起業家のための簡単な決算書の読み方(3) -貸借対照表③-
今回は、貸借対照表の「純資産の部」について、少し詳しく見ていきます。
ここまでの説明の中で、何度か「純資産の部」=「自己資金」と説明してきました。では、「自己資金」とは、一体何なのでしょうか。「自己資金」には大きく2つの意味合いがあります。1つめの意味は、会社を設立するときに株主が出資した資金で、会社が最初から持っている資金。そうれから、増資により、株主が追加で出資した資金です。2つめの意味は会社の利益の累積です。例えば、100万円の商品を仕入れ、200万円で売り上げたなら、会社の資金は100万円増加します。つまり、会社が自分で稼ぎだした資金です。これが、もう1年間続けば、会社の資金は更に100万円増加します。このように、会社は利益を積み重ねて、成長していきます。
「純資産の部」は大きく「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」に分かれます。「資本金」とは、会社を設立するときに株主が出資した金額と、その後に増資をして増えた金額があれば、その合計額になります。次に、「資本剰余金」は、内容的には「資本金」となるもののうち、「資本剰余金」という項目に振分けしているものですが、中小企業の決算書ではあまり出てきませんので、説明を省略します。この「資本金」と「資本剰余金」が先に述べた1つめの意味合いの「自己資金」になります。
「利益剰余金」は、会社の設立以来の利益です。例えば、設立から5年間毎年100万円の利益をあげ続けたら、「利益剰余金」は500万円になっています。この「利益剰余金」が先に述べた2つめの意味合いの「自己資金」です。
まとめると、「純資産の部」は株主が出資した「資本金」「資本剰余金」と、会社が稼ぎ出した利益の累積である「利益剰余金」から構成される。入門段階では、これで十分ではないかと思います。
最後に、「資本金」と「借入金」の違いについて述べておきます。「借入金」には返済義務があり、「資本金」には返済義務がありません。会社に出資した株主は、会社が成長すれば、これを売却して利益を得ることができます。会社が倒産した場合には、保有する株式の価値は0になってしまいますが、個々の株主は自分が出資した金額以上の責任は負いません。株式会社の株主は、会社が倒産しても、それ以上の弁済義務はないという特徴があります。