子の引渡し・連れ去り事件⑤ 弁護士への相談(その2)
子の引渡し・連れ去り事件① はじめに
タイトルだけ見ると物騒な誘拐事件を連想しますが、最近10年間で家庭裁判所に持ち込まれた子の監護者指定・引渡し事件は急増しています。
離婚や別居にあたって、子の親権や監護権をめぐる熾烈な争いが、連れ去り事件となり、紛争解決の求めて家庭裁判所に申立てがなされていることがわかります。
①帰宅したら子どもを連れて妻が実家に帰ってしまった、②夫が保育園から子どもを連れ出して行方がわからないまま離婚調停を申し立てられた、③出張中に家のカギを取り換えられ家から閉め出され、子どもと引き離されてしまった、といった相談が多くあります。
少子化を背景に、子どもへの愛情が、形を変えて子の奪い合い事件へと発展することも少なくありません。
こうした突発的な事態、いわゆる子の連れ去り事件に直面したとき、どう対処したらよいのでしょうか。
①自力で行方を探す、②警察に相談する、③弁護士に相談する、といった方法が思い浮かびます。
弁護士が相談を受けた場合には、お子さんの安全と安心を最優先に考え、緊急性を判断し、家庭裁判所への申立てを検討します。監護者指定・子の引渡しを争うべきかどうか、審判か調停か、保全処分が必要かどうかなどを検討し、緊急性が高い場合は、子の監護者指定・引渡しの審判事件の申立て、審判前の保全処分の申立てを行い、緊急性が低く監護権を争わない場合は、面会交流の調停を申し立てていくことが多いと言えます。
一つずつ、順を追って考えてみたいと思います。
大切なことは、突発的な出来事に直面して、焦る気持ちを抱えつつも、冷静に手順を踏んで最善を尽くすこと、限られた時間のなか急ぎ対応することです。
子どもは環境への順応力が高いため、時間が経過すればするほど、家庭裁判所での判断も現状維持を考慮し、微妙になっていくことが多いため、急ぎの対応が必要とされるわけです。
保全の申立てをして子どもが無事に戻ってきた方に関して言えば、連れ去られて(引き離されて)から約5週間がめどになります。この緊迫した5週間をどのように乗り切っていくか、相談を受ける側も、緊張し細心の注意を払いつつ、時間と闘っていくことになります。
※1 本コラムは法律コラムの性質上、弁護士の守秘義務を前提に、事例はすべて想定事例にしており、特定の個人や 事件に関する記述はありません。
※2 当事務所では、子どもの利益(安全・安心)を最優先に考えるため、ご夫婦のどちらからの相談も受けています。特に子の連れ去り・引き離し事件に関しては、お子さんと離れてしまった側、お子さんと一緒にいる側、いずれの相談もお受けしていますが、子どもの利益を最優先に考えています。