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【トラブル発生】檀家or非檀家の認識のズレ【要注意】

若松慶隆

若松慶隆

読者の皆様こんにちは。
今回の内容は少々デリケート且つ、あまり一般的には知られていない事項(大手メディアで『檀家』という言葉に触れるのは『墓じまい』『檀家離れ』『離檀料』『檀家になると高額寄付』…のような、どちらかと言えば『檀家=負担、面倒なもの』という印象を受ける内容)であり、実際に○○寺・●●院の檀家であることのメリット・デメリットを深掘りした情報は見聞きしない印象があります。
そこで今回は(こういうややネガティヴな『檀家』というキーワードへのイメージを刷り込まれている状態の)一般家庭の方と、一般寺院(檀家寺)の間で起こり得るトラブルや認識の違いについて、(あくまでも朝日寺住職一個人の考察として)執筆致します。

⓪ そもそも檀家とは何か。
➀ 起こり得るトラブル例3つ。
② 『一般家庭の方がイメージする檀家』と『お寺側の認識する檀家』にはズレがままある件。
③ 〘結論〙それでは双方そのようにすれば良いかを考える。



【⓪ そもそも檀家とは何か】

まずはここから押さえておくべきポイントとして檀家とは何か、を大前提として知っておいて頂きたいと思います。以前の文章でも触れたように、檀家とは『一定の寺に属して諸仏事を依頼し、布施などによってその寺を援助する家。また、その家の人。(広辞苑)』とのことです。
(詳しくは“【一住職が見る】墓じまい報道の真相”もご参照ください。)

一部には『入檀申込書及び入檀料』『離檀願い及び離檀料』をはっきり決めているお寺もあるようですが、法に基づくものでもなければ定義がかなりあいまいなものであり、大半のお寺における寺檀関係とは一種の『信頼関係』で成り立っています。だからこそ認識のズレやギャップから起こるトラブルがあるのです。


【➀ 起こり得るトラブル例3つ】

これから紹介する例は、実際に私が経験したものもありますし、聞いただけのもの、想像上のものもあるかもしれない事例です。

事例Ⓐ
いわゆる新家で特定のお寺さんとのお付き合いがないLさん宅。
Lさん宅のお父様がお亡くなりになりました。そこで葬儀社さんの紹介でX寺さんを導師として『とりあえず』葬儀を済ませました。しかしその後、いろいろ家族親族で話し合った結果、本家のルーツであるY寺さんのお世話になろうという事になりました。
しかしそれを後で知ったX寺さんはご立腹し、LさんはもとよりY寺さんと寺院同士のトラブルに発展してしまいました…。

事例Ⓑ
とある田舎で暮らす独居高齢者女性Мさん。既に亡くなったご主人はもちろんのこと、先祖代々Z寺さんの檀家としてお付き合いしてきました。喪主の息子さんは離れた街で長く暮らしています。Мさんが亡くなられ葬儀はZ寺さんがお勤めしたものの、四十九日以降「音信不通」状態に…。「あれ、そう言えば…?」と思いZ寺さんが息子さんにコンタクトを取った所、
「近くの納骨堂に納めて、そのお寺さんのお世話になっています。」
「墓じまいも済ませました。」
「地元を離れてもZ寺さんの檀家なんですか?」
とのお話。こういう関係は大なり小なりトラブルになること必至です…。

事例Ⓒ
「檀家にはなりたくないが、お葬式や年忌法事のお勤めだけはP寺さんにして欲しい。」
と仰るNさん。これはお寺さんのスタンスによって濃淡あると思いますので、次章で詳しく述べます。


【② 『一般家庭の方がイメージする檀家』と『お寺側の認識する檀家』にはズレがままある件】

お寺の常識は世間の非常識、またその逆もあると感じます。

〘事例Ⓐについて〙
一件の葬儀を勤める、戒名を授与する。お寺の常識に照らし合わせるならば、
『戒名を授与する=血脈(けちみゃく)を結ぶ=師弟関係を結ぶ=檀信徒である=檀家である』と捉えるのが全うではありますが、実際問題としてそこまで理解している一般家庭の方がどれだけ居るのかという点に大きなギャップがあります。
私がY寺の住職ならですが、
・葬儀はどちらのお寺さんでされましたか?
 (しかしそれすら分からないというケース有り)
・X寺さんへの了承を得て下さい。既に檀家認定されている可能性があります。
・あまりにもX寺さんと利害関係が絡むような場合は断ったケースもあります。
ぐらいに対応しております。
≪また、お寺によっては『新家も檀家(準檀家)認定』されている場合があります。≫
実はそれぐらいデリケートな事なのです。

〘事例Ⓑについて〙
息子さんからすれば『行きつけの美容室を変える』ぐらいの認識しかないのかもしれません。いくら信教の自由とは言えど、それぐらいの感覚の方は多くなっているのが現状です。もし檀家を変わるなら変わるで、本来もとの菩提寺Z寺さんへは連絡すべきですし、新しくお世話になる側のお寺さんもその辺はきちんとアドバイスするべきだと思います。
でも当の息子さんには何も悪気はないのです。知らないのですから…。
間に立つ、葬儀社さん、仏具屋さんもぜひ仏事のイロハやアドバイスをしてもらえると有難いです。住職からは言い辛いこともありますので。

〘事例Ⓒについて〙
私ならこういうケースはお断りするか、檀家になってもらうかどっちかです。
檀家としての付き合いはしない=年会費や寄付、世話役はやらない。だけどお勤めはしてもらいたい。それでは今までお寺を支え続けてこられた既存の檀家さんに失礼なことであり、不公平でもあります。
これは「私なら」の話であり、お寺さん・住職さんによっても檀家の定義は様々ですのでご留意下さい。
ちなみに拙寺では毎年の年会費を下さる、毎年の棚経をお参りする家、法事や葬儀を継続的に依頼してこられるのが檀家という認識です。繰り返しますが、だからこそ『信頼関係が必要』なのです。

小坊主
【③ 〘結論〙それでは双方そのようにすれば良いかを考える】

檀家とは何ぞや、お寺側はもちろん、マスコミには正しい情報発信をして頂きたいですし、葬儀社さんや仏具店さん石材店さんにも適切なアドバイスをして頂けたらと思います。
一方のお寺側としては、目線を一般の方に合わせていく必要があると思います。
これは白、これは黒…何でもきっちり明文化され裁判沙汰になる息苦しい世の中において寺檀関係の多くは『信頼関係』に基づいているのです。
一番良いのは自分の考えだけでなく家族間で仏事に関するをコミュニケーションを常日頃から取っておくこと。お父さんお母さんはすごく拙寺と密に親しくして下さっていたのに、息子さんはさっぱり、というパターンが実に多く残念に思っております。出来れば、もしもの際になる前にいろんなお寺さんを知っておくのも有用だと考えます。
檀家になることには抵抗感を抱くがお勤めはして欲しいケース…強いて言えば現在乱立する『僧侶派遣業』がありますが、それはそれでデメリットもはらんでいるものなので、その話はまた別章でご紹介出来たらと思います。(私は裏側も知っております。)

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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