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《難題》香典辞退のメリット・デメリット《岡山東備版》

若松慶隆

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喪家として香典を受け取るか辞退するか、それは決して白か黒かの二択ではなく、ほとんどはそのグラデーションの中にあります。
「完全クローズ」から「完全オープン」まで考えてみますと…、

・香典辞退・参列辞退・弔問辞退
・香典辞退・参列辞退・弔問OK
・香典辞退・参列OK
・香典OK・参列辞退・弔問OK
・香典OK・参列OK

より細分化すれば何倍にもなりますが、ざっくり5パターンとします。
ここ10年20年で葬儀のあり方の変化とともに香典を取り巻く状況が「急激且つ複雑に」変化しているからこそ、喪主(喪家)も親族外の人もどのように立ち振る舞うべきか非常に難しい話です。
私はお勤めとしての葬儀はもちろんのこと、喪主としても親族としても葬儀の経験はあります。私の経験談と私論込みであれやこれやと逸れそうですが、ご興味のある方は参考程度にご覧ください。

➀そもそも香典とは何か
➁香典辞退が増えた理由(メリット)
③香典辞退の落とし穴(デメリット)
➃香典を受け取るメリット・デメリット
⑤どのように立ち振る舞うべきか(喪家側・参列者側)
➅今後の展望


➀そもそも香典とは何か
香典とは「故人へ弔意を示すもの」というのが辞書的な定義ではありますが、「葬儀は費用を要するため、縁ある人々がお金を出し合って支援する互助の慣習」という意味合いもあります。
これは重要なポイントですので押さえておいてください。
香典辞退が増えたのは「一般葬と家族葬の混在期」の中でしたが、2020年からのコロナ禍も大きく影響を及ぼしました。

➁香典辞退が増えた理由(メリット)
周囲の人に金銭的・心理的負担を掛けたくないという遺族感情。そして静かに見送りたい、送ってもらいたいという思い。
事務的負担のある「香典返し」も避けることができます。
こういった価値観が「家族葬の増加」「葬儀の簡素化」「人間関係の希薄化」も相まって広がったと考えられます。

③香典辞退の落とし穴(デメリット)
・弔意を表したい人の感情
これはちょっと長話になりそうです…。
単に「気持ちを受け取ってもらえなかった」と感じるだけでなく、「うちの母親の時にはしてもらっているのに(受け取ってもらわないわけにはいかない)…」といったケースが散見されます。
これは本当に難しい問題です。 「薄い関係」の人も「濃い関係」の人も一切同列に辞退とするのか、ケースバイケースで対応するのか。
完全に突っぱねると怒られる方も。
しかしこんな話もあります。
懇意にしていたご近所さんから“特別に”香典を受け取ったところ、その情報がご近所に広まり、後から近所中が香典を持って来られたと。喪家としてもそれらを受け取らないわけにもいかず…だったそうです。最初の時点で「受け取ったことは誰にも言わないで」と口止めしておけば済んだのかなとも思いますが、難しい話ですね。(なので受付役は意外と重要な存在

・周囲の経済的負担をさせないように見えてそうではないケースがある
香典は互助だと申しました。
逆に言えば香典無しで葬儀をできるのは相応の経済力がある方に限られます。
経済的に厳しい方がさらに窮地に追い込まれているケースも実際に見ました。

➃香典を受け取るメリット・デメリット
では逆に香典を受け取るメリットとデメリットにも触れておきます。

・経済的な援護
困った時の助け合い。先に述べた通りです。

・ビジネス要素の強い!?香典返し
香典返しをするには事務的精神的経済的な負担が発生します。
拙寺先々代(祖父)の際には正直骨が折れました。
しかし香典返し自体戦後に始まったものです。「お互い様」に循環するはずのお金の何割かがビジネス業者に消える、そして香典を出す側として香典返しに期待したことなど一度もないと私は感じ、先代と祖母の際には「頂いた御香典の一部は社会福祉協議会に寄付いたします」で済ませました。随分楽になりました。

・香典を誤解誤用する人の存在
「(香典辞退が増えている中で)そんなにお金集めがしたいの?」と言う意地悪な人も居ます。

⑤どのように立ち振る舞うべきか(喪家側・参列者側)
これだけ価値観が多様化している中で「誰一人何の不平不満の出ない葬式はない」ともはや割り切るべきと私は考えています。100%は無理でも100%に近づけること。
例えば香典辞退を告知されていても一応用意はして参列する、固くお断りされた場合は代わりに生花をお供えさせていただくという手もあります。
やはり香典の本来の意義や歴史を知った上でどうするか考える、相手の立場によってどんな思いを持たれているかをお互い想像すること、押し過ぎず引き過ぎず空気を読むことぐらいしか現状では対応策がないと思います。
そんな百人百様が完璧にできるはずありません。皆さん大なり小なり頭を悩ましていますので少々のことは割り切りましょう。

➅今後の展望
年賀状・暑中見舞い・お中元・お歳暮、はお互いほぼ同時進行の往復であるのに対し、香典はタイムラグがあります。
また意の側面からも、ゼロにはならないと思われます。
(AI予測でも香典は無くならないとのこと)
香典に限らずの話ですが、多様化が進めば進むほどお互いが疲弊しているように見えます。シンプルに以前に戻したほうが楽なのでは!?とも思いますがそうならない以上、ケースバイケースに対応できるよういろんな知識を身につけておくしかないと考えます。
何だか結論がない感じになってしまいましたが今回のお話しは以上です。

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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