創業時の融資 -経営革新等支援機関を利用する場合ー
損益計算書は1年間会社が営業活動をして、会社がいくら儲かったのかを表す書類です。つまり、会社が1年間にどれだけ売上を上げて、どれだけ仕入れて、経費がどれくらいかかったのを表す一覧表です。
売上や受取利息、雑収入などを「収益」、仕入や給与などの様々な経費を「費用」といいます。会社が1年間に、いくら儲かったのか、言い換えると、いくら利益を上げたのかを計算することが損益計算書の目的であり、「利益(儲け)=収益-費用」となります。
さらに、損益計算書は単に利益を計算するだけではなく、利益の中身をもう少し細かく区分し、その内訳を表示します。ひとくちに利益といっても、それが毎期経常的に発生する利益なのか、災害による損失などの特別、あるいは偶発的な要因による損益なのか、といったことが分からなければ、その企業が持つ本来の収益力を推し量ることはできないからです。具体的には、損益計算書は会社の損益を5つの損益、すなわち、売上総利益(粗利益)・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益に分けて表示します。次にこれら5つの利益について、八百屋さんを例にとって、解説していきます。
売上総利益(粗利益)とは、売上から売上原価を引いた利益です。八百屋さんでは、野菜や果物を仕入れて、これを販売するわけですが、仕入れた野菜や果物のうち、売れたものが売上原価となり、売れ残ったものは在庫となります。例えばリンゴを1個100円で10個仕入れし、1個200円で7個売れたとすると、売上は1,400円、売上原価は700円、売上総利益(粗利益)は700円、在庫は300円となります。このときの粗利益率は50%となります。この売上総利益(粗利益)は、その会社の商品がどれだけの付加価値を有しているかを表します。この八百屋さんの例でいえば、野菜や果物を1か所で買える利便性、食の安全性、流通の手間、取扱商品に対する知識(旬の野菜やそれを使った料理などなど)といった付加価値を単なる野菜や果物に付加して販売しているわけなのです。
この売上総利益(粗利益)から、販売管理費(従業員の給与、店舗や事務所の家賃、通信費、水道光熱費、広告宣伝費、販売促進費、その他雑費等)を差し引いた残りが営業利益です。仮に売上総利益が会社の商品力を示すとするなら、営業利益はそれを売るための人件費や店舗家賃、広告宣伝や販売促進にかかる費用を加味した利益ですから、営業の効率性を含めたその企業の収益力を示しています。
経常利益は、営業利益に営業外損益を加味したものです。営業外損益とは、毎年経常的に発生する収益と費用ではあるものの、本来の商品やサービスの売買以外の収益と費用の対応関係を示します。代表的なものが、受取利息や支払利息といった金融収支です。預金が少なく多額の借金をしているような会社はこの金融収支が大きくマイナスになりますが、無借金経営の会社であればプラスになります。金融収支は一般的にその企業の基礎体力を反映していまので、経常利益は企業の基礎体力を含めた収益力、つまり毎期、経常的にどれだけの利益を獲得することができるのかを表します。
この経常利益までが企業本来の収益力を示す利益の階層なのですが、これに特別損益を加味したものが税引前当期利益です。特別損益は、固定資産売却損益等のような、臨時的あるいは非経常的な要因による損益ですから、その年度だけに発生する固有の損益です。ですから、税引前当期利益は、その年度の全ての要素を含む総合的な収益力を示すと言えます。
そして、最後にこの税引前当期利益から法人税、住民税及び事業税を差し引いたものが当期純利益です。これが、貸借対照表の「純資産の部」の「利益剰余金」に蓄積され、企業に留保され、その分だけ企業の自己資金が増えていることを示しています。したがって、当期純利益は結果として会社がどれだけの利益を獲得することができたのか、どれだけ利益によって資金調達することができたのかを示すと言えます。
ここまで説明してきたように、損益計算書は利益の階層構造になっています。つまり、上から売上総利益(粗利益)、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期純利益の5つの利益が階層構造になって表示されているのです。