【うまく維持されているみなし墓地例】続・全く大手メディアが報じない墓じまいの実態【岡山田舎版シリーズ】
式中初七日(しきちゅうしょなのか)とは仏式のお葬式において、「出棺前に初七日法要まで済ませること」です。
近年岡山でも急増どころか、すっかり定着しつつあります。
今回は、その背景や今後の展望などを考えてみます。
➀〘前段1〙本来の初七日法要
➁〘前段2〙繰り上げ初七日法要への流れ
③〘本編1〙式中初七日法要への流れ
➃〘本編2〙式中初七日法要の弊害や今後の展望
➀〘前段1〙本来の初七日法要
本来の初七日とは故人が亡くなられて7日目のことを指しますが、当備前地域においては、その前夜(=『お逮夜(おたいや)』と言います)にお勤めすることが慣習となっています。
つまり〇月1日に亡くなられた場合、(通常であれば翌2日にお通夜、3日に葬儀告別式を経て、)6日晩が最初のお逮夜、初七日法要となります。
お勤めは通常、新仏様の祭壇を組んだお家で行ないます。
(朝日寺の場合、依頼があればお勤めに伺っていますし、「身内だけでやるのでテープ・CDが欲しい」と言われる方など様々です。後者の依頼も多いのでYouTubeでお勤め動画をアップしている次第です。)
➁〘前段2〙繰り上げ初七日法要への流れ
しかし葬儀の日から中2日、友引を挟んだりお寺さんの都合で葬儀が1日延ばされた場合は中1日で初七日のお逮夜を迎えることになり、それはご当家の方にとっては負担が大きくなるものです。
ご当家の方だけでなく、ご親族も中1~2日では集まれるメンバーが減ってしまうのも実情です。
・ご当家の負担軽減
・親族揃っての初七日
そこで15年前ぐらいから登場したのが『繰り上げ初七日法要』です。
繰り上げ初七日法要とは、葬儀の日に初七日法要を前倒して行うことです。
具体的には、
Ⓐ火葬開始後、お骨拾いまでの間に葬儀会館へ戻って行う
Ⓑご収骨後、会館へ戻って行う
の2パターンありますが、段々ⒷよりⒶの比率は増えていきました。
理由としては時間が経てば経つほど帰宅してしまうご親族の方が増えるので、なるべく人数が揃った中で行ないたいというご当家の希望と、収骨後まで待つ時間ロスを嫌うお寺の都合が大きいと思います。
※これはあくまで朝日寺及び多くの近隣寺院における事象であり、「初七日法要は本来の初七日の日でないと認めない」スタンスのお寺さんもありますのでそこはご留意下さい。
さて、ではなぜさらに一歩進んで『式中初七日』へと流れているのか、以降解説いたします。
③〘本編1〙式中初七日法要への流れ
まず、岡山においては火葬場の事情変化が大きな要因です。
一昔前であれば岡山市東山斎場でも西大寺斎場でも『➁-Ⓐ(火葬中に初七日法要)』を行うことを火葬場の運営者は熟知しており(←民間葬儀社への運営委託が多かった)、収骨時刻を少々過ぎてもそこは「塩梅」で通っていました。
しかし運営業者が変わり、東山火葬場も西大寺火葬場も収骨時間厳守になりました。(約1時間半)
『➁-Ⓐ(火葬中に初七日法要)』を行う時間が無くなったのです。
なので選択肢は『➁-Ⓑ(収骨後に初七日法要)』しか残されなくなったのですが、そこまで待っての法要となるとご親族にとってもお寺さんにとっても時間的な制約が大きいものです。
そこで登場したのが『式中初七日法要』です。
式中初七日は、葬儀の一連のお勤めを終えた後、「引き続き初七日法要を執り行います」のアナウンスがあり、初七日の法要を行います。
(正直なところ、ご当家にとっても住職にとっても楽は楽です。ただ、ここでも『式中初七日は認めない』スタンスのお寺さんもありますのでご留意下さい。)
➃〘本編2〙式中初七日法要の弊害や今後の展望
以前の葬儀は約40~45分、初七日法要は約30分を要していましたが、これを単純計算で足すと70分以上要することになります。しかし開式から出棺までは約1時間のため、これを約50分程度に収める必要があります。
つまり『一部の作法や読経を省く』必要があるのです。
私の見解としましては、『何かを省けば楽で済む』という発想はあまり好ましいものではないと思っています。
七五三で3歳の時、「ついでに5歳も7歳も済ませておこう」となるのでしょうか…。もっと言えば「ついでに成人式も…」となるのでしょうか。
今日の風潮として、生きている者に対する儀式より亡くなった者に対する儀式を重んじる気持ちが小さくなっていると感じます。
さて今後の展望ですが、一旦こうなってしまった以上は元に戻ることはないと思われます。問題だと思うのは、葬儀社さんもご当家さんもお寺さんも『式中初七日ありき』が定着してしまいつつあることです。
繰り上げ初七日や式中初七日が出始めた当初は、「本来はこうだけど…」という説明と理解があった上に行われていましたが、一旦定着してしまうとその過程は省かれてしまい、本来の意義が理解されないままになっていると感じます。
こんな話もありました。
式中初七日を行ったお家の喪主さんが「〇日が初七日なんですけど住職さん来てもらえませんんか?」と。
「だったら式中初七日やらなければ良かったのに…」と言いたいところですが、お互いに初七日に関する情報のコミュニケーションが足らなかった結果ということです。
私としては式中初七日をやるにしても本来の初七日の意義はきっちりご理解して頂けるよう話を進めていきたいと思いますし、これをお読み下さった方には今一度『式中初七日』とは何なのかをご理解して頂きたいと思います。
今後は「お墓が家から遠いのでお葬式の後に前倒しの四十九日(納骨)もお願いします」と仰る方が出て来るのではないかと危惧します。