨む大開口がほしい。そうした理想の建物と、安全性を備えた骨組みを両立させることが、私が二刀流にこだわり続けている理由です。


