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【世相を表す】お寺への頂き物【ベスト3】(食べ物系は除く)

若松慶隆

若松慶隆

 
「これ食べて下さい。」と野菜や果物、牡蠣などをお寺に持って来られる檀家さんは今でもまだまだ居られます。『お裾分け』として拙寺をその選択肢の一つに入れて下さっていること、大変ありがたい思いです。お花も同様です。本当にありがとうございます。
 さて、こういった食べ物系以外で近年「良かったらお寺さんで使って下さい」と言われるものが3つあります。
 どれも実に世相を表しているなぁと感じるものです。読者の皆様も考えてみて下さい。

 
 まずは第2位から。
 それは…、座布団です。

 なぜ座布団の頂き物が多くなったかと考えてみますと、家での法事、〇〇講の宿(やど)、などお家で他人が多数寄る機会がめっきり減っているからです。〇〇講は高齢化に加えコロナの関係で止まった講が多いようです。もう必要なくなったし、座布団は置き場もかさばるし、「お寺さんなら必要かも!?」と思われているのでしょう。
 確かに多く持っておくことに越したことはないのですが、、、いよいよ拙寺も置き場に困り、誠に申し訳ございませんがお断りせざるを得ない状態にあります。


 第3位は第2位と関連します。
 それはイスです。

 お家で人が寄っていた折は、イスがないと困るというお年寄りが居られたのですが、寄る機会自体が無くなるとイスも座布団同様、不用品に…。
 お寺もイスがたくさん必要になっており、ありがたく使わせて頂いております。


 では注目の第1位。
 答えは『お線香』です。
 このお線香も一昔前まではそんなに頂く機会はなかったように思いますが、ここ10年ぐらいで増えていると感じます。

 理由は『香典辞退』の代わりのお供え物だと思われます。
『香典辞退』は家族葬急増の後を追うように増えて来ました。でもこちらは古くからのお付き合いが色濃い田舎。
「『香典辞退』と言われてもうちの時は香典してもらっているし何かお供え物を…」という時にピッタリ来るのがお線香のようです。気持ちも伝わるし、日持ちもするし、貰って損はないだろうとの思いでしょう。
 しかしご当家にとってはたくさんの方からお線香を頂くと、「さすがにこんなに持っていても…、お寺さんなら必要とされるだろう」という感じで、お寺に譲って下さる方が近年多数なのです。
 進物用はお寺から見ても高品質のものが多く、こちらもありがたく使わせて頂いております。


 タイトルに【世相を表す】と書きましたが、これらはややネガティヴな意味での【世相を表す】とも思えます。どれも人と人の繋がりが薄くなっているからこそ生まれた頂き物だと言うか…。

 顔ではありがたいと言いつつ心では何だかなぁという気持ちも正直あります。
 そこで最初に話を戻しますが、お譲り先の選択肢にお寺を入れて下さっていることは大変ありがたいことであります。その選択肢に挙がらないようになってしまった時、お寺の存在意義や価値はどうなるのだろうと思ったりします…。今ある日々に感謝。(了)

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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