冬の肌トラブル対策
〈漢方(中医学)の考え方とよい食べ物、体験談〉
国際中医師 薬剤師の植松光子がお答えします。
~内容~
【1】漢方で生理痛をやわらげ、妊娠しよう
【2】命を支える栄養 気・血・水
①気の流れをよくする
②水の流れをよくする
③血の流れをよくする
④血を滞らせるとどうなる
【3】怖いドロドロ血、瘀血をとる方法
①冷やさない
②運動
③大きな声で笑う
④ストレスを溜めない
⑤早く寝る
【4】アトピーが漢方でよくなると内膜症と生理痛もよくなる不思議
【5】生理痛によい漢方と食べ物
【6】その他
①性交痛を改善する漢方と食べ物
②習慣性流産の予防に夫婦生活を楽しみましょう。
【7】体験談 喜びの声
①ひどい生理痛、子宮内膜症の方が瘀血をなおしたら1年で妊娠、出産
②漢方を飲んでひどい生理痛がなくなり、体外受精に向かって進めます。
【1】漢方で生理痛をやわらげ、妊娠しよう
妊娠することは、良い土に良い種をまくのと同じようなことです。生理の色が紫色、また塊がたくさんあるのは、畑で言えば、粘土質の土に石ころがたくさん混ざっているようなものです。子宮内膜症で子宮から月経血がはがれるときに痛むのは無理にはがされているからです。そして無理にはがされた内膜は傷がつき卵は着床しにくくなります。
月経血を見ればよい内膜かどうかがわかります。経血が綺麗なさらさらした赤い血液で、塊がなければ内膜は修復されています。そうすれば卵が着床するベッドの準備はでき、妊娠の可能性は大きくなります。
【2】命を支える栄養 気・血・水
①気の流れをよくする
「気」とは体の力のもとであり、エネルギーです。気は食べ物から絶えず作られています。
「気」が不足すると疲れやすく、冷えやすくなります。
「気」が停滞するとストレスが溜まり、胸やお腹が張ってガスが溜まりやすくなります。生理も早く来たり、遅くなったりします。基礎体温もガタガタしてよい卵ができにくくなります。
②水の流れをよくする
「水」とは身体のすべての水分のことを言います。体内の水分だけでなく、汗や、唾液なども含みます。全身を巡って潤し、一部は血液になります。
年齢とともに体内の水分は減ってくるので、眼や皮膚は乾燥し、口は渇き、体はほてり、基礎体温の周期は早くなり、低温期は体温が高くなりがちです。
③血の流れをよくする
「血」の源は食物です。栄養物質を全身に送り滋養と潤いを与えます。血が少ないと、肌や髪はカサカサします。また「血」は心身を安定させる働きがあります。
不足すると不安状態になり、眠りも浅くなります。
生理の量も減り、子宮内膜が薄くなるので卵は着床しにくくなります。
血の流れが停滞すると全身の血液はドロドロしてきます。経血も粘っこくなり、暗い赤や紫に近い色になります。経血に塊が混じるようになり、痛みも伴うようになります。経血は子宮内膜がはがれたものです。経血を見れば内膜の状態がわかります。
④血を滞らせるとどうなる
「気」と「水」の流れが悪いと「血」も停滞し「瘀血(おけつ)」となります。
「瘀血」になると、血の流れが悪いので、血はドロドロして粘っこくなり、経血は暗い色になり、進むと紫色になり、固まります。それは経血の塊やチョコレート嚢腫などです。
子宮の出口が狭い場合も経血が膣を出るときに痛みを感じることがあります。
ドロドロ血「瘀血(おけつ)」がサラサラなきれいな赤い血になると生理痛は軽くなり、妊娠しやすくなります。
【3】怖いドロドロ血、瘀血をとる方法
①冷やさない
身体が温かいと、血の流れがよくなります。酵素が働くからです。
例えば、南国の果物に含まれるたんぱく分解酵素プロテアーゼが肉を柔らかくするように、人の体内でも多くの酵素が働いて血液を流れやすくし、血の塊を溶かしてくれます。その酵素は体温と同じ37度から38度でないと十分に働きません。
血をさらさらにする酵素は血の塊を溶かし、スムーズに経血を外へ押し出してくれます。子宮内膜をはがす体内の酵素もよく働いて、痛みもなくはがれます。しかし冷えると酵素がうまく働かず、身体はホルモンの命令で無理にはがそうとするので、きれいにはがれず子宮の傷が深くなります。子宮の傷が深くなると着床しにくくなり、妊娠できない可能性があります。
●冷え対策: 体温以下のものは絶対飲まないようにしましょう。とくに生理中は厳禁です。胃の下は子宮だからです。中国のお母さんは娘が生理中冷たいものをとると「死んじゃいますよ!」と大きな声で怒るそうです。
へそ出しルックなど、若いと元気なので、カッコよければ寒くても我慢してしまいます。冷えて生理痛を引きおこし、将来子宮内膜症で苦しむことになるかもしれません。
「首」という字がつくところを温めましょう。手首、足首、首。
寝るときは肩を冷やさないよう、肩にバスタオルなど掛けて隙間風を防ぎましょう。
特に冷える人は靴下の重ね履きもよいです。靴下は、足首はゆるゆるで、肌に当たるところは絹、外側はウールで空気の層を作ると厚い靴下を履くより柔らかな温かさで体が温まります。夜寝る時も真冬は靴下の二枚重ねが熟睡できます。
②運動
毎日運動を。速足で歩き、血流を良くしましょう。
③大きな声で笑う。
「わっはっは」と笑うと横隔膜が動くので、その周りの胃腸、肺、肝臓、子宮すべてが動き、血流がよくなります。
④ストレスを溜めない
赤ちゃんが欲しい、と考え過ぎるとそれがストレスになります。
私が10年来研修に行っている中国南京の不妊症の漢方、人間国宝の夏 桂成先生は、訪れる患者さん全員に「心を静かに」とおっしゃっています。
痛みのある人は生理が来るたびに憂うつになります。私は「女性に生まれてよかった」と思える人生を女性すべての方に送ってほしいといつも願っています。
生理痛があると「女性に生まれなければよかった」と思う方もいます。それは悲しいことです。難しい症状の方も来店され、今まで述べた養生法で多くの方の生理痛は改善できると思っています。
⑤早く寝る
中医学では、昼は「陽」、夜は「陰」と考えます。「陰」の時間は身体に水分や栄養を与える時間です。子宮の内膜は乾燥すると固く柔軟性を失い、ねばねばして月経血として膣から出るときに痛みを起こしやすいのです。夜は早く寝て身体に水分や栄養を蓄えることが重要です。
【4】アトピーが漢方でよくなると内膜症と生理痛もよくなる不思議
アトピー性皮膚炎は長年の炎症で血が熱をもち、長い間に瘀血となります。肌は赤黒くほてり、ごわごわします。内膜症も赤黒い経血の塊が出て同じ瘀血です。
アトピーの人には生理不順、生理痛が多くみられ不妊も多いのです。アトピー症状を治していくと血熱がとれ、瘀血もとれ、肌も驚くほどきれいになると同時に生理痛、生理不順も治り、自然妊娠される方もいます。このことは拙著「アトピーを治して妊娠する本」<農文協>に詳しく書いてあります。
【5】生理痛によい漢方と食べ物
漢方
養生法と同時に以下の漢方薬などを飲むと効果は早いです。痛みの軽くなった方、すっかり消えて妊娠できた方は多くいらっしゃいます。錠剤、カプセル、煎じ薬などがあります。
●当帰(とうき)せり科の植物 甘く、辛く、温める性質を持ち、血を増やし、生理の痛みを取ります。婦人科の聖なる薬と言われます。甘いシロップがあり、豆乳に混ぜると抜群においしい。
参考 植松光子著「どうせ食べるなら、美のもと 薬膳スイーツ」
●水蛭(すいてつ) 田んぼにいるヒルを乾かしたもの。頑固な肩こりの時、ヒルに血を吸わせると肩こりが楽になります。ヒルジンという成分が血中に入り、固まった血をほぐすからです。瘀血の固まった血を溶かすので瘀血の症状に効果的です。
中国のことわざに「飛んでいるものは飛行機以外、四つ足のものは机以外食べられる」とあります。漢方薬も同じです。健康でいられるよう5000年来、昔の人がいろいろなものを食べて、試して効果があるものが漢方生薬として残り、いまだに使われているのです。
●山稜(さんりょう)カヤツリグサ科の根っこ。瘀血の人の無月経、生理痛、産後の瘀血の腹痛などに用いられます。食べ過ぎの腹痛にも使われます。 写真:カヤツリグサ
●莪朮(がじゅつ) ショウガ科 苦く、辛く、温める。「気」の流れを良くして瘀血をとるので無月経、生理痛、打撲による腫れ、食べ過ぎの胃のもたれにも使います。
食べ物
①主に気、血の流れをよくするもの、体を温める作用のあるものを取りましょう。
料理は温かいものを。アイスなど冷たいものはやめましょう。
●気の流れをよくするもの
紫蘇・玉ねぎ・ピーマン・キャベツ・にらなど。
●血の流れをよくするもの
小松菜・しし唐辛子・茗荷・サンザシ・桃・いわし・さんまなど青魚。
●身体を温めるもの
にら・エビ・マグロ・シナモン・八角・ウイスキーなど。
②よい卵子を作る食べ物
卵子が育つためのタンパク質の吸収を手助けするのに微量ミネラルが必要です。
微量ミネラルは人が体内で作ることができず、食事や健康食品から補います。
亜鉛は発育や成長を助ける大事な微量ミネラルです。
亜鉛を多く含む食品は、牡蠣、肉類、魚介類、ナッツ類などに含まれますが、牡蠣がダントツに多く、100g当たり13.2mgです。牡蠣を毎日とるのは難しいので健康食品で渡辺オイスターがあり、ウエマツ薬局では安心しておすすめしています。
③鉄分・・女性は生理や出産、授乳で不足しがちです。
不足するとうつになりやすいことが知られてきました。生理中や経血過多の人は貧血になりやすく、また便秘にもなりやすいのです。
鉄分が含まれる食べ物は、レバーや牛もも肉などの赤みの肉、かつおやまぐろなどの赤身の魚、赤貝、豆類や小松菜、ほうれん草などがあります。
健康食品では、ヘム鉄入り、サンザシ、プルーンで妊娠中も飲める「ヘムロイヤル」が喜ばれています。
【6】その他
①性交痛を改善する漢方と食べ物
性交痛で人知れず悩んでいる方は多いことでしょう。原因であげられるものの一つに膣の乾燥がありまます。
ドライアイやアトピーで乾燥肌の人に膣の乾燥による痛みを訴える人が多いようです。
また内膜症は瘀血ですので内膜は固く潤いが不足しがちです。
このような乾燥や瘀血体質の方には「腎」の働きを良くし潤す力のある食べ物や亀の甲羅のゼリーや潤す力のある漢方生薬の配合された漢方薬を飲むと潤ってきて痛みがなくなり喜ばれます。
食べ物:山芋・むかご・黒豆・なめこ・桑の実・カシューナッツ・いか・うに・うなぎなど
漢方生薬:山薬(山芋)・枸杞の実・亀の甲羅(べっ甲)・地黄・田七人参・山稜・莪朮など
②習慣性流産の予防に夫婦生活を楽しみましょう
習慣性流産の原因の一つである「免疫性流産」は女性の身体が受精卵の中の男性染色体を異物と感じ、排除しようとする免疫過剰から起こることが判明しました。
その予防に頻度の高い夫婦生活が提唱されています。夫の精液が少しずつ女性の体内に入ることにより、免疫ができて、異物と勘違いしないようになるのです。生理期以外、毎週2,3回は夫婦生活を楽しみましょう。夫婦とも仕事で忙しく疲れてできない、という声も聞かれます。どうしたら改善できるか、生活を見直すチャンスでもあります。
【7】体験談 喜びの声
①ひどい生理痛、子宮内膜症の方が瘀血をなおしたら1年で妊娠、出産。
②漢方を飲んでひどい生理痛がなくなり、体外受精に向かって進めます。