【事例紹介】希望の間取りと法規制を両立させる建築士の考え方

注文住宅を計画する際、木造にするか、鉄骨造にするか、それともRC造にするか、この部分でご相談を受けることがよくあります。木造は費用を抑えられると聞いた一方で、鉄骨造やRC造のほうが頑丈で長持ちするという話も耳にして、結局どれを選べばよいのか分からなくなってしまった、という方は少なくありません。
インターネットで調べても、木造は地震に弱い、RC造は結露しやすいといった、断片的な情報が散らばっていて、余計に迷いが深まってしまうこともあるようです。さらに総費用のことだけでなく、将来のメンテナンスのしやすさや、建て替えや増築のしやすさまで考え始めると、なおさら一つに絞りきれなくなってしまいます。
とはいえ、実際にご相談にいらっしゃる方の多くは、木造や鉄骨造という言葉は知っていても、その違いが暮らし方にどう影響するのかまでは、あまりイメージできていない印象があります。構造の話は専門的で分かりにくいと感じてしまい、工務店やハウスメーカーに言われるがまま決めてしまう方も少なくないようです。
優劣ではなく、暮らし方に合わせて選ぶ
結論から言うと、木造・鉄骨造・RC造のどれが優れているかという単純な優劣はなく、建物の用途や規模、求める空間、それに予算のバランスによって、その方に向いている構造は変わってきます。そのため、どれか一つを最初から決めてかかるのではなく、実現したい間取りや空間と照らし合わせながら選ぶことが、後悔のない構造選びにつながると考えています。
私自身、ご相談をいただいた際には、まず構造の希望を伺うよりも先に、どんな暮らしをしたいか、どんな空間を使いたいかを詳しく伺うようにしています。同じ延べ床面積の家であっても、家族の人数や暮らし方、将来の使い方によって、心地よいと感じる空間は変わってきます。
その暮らし方に合わせて骨組みを考えたほうが、構造を先に決めてしまうよりも、結果として希望に近い間取りに落ち着くことが多いというのが、これまでの経験からの実感です。また、構造の種類を決め打ちせずに話を始めたほうが、最終的に選べる選択肢が広がることのほうが多いと感じています。
それぞれの特徴と選び方
木造は、比較的工期が短く、対応できる職人の数も多いため、現場で仕様を調整しながら進めやすいという特徴があります。
今手掛けている幼稚園の改修工事では、老朽化した既存の建物を、認定こども園として使えるように建て替える計画でした。相談にいらっしゃった時点では、木造にするか鉄骨造にするか、施設の側でも判断がつかない状態でしたが、工事内容と工費を検討したうえで、工期の短さと対応できる職人の多さ、それに現場での仕様変更のしやすさから、木造での建て替えをご提案しました。
一方で、大きな空間を柱なしで確保したい場合や、階数を重ねて延べ床面積を稼ぎたい場合には、鉄骨造やRC造のほうが構造的に無理のない計画になることもあります。
鉄骨造は木造よりもスパンを飛ばしやすく、木造よりコストを抑えながら大きな開口部を確保したい場合に選ばれることが多い構造です。
RC造は遮音性や耐火性にも優れていますが、木造や鉄骨造に比べて工期が長くなりやすく、費用も高くなる傾向があります。
それぞれ部材同士の組み方、いわゆる「納まり」が異なるため、扱い慣れているかどうかで提案できる幅も変わってきますが、木造・鉄骨造・RC造のいずれも扱ってきた経験があると、間取りのご希望を伺いながら、どの構造であれば無理なく実現できるかを、その場である程度絞り込んでいくことができます。
また、構造の種類ごとに専門の事務所が分かれている場合、複数の候補を比較検討しようとすると、それぞれに別々の相談をして回る必要が出てきますが、一つの窓口でまとめて比較できることは、検討する側にとっても負担が少なくて済むはずです。
構造を先に決めてしまうと起きること
やってしまいがちなのが、費用の安さだけを理由に構造を先に決めてしまい、そのあとで間取りを無理やり当てはめようとすることです。木造でコストを抑えたつもりが、希望する天井高や部屋の広さを実現するために、結局は梁や柱を太くする必要が出てきて、当初の想定より費用がかさんでしまうこともあります。
反対に、頑丈だからという理由だけでRC造を選び、思っていたよりも建築費が膨らんでしまい、内装や設備にかけられる予算が削られてしまうというケースも見てきました。
構造の種類を決める前に、実現したい空間や用途をできるだけ具体的に伝えていただき、そこから逆算して構造を検討したほうが、遠回りに見えて結果的には無駄がありません。予算に応じて構造を決めること自体は自然なことですが、決める前に、その構造でどこまでの間取りが実現できるのか、逆にどこは諦める必要が出てくるのかを、具体的な図面のレベルで確認しておくことをおすすめしています。
イメージだけで構造を選んでしまうと、後になって希望とのずれに気づいたときには、すでに計画が進みすぎていて後戻りしにくくなっていることもあります。着工してから構造を変更することはほぼ不可能ため、迷ったまま前に進めるより、早い段階で疑問をぶつけておいたほうが後々の安心につながると思います。
それぞれの構造にある思い込み
木造は地震に弱い、火に弱いという印象を持たれている方も多いのですが、構造計算や耐火の仕様をきちんと積み重ねれば、鉄骨造やRC造と同じように、耐震性や耐火性を備えた木造建築物をつくることは可能です。
先ほどの幼稚園の改修工事でも、木造でありながら耐火構造が求められる条件があり、通常12.5ミリの石膏ボードを、屋内側と屋外側にそれぞれ2枚ずつ、合計4枚重ねて張る仕様を提案し、採用にいたっています。
反対に、RC造や鉄骨造であればメンテナンスがほとんど要らないと思われがちですが、RC造は防水や外壁の補修、鉄骨造は錆への対策など、木造とは違う形でのメンテナンスが必要になります。
このように、構造の種類そのものよりも、その構造をどう設計してどう維持していくかのほうが、建物の性能を大きく左右すると感じています。構造ごとの違いを正しく理解したうえで、自分たちの暮らし方や優先したいことに合わせて選んでいただければ、木造だから、あるいはRC造だからという理由だけで後悔することは少なくなるはずです。
同じ木造でも、扱う事務所によって納まりの引き出しの多さは違いますし、鉄骨造やRC造についても同様です。構造の名前だけで判断せず、実際にどのような建物を手がけてきたのかを尋ねてみることも、依頼先を選ぶうえで役に立つはずです。
まとめ
木造・鉄骨造・RC造のどれが正解ということはなく、実現したい空間と条件に応じて選ぶことが大切です。構造の種類にとらわれず一緒に考えられる相手を見つけることが、後悔のない家づくりの近道になるのではないでしょうか。
・木造/鉄骨造/RC造のどれにするか迷っている方
・費用と実現したい空間のバランスに悩んでいる方
・構造の種類にとらわれず、幅広い選択肢から提案してほしい方
お問い合わせはこちらからどうぞ:https://archilibra.jp/


