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【ど~なる】夫婦別姓論争とこれからのお墓【私論】

若松慶隆

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いま議論となっている選択的夫婦別姓制度がもし取り入れられたとして、
・「A田X男さん」と「B川Y子さん」がご結婚
・「A田Y子さん」でなく「B川Y子さん」として二人は夫婦別姓制度を活用
・A田家は「A田家先祖代々之墓」を所有
では、いずれY子さんはどこに眠ることになるでしょうか?
また、Y子さんはA田家之墓に入ることは可能でしょうか?


そこで、今回は夫婦別姓とお墓について私の考えを書きます。
【定期】ご興味のある方はお読みください。

➀(私的)見解と事例
➁お墓事情の予想
③○○家之墓は消えゆくか?
➃最後に


➀(私的)見解と事例

まず、上記の質問を私がされたらこう答えます。
「ご本人やご家族が納得されているなら全く問題ありません。墓誌(墓標)にB川Y子と刻むのも全く問題ないです」
と。

実際、今までの経験の中でも姓氏の異なる方が同じお墓に納骨されたケースは複数あります。○○家と書かれたお墓には○○姓の人しか入ってはいけないという法律もルールもないですし、私としては当事者が何を望むか次第だと思っております。
ただし注意すべきポイントがいくつかあるかと思います。

例えば
・○○家の墓には○○姓でないといけないという「家訓」がある
・夫婦別姓に反対する家族を押し切って結婚した
こういった場合、その家訓を言っていた人や反対した人が既に亡くなっていたとしても気分よく一緒に同じお墓の中で眠ることができるのかはいささか疑問です。
そこは本当にお気持ちの問題です。
どうするのが故人にとって安らかであるかを考えた結果、「別々のお墓に納骨」というケースもあるでしょうし、「どうかお墓では仲良くしてね」と同じお墓に納骨されるケースも考えられます。(金銭的な事情も絡みます)
また、「自分(奥様)は○○家のお墓に入りたくない」との意向などで夫婦別々に埋葬されたケースもありました。

(『一緒のお墓に入ろう』というプロポーズ例を聞いたことがありますが、今は死後のことまで考える新郎新婦は稀でしょうか…)



➁お墓事情の予想

姓の異なるお墓に納骨されたケースもあると述べましたが、そういった姓事情も鑑みて、〇〇家と表記せず「和」「愛」「感謝」「ありがとう」などと表記したお墓が増えています。
永代供養、納骨堂、樹木葬、散骨、など祭祀方法の多様化、「お墓は要らない」という価値観と「墓じまい」、こうして目まぐるしく変化している中で、選択的夫婦別姓制度が取り入れられるとますますお墓事情は複雑で多様且つ速いスピードで変化すると思われます。


③○○家之墓は消えゆくか?

それでは従来の「○○家之墓(いわゆる先祖墓)」はどうなるでしょうか。
今後も減っていく、選択式夫婦別姓となればもっと減ると思われます。
ただし減りはしても一定数は残り続けるものと考えています。「氏姓を受け継ぐことを大切にしている人」や「先祖墓の存在を誇りとして大切にしている人」は根強く居られますので。
これは全くの憶測ですが、選択的夫婦別姓制度反対論者には先祖墓も大切にしている人が多そうに思えます。
もちろん先祖墓の維持はいろんな条件が重なり合わないと出来ないことですが、逆に言うとその条件が整っている人はその人たちにしかない一種の「特権」ですから、個人的にはこれからも大切にしてほしいなとは思います。
何代も昔に遡って先祖に想いを馳せられるのはやっぱり先祖墓ですので。


➃最後に

今日の日本は「多様性を受け入れる社会(ダイバーシティ)」と言われています。私(寺の住職)としましても多様な価値観に耳を傾けること、そして(お墓のことに限らず)それらを受け入れていけるお寺作りをしなければならないと思っております。

でもその一方で共生には軋轢が起きている所があるのも事実です。
様々な価値観や立場への配慮を求められるがあまり、社会全体が窮屈になり分断が起こってしまう…。私は全員が100%満足する社会の実現はあり得ないと思っています。みんなが少しずつ歩み寄って合ってみんなが80~90%満足できる世の中になってほしいです。
最後に申しておきますが、供養における多様性に備えた体制は鋭意整えて参りますが、それによって従来のお墓を大切にしている人を軽視することは絶対にありません。

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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