修理を難しく見せるテクニック
こんにちは。
足と靴のフットライト.梶田です。
靴のかかと修理をお受けする際に「かかと修理で釘を打つのはなぜ?」「他店での修理の際に釘を打たれていて、床に傷がついた」「かかと修理で釘を打たれてから歩くたびに音がして不愉快」と言われる方が偶に居られます。
この靴のかかと修理の際に釘を打つ行為ですが、必要かどうかの2択で言ってしまいますと、必要ありません。
でも理由があって釘を打っている場合もあるんです。
この釘を打つ理由と必要のあるなしのポイントを知っておくと、大事な靴の修理を依頼するときも安心ですね。
では最初の話として、かかと修理の際に釘を打つ必要は無いというのは、どういう理由からでしょうか?
そもそも大前提としては、靴のかかとを貼る際の接着剤管理を正しく行っていれば、かかとが剥がれることはありません。
近代までは良い合成接着剤もなく釘でかかとを固定していましたが、現在はメーカーの作った新品の紳士靴でも一部の靴に飾り釘を打ってあるだけで、新品の他の靴には釘を一切使っていないことからも、接着剤の進化によって釘を打つ必要が無くなったということは分かりますね。
ただ、かかと修理の際には釘を打たないとまずい場合もあるんです。
これは、街中にある一般的に「クイック修理」と呼ばれる靴修理店では、その場で修理した靴をすぐ履いて帰らせる対応のために、貼ったばかりのかかとが取れてクレームにならない様に、仮固定する意図で釘打ちをしているんです。
靴用に使用されている接着剤は貼ったらすぐに高いアンカー効果が出るものではなく、時間経過とともに効きも増すようになっていますから、貼ってすぐ履かせる対応では剥がれてしまう確率も高くなるため、とりあえずお客が家に帰るまでは剥がれない様にという意図で、釘打ちをして仮固定しているだけなんです。
お客が家に帰るまで修理したかかとが付いてくれていれば、その後の時間経過で接着剤の効きも高まり剥がれなくなりますから、剥がれたと怒られるクレームも発生しない。という考え方なんですよ。
では、修理の預かりをして後日お渡しする靴の場合にも、同じ様にかかとへの釘打ちは必要なのでしょうか ?
少なくとも修理後24時間経過した後のお渡し予定であれば、接着剤の効きも十分実用強度に達していますから、釘打ちで仮固定をする意味は全くありません。
ただ、このかかと釘打ちの理由についてよく理解していない業者や、惰性で釘打ちを続けている業者は、かかと修理=釘を打つものという考えで、どんな状況であっても釘打ちの作業をしていたりします。
また指摘をすると「かかとに釘が打ってあるとおしゃれでしょ。」といった釈明をする業者もいたりしますが、新品時には釘の打たれていなかった靴に、業者の感性で勝手に釘打ちをしてしまうのもどうなんでしょう。
かかと修理時の釘打ちといったこれまで気にしたことのない行為一つでも、何らかの意図があって打っているのかどうかを担当者に聞いてみると、面白い話が聞けるかもしれませんよ。