南海トラフ臨時地震情報が発表されました。BCP(事業継続計画)の策定、見直しが求められます。

田中直才

田中直才

テーマ:BCP策定

 南海トラフ臨時地震情報が発表されました。南海トラフ地震の想定震源域に立地する企業は、早急にBCP(事業継続計画)の策定または見直しをすることが求められます。
 具体的には、以下について検討することが必要です。

1. リスク評価と影響分析

リスク評価

 

地震の規模と影響範囲の特定

南海トラフ巨大地震の発生時、企業が立地する地域の地震動や津波の影響を予測します。これにより、物理的な建物の損壊、ライフライン(電力、水道、通信)の中断、従業員や顧客の安全への影響について把握します。

業務プロセスの評価

企業の各業務プロセスに対する地震の影響を評価します。特に重要な業務(例えば、製品の製造、物流、サービス提供)に対するリスクを特定し、優先順位をつけます。

ビジネスインパクト分析(BIA)

重要業務の特定

企業の存続に不可欠な業務を特定し、地震による中断がどの程度の損失をもたらすかを評価します。

中断許容時間(RTO)と中断許容データ損失(RPO)の設定

各業務がどの程度の期間中断可能か(RTO)や、どの程度のデータ損失が許容できるか(RPO)を定め、これに基づいて復旧手段を計画します。

2.緊急対応計画

緊急時の指揮命令系統の整備

緊急対応チームの組織化

災害発生時に指揮を執るチームを編成します。これは通常、経営陣、セキュリティ担当者、IT、広報担当者などから構成されます。各メンバーの役割を明確にし、意思決定の迅速化を図ります。

役割と業務の定義

チームメンバーには、災害時の具体的な対応、コミュニケーション、および復旧作業などの業務を割り当てます。

緊急連絡網の確立

連絡手段の多様化

地震による通信障害を想定し、複数の連絡手段(電話、メール、メッセージングアプリ、衛星電話など)を準備します。

緊急連絡リストの整備

従業員、取引先、顧客の連絡先情報を常に最新に保ち、緊急時に迅速に連絡を取れるようにします。

避難計画

避難ルートと場所の設定

建物内や周辺地域の安全な避難経路を設定し、従業員に周知します。避難場所もあらかじめ確保し、そこに到達するための手順を明確にします。

避難訓練の実施

定期的に避難訓練を実施し、従業員が緊急時に迅速かつ安全に行動できるようにします。

緊急時物資の準備

非常用物資の備蓄

地震後に最低限必要となる物資(食料、水、医薬品、毛布など)を事前に備蓄します。

通信機器の準備

無線機や衛星電話など、通常の通信手段が使用できない場合に備えた通信機器を用意します。

3.事業の継続手段

代替拠点の確保

代替オフィスや施設の用意

主要拠点が被災した場合に業務を継続できるよう、他の場所に代替オフィスや生産施設を準備します。

リモートワークの推進

通勤や物理的オフィスへの依存を減らすため、リモートワーク環境を整備し、必要なITインフラを整備します。

データのバックアップ

クラウドバックアップ

重要データをクラウドに定期的にバックアップし、地震で物理的なサーバーが損壊してもデータを復旧できるようにします。

データリカバリープラン

バックアップデータからの迅速な復旧手順を明確にし、定期的にテストします。

サプライチェーンの見直し

サプライヤーの多元化

主要なサプライヤーに依存しすぎないようにし、複数の供給元を確保して、供給停止リスクを分散します。

サプライヤーとの連携強化

サプライチェーンの上流・下流企業と連携し、災害発生時の対応策を共有します。

4.従業員と家族の安全確保

従業員向け教育と訓練

安全教育プログラム

地震時の初動対応や安全確保方法について、従業員向けに教育プログラムを準備し、内容の浸透を図ります。

訓練の実施

緊急時に従業員が適切に行動できるよう、避難訓練やシミュレーション訓練を定期的に行います。

従業員の家族対応

家族との連絡手段の確保

従業員が災害時に家族と連絡を取れるように支援します。また、家族の避難情報などを従業員に提供します。

家族支援策の検討

従業員が安心して業務に専念できるよう、家族の避難支援や物資提供などの支援策を用意します。

5. コミュニケーション戦略

外部コミュニケーション

迅速な情報提供

メディア、顧客、投資家に対して、地震発生時の企業の状況や対応を迅速に報告できる体制を整えます。

広報活動の計画

企業の信頼を維持するため、正確な情報発信とメディア対応の計画を策定します。

内部コミュニケーション

社員への情報共有

全社員に対して、地震発生時の状況や対応方針を迅速に伝える手段を確立します。これには、社内メール、掲示板、アプリなどを活用します。

6. BCPのテストと見直し

定期的な訓練

実地訓練

BCPの有効性を検証するため、実地訓練や机上訓練を定期的に実施し、計画の問題点を洗い出します。

教訓の共有

訓練後にフィードバックを行い、改善点を共有し、次回に向けてBCPを更新します。

見直しと更新

最新情報の反映

新たな地震リスク情報や技術進展を反映させ、BCPを定期的に更新します。

内部監査の実施

BCPの適用状況を内部監査し、遵守状況や問題点をチェックします。

7. 財務準備

地震保険の加入

適切な保険の選定

地震による損害をカバーするため、企業の資産や事業内容に適した地震保険を選定し、加入します。

保険内容の定期的見直し

企業の成長や事業変更に応じて、保険内容を見直し、必要に応じて補償額やカバー範囲を調整します。

緊急資金の準備

緊急用資金

地震発生後の迅速な対応や事業継続のために、すぐに利用可能な緊急資金を確保しておきます。

資金調達手段の検討

地震後の追加資金調達が必要な場合に備えて、融資枠の確保や資金調達計画を立てておきます。

 これらの詳細な計画と対策をもとに、企業が直面するリスクに対処することで、南海トラフ巨大地震のような大規模災害からの復旧をスムーズに行えるよう準備しておくことが求められます。

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田中直才
専門家

田中直才(社会保険労務士)

HK人事労務コンサルティングオフィス

BCP(事業継続計画)策定をはじめとした危機管理や、コンプライアンス対策を得意とし、コンサルティングや研修で多数の実績があります。外国人の採用支援にも注力し、ベトナムの企業と共同で人材紹介も行います。

田中直才プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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