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【仏教用語】衣替えの意義とエピソード【気候変動】

若松慶隆

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4月も中旬になり、特に日中はグッと温かくなりました。
服選びにも迷う季節かと思います。
そこで今回は「衣替え」に関するお話です。

もくじ
➀仏教用語としての「衣替え」
➁僧侶の衣替えの実態(夏⇔冬)
③衣替えエピソード3選


➀仏教用語としての「衣替え」

「衣替え」とは現在は『冬服→夏服/夏服→冬服』になることを意味していますが、元々は仏教用語で「宗旨を替える」とか「師匠を替える」ということを意味していました。
これは、各宗派で衣が違うこと、あるいは新しい師に就けば、その下で新しい衣をもらうので宗旨や宗派、或いは学ぶ教えを替えることを「衣替え」と言ったそうです。
つまり「衣替え」とは相当な決意を意味しているのです。
(景福寺さんHPより)

とは言え法衣にも夏用・冬用がありまして、一般世間で言う「衣替え」はあります。
その際は、仏教用語としての意味を思い起こして「スイッチ入れ直そう!」と自分に言い聞かせています。

➁僧侶の衣替えの実態(夏⇔冬)

衣替えは6月と10月で定着してきましたが、温暖化などの影響で近年はこの限りではありません。
拙寺においては複数の寺院が集まる法要(屋外)がGWにあり、そこでの衣体は夏服で統一するようになってから、「GWから夏服」という暗黙の了解になんとなくなりました。
実際には住職さん個々の考えで衣替えはなされています。それが③でお話しするいろんなハプニングやエピソードを生むのです。

夏には「その格好暑くないですか?」、冬には「その格好寒くないですか?」とよく聞かれますが、答えは「暑いと言えば暑いし、寒いと言えば寒い」です。
上半身に関して言いますと、アンダーウェアから袈裟まで最低5枚のものを身に着けています。
どんなに軽薄化しようとも限りがありますし、クールビズのように何かを省略できるものではないですので、どうしても夏は暑いです。
冬は「極暖ヒートテック」などがあるのである程度寒さは凌げます。

あともうひとつ、個人的には輪袈裟の色で与える印象も変わると思っています。
少しでも爽やかさや落ち着き感を持って頂くために、夏の輪袈裟は水色や青色・薄紫色、冬はダークな色のもの、のようにTPOに合わせて使用する輪袈裟を選んでいます。

③衣替えエピソード3選

《その1 冬に汗だく》
外は氷点下でもお部屋に入ると暖房ムンムン、汗だくになることはよくあります。
でも強調しておきますが、私含めて来られる方のことを考えて暖房を効かせて下さっていることなので、お気持ちはすごくありがたいです。
「住職さん、寒くないですか」と、さらに真横にハロゲンヒーターが置かれていることもあります。顔では「ありがとうございます」と笑顔で言っておいて暑いですけど我慢です。
ただ、その後にお墓参りに外に出ると汗と寒さで身体には結構来ます…。

《その2 葬儀での助法》
助法(じょほう)とは主に葬儀で脇導師を務めることです。
家族葬が大半の今ではほとんど機会がなくなりましたが、以前は他のお寺さんから脇導師に呼ばれることはよくありました。
そこで事前に「夏服か冬服か」確認しておかないと、「自分は夏服で行ったら導師さまは冬服だった(またはその逆)」ということが何度かありました。
脇導師は導師様に合わせる立場なので、合わせる必要があります。
すぐに寺から持って来てもらったこともありましたし、「全然いいよ」のお言葉に甘えさせて頂いたこともあります。

《その3 しつけ糸》
衣替えをすると着終えた衣は法衣店へメンテナンスに出します。
クリーニングやほつれ箇所の補修をしてもらいます。
その法衣店から戻ってきた衣をまた使うのですが、いざ法事や葬儀の場でそれを使おうとすると・・・しつけ糸がついていて着れない・・・嚙みちぎろうとしても糸が強い・・・しかしハサミがない…ということがありました。
何年も着こなしている服でもやはり試着はしておいたほうが良いと学びました。

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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