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冬に備えるくさぐさ(コロナ対策温故知新)

徳岡修

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テーマ:公衆衛生




  欧米を中心に新型コロナウイルスが猖獗を極め、我が国でも非常事態宣言や都市封鎖が取りざたされるこの頃です。政府が各世帯二枚ずつ布マスクを配布することについて、意味があるのか無意味なのかといろいろ喧々囂々の議論がなされておりますが、このことについて一つコラム(https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikatsueisei1925/14/12/14_12_24/_pdf/-char/ja)をご紹介します。
  これは80年以上前に保健所長だった私の親戚が書いたもので、「武漢三鎮が陥落して日の御旗がひらめいている」などという戦時色に満ちた挨拶はともかく、布マスクの効能やその注意すべき点についてが書かれているものです。

  大事と思われる部分を引用しますから、新型コロナウイルス感染症に罹らないよう自己防衛に努める際に少しでも思い出していただけると幸いです。

「マスクは冬の景物ですが、これさえしていれば感冒菌も肺炎菌も防ぎ止められると思い違えてはなりませぬ。あれは一種の防寒用であるのが主な役目で襟巻、足袋や外套の類です。だから嫌がる元気な子供や健康人に強いてさせ、他の注意を怠りながら良い気でいてはなりませぬ。マスクで防げる病菌ならば之をかけずとも少し気を付ければ避けられます。例えば、咳をする人があればその側から一メートル以上は離れて、咳しぶきを真っ向からかけられぬよう、またそんな人と同室に長座せぬことで、更に用心良きは咳する人のいる室や人混みには近寄らぬことです。インフルエンザ (流行性感冒)、百日咳、麻疹、ジフテリア、結核は咳嗽飛沫に混って放出されるもので病人から飛び出たばかりの病原菌は毒力最強なのです。それ故、室内でマスクをかけてウロウロするのは却ってよくない事が多いのですが、此に大切なマスクの効用は、他人からのバイ菌を受けぬためではなくて、他人へ自分の咳をかけまい、病原菌の混った咳嗽飛沫を散乱させまいとの心遣いから用ふることです」
  さらには、
「元気な子や健康な人は用うるの必要もないし、用いぬやように常々心掛けて含噸を励行し身體を無理に気まかせに遣ったりせず適当の休養に心がけ風邪の下地を作らぬ方がはるかによろしく、更に良いのは元気な頃から早朝乾摩擦や冷水摩擦で皮膚を練って置くこと、暇のある人は早朝の大気に浴し、旭光を浴びながらラヂヲ体操を行うもよし。さっさと歩いて散歩かたがた神社仏閣に参拝を続けるもよろしい」
とあります。
  このコラムにはマスク以外にも、一般的な呼吸器系疾患(インフルエンザや風邪など)に対する注意もなされています。コロナウイルスに対しても今はワクチンや治療薬がありませんので、風邪予防と同様のことを行うしかないでしょう。
「煙草の煙は咽喉に毒、即呼吸器毒であり、心臓毒で、脂が流れて下れば消化器にも毒ですが、成人に毒があるのですから幼少児に吹きかければ一層に害がある。風邪気の成人が喫ってはならぬ煙草は、風邪ひかせたくない愛児、風邪気の我児の側では喫って煙を吹きかけぬ心得が要ります」
これを機会に禁煙されてはいかがでしょう。
他には、
「風邪気とみれば直ぐに首に布や包帯を巻く手があり、其心掛けはよいのですが、他のもっと大切な養生心得を少しもせずに、平気で首を巻きさえすればそれで済んだようなのが多いようです。頸部の湿布は、温か冷かで行うもので、之を行うからには外出を慎み、なるべく安静を保ち、うがいも服薬をもしてのことでなく てはなりませぬ。だから首に物を巻くより前に心得べきは、外出を慎むこと、そんな子を百貨店や人混みへは連れて行かぬことこそ必要です。風邪気は早い目に体を休め、気を安らかにして、温いものを飲んでいるだけでもよくなりがちなものです」
さらに、
「病室へは見舞の客を入れぬもの、見舞客も入らぬのが常識であり、別室での長座をさえ遠慮すべきを、悪るせっかいに何の煎じ薬が効くだの、まじないから迷信の沙汰にまで及ぶが多いは他 人の難儀に知ったかぶりをする以来に取柄ないことで慎むべきであり、聞く方もそんなことに心動 かされてはなりませぬ。信ずる主治医の指図にひたぶる従って合理的看護や養生に專心すべきです」
また、
「そこで大切なのが親の注意であり、親の心遣いである」「注意は常にその児の体に払われていて、親のあたたかい心遣いを厚く衣せるのです」
「冬は風邪の神と根くらべ力くらべをせねばならぬのが親の役なのですが」
とあります。
 結局の所、他人にうつすまいとする心遣いと、新型コロナとの根比べとに尽きるのではないでしょうか。

昭和13年の内容ですので、不適切な内容や表現があります点はお許しください。

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徳岡修
専門家

徳岡修(歯科医師)

徳岡デンタルクリニック

ヨーロッパの技術と知識を取り入れた高度な虫歯・歯周病治療と予防歯科に強み。よりよい治療法を学び続け、80歳まで歯を25本残す8025を目指す。老年歯科医学会にも所属して、よく噛める入れ歯治療も得意。

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