木のアク抜き、シミ抜き、汚れ落とし
日本から8000キロ離れたリトアニアのカウナス地区にある杉原千畝館のボランティア塗装に
平成29年9月3日から9月10日までの8日間、手弁当にてボランティアに行ってきました。
関西空港から朝一にフィンランドのヘルシンキ空港に行きます。およそ10時間・・・。
普段タバコを吸う私にとっては結構キツイ時間です(笑)
それからプロペラ飛行機でラトビアのリガ空港へ
さらにそこから4時間のバス・・・。
到着したのは夜の11時30分・・・。
チェックインを済ませて12時に閉まるレストランでピザとパスタとビールを流し込む。
このレストランが一番遅くまで営業しているのでここしかない。
コンビニも11時には閉まる街でした。
その日は早く寝て朝一から現場へ
そもそも杉原千畝を皆様はご存知でしょうか?
ナチスドイツにより迫害を受けていたユダヤ人を外務省の命令に背き人道主義を
通すためにビザを発給。そして6000人もの命を救った元リトアニア領事館の外交官です。
その杉原千畝館(元領事館)が屋根は雨漏りし壁は剥がれ落ちていてボロボロ・・・。
弊社は全国約160社で結成されている塗魂ペインターズというボランティア団体
全国で約85回開催
海外7回開催
重要文化財1カ所開催
に所属している訳ですが
弊社の規模では中々軽々しく参加は出来ませんでした。
しかし参加しないと後悔すると思い
家族、社員達の理解を得て参加させてもらいました。
さていよいよ現場のスタートです。
まず日本では考えられない事が次々に起こります。
まず外壁の状態をチェックするとアルカリ性が強すぎます。
このままでは塗料を塗っても剥がれていまいます。
しかし海外でボランティアをする塗魂ペインターズの社長達には
ど~って事ありません。
『よし!酸を塗って中和させよう!』
全員で酸の手配をして酸の塗装を開始します。
酸は目に入れば失明の可能性もある材料・・・。
安全に徹して全体を酸で塗っていきます。
外壁から酸特有の匂いとシュワーって音が響きます。
そのまま放置していては今度は酸だらけで不具合が出ますので
即座にホースで水をかけて酸を流します。
酸洗いが終わり乾かし待ちの為、作業終了です。
リトアニア共和国では国を上げて私達の活動を応援してくれています。
テレビ局や新聞社が連日のように取材にきます。
作業が終われば楽しみは食事です。
最初は美味しい美味しいと喜んでいたのですが
連日のピザ、パスタ、ソーセージ・・・。
ビールは飲みやすくて良いのですが
40代の胃袋はそんなにタフに出来ていません(笑)
そして日本からヘルメットや安全帯や少々の塗装道具は持っていきましたが
やはり現地調達に頼る部分も多く私は買い出し班のリーダーを買って出ました。
舐めていました・・・。
まずホームセンターがデカい!
2階建ての大きなホームセンターが5棟もある・・・。
全部回るのにはどれだけ時間がかかるのやら・・・。
まずリトアニアでは英語を話せる人と話せない人がいます。
そして話せる人も流暢な人は少ない・・・。
私もちょっとした旅行用の英会話はジェスチャーを交えてなら出来る程度です。
(出来るとは言えない(笑))
ガムテープが必要!
あれ??無い・・・。
しかし施工が出来ないのはダメ!
成さねば成らぬ何事も!!
代用品を見つける!!
延長コードが必要
スマホで画像を見せて対応!!
よし何とかなりそうだ!!
撹拌機用の変圧器が必要!
変圧器???
英語を調べる
トランスフォーマー!
かっこいい!
しかし・・・
リトアニアの電圧を日本の電圧に変える変圧器はない・・・。
代用品??
それもない
よし!撹拌機そのものを買おう!!
よし見つけた!!
250ユーロ・・・。
たっ高い!!!
日本円にして33750円
全員ボランティアで来てるのです。
少しでも負担を減らさないと・・・。
値切り交渉スタート!
不発・・・。
もう少し頑張る!
やはり不発・・・。
よし!応用力だ!
ダメ元で貸して下さいと頼んでみました!
え・・・?
大成功!!!
後は巨大バケツ3つ!!
確か園芸コーナーで見た!
よしゲット!!
柄杓(ひしゃく)!
柄杓って英語あるの???
スマホで画像を見せる!
OK!
助かった!あるんだ(^◇^)
かなり歩く
到着・・・。
これはオタマ・・・。
ちがーう!!
分かった事は
この国に柄杓は無いと判明しました
代用品
計量カップ!!
そして沢山の荷物を持って外に出ました。
タクシーが待ってくれている訳はなく・・・。
大通りに出てタクシーを探す。
ここで一つ想像してください。
寒いんです!!
気温は10度くらい・・・。
ビュービュー風が吹いています・・・。
日本から8000キロ離れたリトアニアの大通り・・・。
ペンキで汚れた服を着ている私・・・。
しかも大量の荷物・・・。
かれこれ30分程経ち
体が芯から冷えてきました。
冷えてくるとオシッコに行きたくなる。
しかし大量の荷物を持ってトイレは遠い。
トイレに行ってる最中にタクシーが通るかも。
私はタクシーを探していました・・・。
そこで赤い車に乗った老夫婦が声をかけてきました。
『スギハラハウス?』
『イ・イエス!』
ジェスチャーで乗れと言ってきます。
私は外国で知らない人に乗れと言われても怖い!!
そう思いました。
私が躊躇していると老夫婦はスマホを取り出し
私達が杉原千畝館をボランティアしている新聞記事やTVニュースの動画を見せてきました。
この人達は善意で言っている!
そう確信して車に大量の荷物を積ませてもらい
後部座席に乗せてもらいました。
社内ではカタコトの英語でお礼を言いましたが反応がありません・・・。
どうやら英語は話せないようです。
無言の車内で何度も頭を下げました。
このお二人です(^^)/
車で杉原千畝館まで送ってもらい
長い時間握手をしました!
涙が出ました。
そして私達の様子を工事の設計士が見に来ました。
設計士はこう言いました。
『使用するのはドイツの職人の中でも特別なマイスターと呼ばれる職人しか扱えない塗料だ
君達に出来るのか?』
大和魂に火が付きました!
私たちは日本のペンキ屋の代表として来ています。
全員が社長!
しかも大きな会社ではなく中小企業の社長。
余裕なんてありません。
それでもリトアニアに来て日本の誇りである杉原千畝の遺産を守りに来ています。
日本で待ってくれている家族や社員に守ってきたんだ!と胸を張って帰ると決めています。
やる気満々モード突入!!!
塗料は世界遺産等に使用する特別な塗料・・・。
ドイツ製でのガラスを溶かしたような液体と特別な粉・・・。
これを一定の量で混ぜ合わせる!
大きなバケツ!延長コード!テープ!撹拌機!軽量カップ!
一応買ったオタマ(笑)
それらが大活躍!
攪拌をしたら30分熟成させる!使用する直前に軽く攪拌し直す!
ローラーは使用出来ない塗料の為ラスター刷毛を2つ合わせたアイディア刷毛を作り
塗るというより刷り込む!
しかもちょっと薄い所ができてもタッチアップ(手直し)はしてはいけない!
建物は500㎡あります。刷毛で全て塗るなんてあり得ません!
しかし塗る!休憩無しで!
参加した60人の職人全員が塗りました!
全員の心と技術で塗りました!
そして仕上がりました!
設計士が見に来ました。
そして一言
『グレイト!』
私たちは抱き合いました!
涙を流している人もいました!
日本のペンキ屋なめんなよ!
こう心で思いました!
乾かし待ちの時間も有効に使い
現地の学校の1室を断熱ガイナという塗料で塗りました!
休憩中に丘からの眺めも最高です!
最後に実際の杉原千畝がビザを発給した机に座り記念写真
最高の経験が積めました。
さて日本に帰って仕事頑張ります!!