起業家のための簡単な決算書の読み方(1) -貸借対照表-
必要資金を計算するためには、その前に市場をよく研究し、その市場において、自社がどのように勝ち残っていくのか戦略を考えておく必要があります。なぜなら、お金を借りることは目的ではなく、そのための手段であるからです。このことは、あらかじめ理解しておいてほしいと思います。
必要資金には2つの種類があります。1つは設備資金、もう1つは運転資金と呼ばれるものです。飲食店を例にとれば、店舗の敷金や契約に要する費用、店舗の改装費、テーブルや食器、厨房などの設備費用が設備資金です。運転資金とは店を開店してから、運営していくために必要な費用で、食材の仕入費用、人件費や、家賃、水道光熱費などがこれに当たります。
設備資金は必要な設備について、実際に見積もりをとるのですが、できることなら2社以上から見積もりをとることをお勧めします。見積もりを取るまでもないものは実際に店舗に見に行くか、インターネットなどで調べます。実際に必要な設備の検討を始めると、ついあれもこれも必要なように思えてきますが、本当に必要なものは勝つために必要なものだけです。よく考えて自社の強みを発揮するために必要なものだけを購入するべきだと私は思います。
運転資金の計算では、設備資金とは逆に、売上を少なく費用は多めに計算します。飲食店を例にとって、もう少し具体的に説明すると、売上は「客単価」×「席数」×「回転数」×「営業日数」のように計算します。このとき、なぜその客単価にするのか、なぜその席数にするのか、なぜその回転数になるのか、周辺の店の状況やターゲットとする客層などからその理由や狙いを説明できる必要があります。(例えば、オフィス街のランチタイム、女性をターゲットにメインディッシュ+サラダ・デザート・ドリンクバイキングで900円。席数は20席が2回転。夜は低カロリーメニューを中心に3,000~5,000円のコース料理を提供、ターゲットとする顧客層は・・・という具合です。)
また、食材などの仕入れ費用は売上×原価率によって、あとは席数や回転数に応じて、人件費や家賃、光熱費などの必要経費を算出していきます。その際、売上は控えめに、費用は多めに計算するほうが堅実な印象を与えることができるでしょうし、予定通りにいかない場合には、どのような手を打つのかも考えておいたほうがよいと思います。運転資金というのは計画段階よりも、実際には多くかかるのが常です。特に広告などの販売促進費用は、計画通りに売上が上がらないときには追加的に発生します。ここで資金が不足すると命取りになりかねませんので、十分に資金を確保しておく必要があります。
これまでの経験上、売上が創業時に計画したとおりにあがるケースは非常にまれです。しかし、起業したほとんどの人はうまく資金調達することができると、つい無駄遣いが増えてしまう傾向があるのです。収支がトントンになるまでには相当の時間を要するのが普通です。資金が減り続ける中、様々な試行錯誤を繰り返し、ようやく売上はあがり始めるものなのです。そうなるまでは、本当に心臓が止まりそうな思いを何度もすることになります。無駄遣いは必ず後悔しますので、事業が軌道に乗るまでは我慢が必要です。
起業家の資金繰り ① -創業時の資金調達-
http://mbp-japan.com/osaka/zeirishi/column/16250/
起業家の資金繰り ② -創業融資の内容-
http://mbp-japan.com/osaka/zeirishi/column/16291/
起業家の資金繰り ③ -貸し手からみた創業融資-
http://mbp-japan.com/osaka/zeirishi/column/16409/
起業家の資金繰り ④ -創業融資、必要資金の計算-
http://mbp-japan.com/osaka/zeirishi/column/16514/
起業家の資金繰り ⑤ -創業融資、申込書と面談-
http://mbp-japan.com/osaka/zeirishi/column/16541/
起業家の資金繰り ⑥ -まとめ-
http://mbp-japan.com/osaka/zeirishi/column/16613/