災害発生時に観光客を安全に帰宅させ、速やかな復興につなげる観光危機管理のエキスパート（1/3）

地域に応じたカスタムメイドの観光危機管理計画やマニュアルを作成

　いつ発生するかわからない災害や事故。もし旅先で巻き込まれてしまったら……。慣れない土地での避難や対応は困難を極めます。危機の際に観光客の命を守り、無事に自宅へ帰し、その後の復興をスムーズに進めること、地域と連携し、従業員や組織を守るために備えること、それが観光危機管理です。那覇市に拠点を置く「サンダーバード」の翁長由佳さんは、地域に応じた観光危機管理計画やマニュアル作成、各種訓練のエキスパートです。

　「災害時には都市部なのか、海沿いなのかによっても対策は変わってきますし、物資の備蓄は観光客の分も考慮しなくてはなりません。また、地域住民と観光客では必要な情報も異なります」

　例えば、空港へのアクセスが確保されているかという情報は観光客にとっては重要ですが、地域住民にとっての優先順位は低いでしょう。観光客と住民で、情報を分けて伝えなくてはなりません。外国人観光客への伝達方法も事前に決めておく必要があります。

　2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、「観光客が大勢来る沖縄に同様の災害が起きたら、一体どうなってしまうのか」との大きな課題に直面したことから、沖縄県における観光危機管理がスタート。当時日本ではまだ先例がなく、アメリカなど先進地の取り組みを参考に「沖縄県観光危機管理計画」が策定されました。

　「観光に特化した危機管理というのは非日常で、自分には遠い話と思いがちです。しかし、観光客の安全を確保し、速やかに帰宅の途についてもらうことで、地域の人たちも早く復興に取り掛かれます」と、翁長さんはその重要性を説きます。

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