起業家のための簡単な決算書の読み方(5) -損益計算書-
会社を設立した場合に、自己資金300万円と借入金700万円を用意して、現金1,000万円を保有しているとすると、資産は現金1,000万円、負債は借入金700万円、純資産は自己資金300万円ということになります。資産は調達したお金をどのような形で保有しているのかを表し、負債と純資産はどのようにお金を調達したのかを表しています。他人から資金を調達すれば負債となり、自己資金であれば、純資産となります。少しくどいかもしれませんが、このときに資産(現金1,000万円)は負債(借入金700万円)+純資産(自己資金300万円)の合計と必ず一致します。
負債は他人から調達した資金ですから、支払いの義務があります。この支払いの期限が決算日の翌日から1年以内のものを「流動負債」、1年を超えて支払期限が到来するものを「固定負債」として、区分します。
「流動負債」の代表的なものには、買掛金、支払手形、短期借入金、未払金などがあります。買掛金は売掛金とは逆に、当社が商品を仕入れるなり、外注に出すなりしたときに発生する支払義務のことで、通常は1~2ヶ月くらいで、支払期日が到来します。支払手形は、この買掛金を現預金で支払う代わりに、期日に支払うことを約束したものです。短期借入金は借入金のうち、決算日の翌日から1年以内に支払期限が到来するものです。未払金は買掛金と似ていますが、買掛金が商品などの仕入れに対する債務であるのに対し、未払金は給与や家賃など売上とは関係なく発生する費用に対する債務です。
「固定負債」の代表的なものには、長期借入金や長期未払金等があります。いずれも、借入金や未払金のうち、決算日の翌日から1年を超えて、支払期限が到来する債務です。
ここでひとつ疑問がわいてきます。1年を超えて支払期限が到来する買掛金があればどうなるのでしょうか。答えは、たとえ1年を超えて支払期限が到来する買掛金であっても、流動負債となります。
流動資産と固定資産、あるいは流動負債と固定負債を区分するルールには2つの基準があります。ひとつ目はワン・イヤー・ルール(1年基準)と呼ばれ、1年という期間で区分する考え方です。ふたつ目は営業循環基準と呼ばれるものです。通常、商品を仕入れれば、買掛金が発生し、仕入れた商品が売れ残れば、在庫となり、これが売れれば、売掛金となります。このように、企業の正常な営業取引のサイクルを構成する内容のものは、全て流動資産または、流動負債とみなします。