調停の待合室から~動線分離
調停の待合室から~自主的解決
調停はあくまで話し合いによる解決なので、裁判官が判断を示す訴訟や審判とは異なります。
調停は「まどろっこくしてなかなか決まらない」という声もよく聞きます。
答えをすぐ出してもらうことを家庭裁判所に期待していると、なかなか進まない調停に対して不満がつのることもあります。
調停委員は公平中立な立場で、双方の話し合いが前に進むよう調整するので、どちらか一方の言い分を正しいと決めつけて話を前に進めることはしないため、主張が対立している場合は、調停は前にすすみにくいといえます。
ただ調停は、裁判官や他の第三者が決める手続きではなく、紛争当事者による自主的な話し合いによる解決ですから、双方が何らかの「納得」に至れば、成立(紛争解決)となります。
判決でばっさり答えを示されるより、互いにいくらか不満は残るものの、それぞれ納得したうえで解決に至ったことに意味があるのです。
この「納得」はとても大切で、弁護士として法律相談、事件対応(交渉や訴訟など)の中でも、いつも気にかけていることです。
調停は、互いに譲り合っての解決と言えます。時間と費用をかけてあえて訴訟までせず、調停で解決した方が総体的な経済的利益を考えたときに有利ということもあります。
この「納得」(「満足度」と言ってもよいかもしれません)を指標化することは難しいです。法律的視点、経済的視点、心情的視点が複雑に絡み合っています。
さらに時間の流れに沿って各要素が変動していきます(法律上の判断でも、婚姻関係の破綻の有無など、時間の経過で結論が変わることはあります)。しかも、当事者を取り巻く環境は、相談時点、調停申立時点、訴訟提起時点と刻々と動いていくので、解決方針の選択に関しては、依頼を受けた弁護士はその動きにはいつも細心の注意を払っているところです。
そして、法律の枠組みの中で、経済的利益を考えつつ、心情にも配慮しつつ、解決をめざすことになります。
ある裁判官が離婚調停に関する著書のまえがきで、「調停委員の方々と力を合わせ、「理」を踏まえ、「益」を図り、「情」にかなった家事調停の実現」をめざしたとありました。言いえて然りと感じました。
調停はすべての視点を意識しつつ、全体のバランスを見て、解決可能性を探っていく過程と言えるのでしょう。そこに魅力を感じます。
この3つの視点は、法律相談での回答や、交渉における合意形成の過程でも、意識せざるを得ないものなので、詳しく整理していきたいと思います。
※本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や事件には関する記述はありません。