冬の肌トラブル対策と漢方
副題:月経時の激しい運動、プールでの冷えは月経痛、子宮内膜症の原因になるかもしれません。
●子宮内膜症の原因は月経血の逆流?
今多くの女性を悩ませている子宮内膜症。
激しい痛みを伴い社会生活などQOLの低下を招き、不妊症の原因にもなっています。
子宮内膜症の原因の一つに「逆流説」があります。
月経血の大部分は、膣を通じて体外に排出されますが、一部は卵管を通じてお腹の中(骨盤内)に逆流します。
月経血中に存在する剥脱した子宮内膜組織や細胞が、この逆流月経血とともに骨盤内の臓器や組織に付着し育つことで、子宮内膜症になるといわれています。
これを月経逆流説と言い、現在の最も有力な内膜症の原因仮説です。
(以上日本内分泌学会 HPより)
卵巣内で発生し、古い血液が溜まればチョコレート嚢胞となり、出所のない月経血は激しい痛みを引き起こし、がん化することもあります。
また肺の周り尿管、腸管などに付着すれば、それぞれ月経期間に血痰、血尿、血便を起こすことが知られてきました。
注:「月経」は医学用語です。今は「生理」と表記するのが一般的です。
●逆流の原因
それではその逆流とはどのようにおきるのでしょうか?
これに関して定説はありませんが、月経の時の激しい運動も引き金になるのではないか?という説があり、植松がツイッターに載せたところ、大きな反響がありました。
その多くは
★体育の授業の水泳の時間に、コンクリートの床に座って見学をさせられ、冷えて月経痛がひどくなった。
★水泳の授業を休むことを許可されず、タンポンを付けて水泳をさせられた。
★水泳を休む代わりに運動場を10周走らされた等々。
★また高校のクラブは名高い強豪校だったが、当時の部員の半数は不妊症で、当時のメンバーが集まると監督を恨む発言が出る。
★体育の授業を休みたかったが、男性の先生なので言い出しにくかった。
などのコメントが多く寄せられました。
体育の授業のことだけでなく、通常の学校生活、部活の上で不満に思っていることが数多く述べられ、いかに多くの女性が辛い思いを抱えているか、改めて考えさせられました。
また「中高生女子における月経痛の程度」NHK首都圏ナビ
(日本子宮内膜症啓発会議、平成28年度スポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題プロジェクトより引用)
によると、月経痛があると答えた生徒のうち
1日寝込む2%、
勉強・体育が辛い15%、
鎮痛剤を飲んで我慢している35%。
実に半数以上が日常生活に支障をきたしています。
これらは月経困難症と呼ばれ、子宮内膜症などの病気の原因になっている可能性があるといいます。
●月経痛のある女子の子宮内膜症発症率は2.6倍
海外の研究では月経痛のある女性が将来子宮内膜症を発症する確率は月経痛のない女性の2.6倍である、という報告があります。
●漢方の考え
漢方の考え方は女性の月経期間の体をとても大事にします。
特に初潮から1,2年、水泳は絶対によくありません。
月経時は血液が減ることで冷えや寒さが侵入し、さらに水泳で冷えて、寒さが深くとどまると、血の循環を悪くさせて血流が滞ります。
そして瘀血(おけつ)の状態になると、様々な病気の元となります。
(注:瘀血とは中医学用語 鬱血や血行障害などで血の流れの滞り、またはそれによって起きる様々な症状や疾病を指す言葉)
冷え→月経痛→子宮内膜症→不妊症の遠因
月経時、水泳などで冷えると血流が滞り、様々な病気の元となります。
子宮内膜症もその一つです。
子宮内膜症の人は月経の時に大きな血塊が出ることがあります。
この血塊が瘀血(おけつ)です。
また、冷えないようにする、氷水や冷たいものを飲まないというのも常識です。
子宮内膜症の痛みは冷えからも引き起こされます。
子宮が冷えると血流が悪くなり、酵素の働きが低下するので、子宮内膜が月経の際にスムーズにはがれず、深い傷を作る原因になります。
細胞が深く傷つけば出血も多くなり過多月経となります。
その出血を止めようと子宮はさらに収縮力を強めます。
それが月経痛の原因です。
以上からも分かるように月経の際、プールに入ったり、冷たいコンクリートの床に座ることは月経痛の原因となり、子宮内膜症の引き金になりかねません。
さらに不妊症の遠因ともなるでしょう。
月経は女性特有でありますが、痛みや量の多少は女性同士でも他人のことはわかりません。
ましてや男性にとってはよくわからない領域です。
また「月経のことを口にするのは恥ずかしい」という心理が働きます。
月経で体育の授業を休みたい、と伝えることも遠慮しがちです。
そこで今私にできること。
一つはツイッターで月経について多くのことをつぶやき、啓蒙していくこと。
もう一つは学校薬剤師の先生方にお願いしたいことがございます。
多くの女子生徒が月経痛や月経の量が多く不安な思いで通学していること、
男子生徒にも月経のことを理解してもらうことなどを、担当校の先生方や生徒に話をしていただきたいのです。
どうぞよろしくお願い致します。
川越市薬剤師会広報紙「やげん」令和4年6月 投稿原稿より
投稿 ウエマツ薬局 薬剤師 国際中医師 植松光子