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【世相の変化】ゴールデンウィークのお寺事情【檀家寺限定!?】

若松慶隆

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 みなさんこんにちは。
 最大9連休である今年のゴールデンウィーク(以下『GW』と表記)も後半に入ろうとしています。基本的にお寺のカレンダーは世間とは逆なのですが…、GWに限って言うと『昔より格段に楽になっている』のです。
(以前のコラムでも触れましたが、檀家寺とは法事やお葬式を主たる仕事としているお寺のことを指します。寺院全体の大半が檀家寺です。)
では一体なぜ楽になったのでしょうか。
この点に関心のある方は以下をお読みになる前に、読者の皆様も理由を一緒に考えてみて下さいませ。


 では私一個人の住職として答えを探ってみます。

➀ 昔のGWと言えば法事の予約ギッシリだったのが、今は逆になっている現状。

② それがなぜなのか。世相や人々の価値観の変化から考える。

③ 〘結論〙それは良い事か、悪い事か。

④ 〘毎度の蛇足〙もう少し深掘りした裏話など。


➀ 昔のGWと言えば法事の予約がギッシリだったのが、今は逆になっている現状

 私が朝日寺の副住職になった15年程前、GWと言えば家族親族が集まりやすい『法事の絶好日和』
という感じで、拙寺も早々と法事予定が埋まり、GW中はとても忙しくしていたものです。お家によっては30~40名もの方が集まり、記念撮影に「住職さんもぜひ入って…」と言われることもよくありました。(写真のコレクションしています笑)
 しかしその傾向は徐々に薄まり、特にここ5~10年のGWはお寺にとって『法事の少ない休日』と化しています。


② それがなぜなのか。世相や人々の価値観の変化から考える

 ズバリ言いますと…、

Ⓐ旅行やお出掛けに行こうとしているかもしれない子や孫、親戚らのGWを法事で潰すのは申し訳ない…というご当家の配慮。

Ⓑ実際にGWは法事より旅行に行きたい本音だという人。

ⒸGW中に法事をやりたいが、「お寺さんはGW忙しそう…」なので二の足を踏むご当家。

 概ねこれらに集約されるかと思います。

 ⒶⒷは『卵が先かヒヨコが先か』理論で、段々そのお互いがお互いを配慮し合う傾向が強まっていると感じます。(ちょっと配慮しすぎになっている気がしますが、、)
 実際に拙寺のような田舎では、『同じ集落に親戚がゴロゴロ居る』のは普通のことで、5月3日は〇〇さんの法事、5月4日は△△さんの法事、同じ顔触れに出くわすこともしばしばありました。(同じ法話は出来ないので少し困る、、)
 でもその「今年もGWは法事ウィークだ」とジョークまじりに仰りながらも、各家の都会から帰ってくる息子さんやお孫さんとに会うのを楽しみにされている感じで、決して嫌がっているわけではないことを付記しておきます。
 そして最後にⒸ。ご丁寧な方はとことんご丁寧、すごくこちらの事情も気遣って下さいます。


③〘結論〙それは良い事か、悪い事か

 100%白黒どっちか、という答えでは決してないのですが、私個人的には良いことだとはあまり思わないです。前章②に述べたかったことは、お互いがお互いを配慮し合う度合いが強まり過ぎている社会全体の風潮のひとつが法事の脱GW化なのではないかと思うことです。これを仏教離れや宗教離れにカテゴライズするのは少し違うとも思います。何事でも助け合い、配慮、忖度、は必要ですがあまり行き過ぎると皆が生きづらい社会になってしまうのではないでしょうか。
 法事に関して周囲への配慮がさらに進むと、「親戚を法事に呼ぶのもアレなので今回は家族だけで小規模にやります」と言われる檀家さん。コロナ禍の影響も相まって増加傾向です。
(『家族だけで』にも落とし穴があり、招待されなかったご親族と身内トラブルに発展したケースも結構あります。これについて詳細はまた別コラムでまとめます。)

 いつも謎だ・・・と思うのがGWやお盆、年末年始になると必ず出て来るトップニュース。
 例えば駅や空港でインタビュー。
「ハワイに行きます。」
「○○のライブ行きます。」
という声よりもむしろ、
「山形の実家へ帰ります。」
「熊本のじいじばあばに早く会いたいです。」
「コロナの事もあってなかなか会えなかった身内が多いので実家でゆっくり過ごします。」
といった声をよく耳にする気がします。
『ん?普段なかなか会えない身内…!?!?!?
 ならばそういう方々と集まれる良い機会としてGWに法事をすれば良いのでは!?
と個人的には思います。
 家族親族お揃いになること自体に供養の功徳があると思います。
本人が思っているほど、周りは気にしていないのでは!? これが今回の結論です。(結論になっていないような結論ですが…)
 法事にしろ何にしろ、良き配慮の均衡点を探って保っていくべきだと考えております。でないと益々生きづらい世の中になってしまいそうです。。


④〘毎度の蛇足〙もう少し深掘りした裏話など

 GWに法事をする家が減ったと言え、ご先祖の命日が『GWに命中』している檀家さんはどうしているでしょうか。たいてい「命日を過ぎるよりは前倒しした方が良い」と考える檀家さんが多く、結果としてGW前の土日が猛烈に混み合う状態になります。それよりはなだらかに仕事が分散されるほうが楽なのですが…。
 でも自分の性格的には『なだらかに50%ずつ2日働く』のと『1日命一杯100%働いて1日は完全フリーな日を作る』なら後者を選びますね。スポーツ観戦(特にサッカーやアイスホッケー)大好きです。お坊さんも息抜き必要ですからね。
 さて、私のGW後半どう過ごしましょうかね。カレンダーと逆の仕事されている方は人混みが苦手な人多い方イメージあります。
最後に、いつも思うのはお出掛けシーズンとはその裏で働いてくれている人が居るから多くの方が休日を楽しめているのであって、何かの長い待ち時間にイライラすることがあったとしてもその感謝の気持ちを忘れてはならない、ということです。
(動画は朝日寺のつつじ庭園です。全く混まないのでおススメですよ!)


【最後に良い情報】(←ホントに最後です)
 私はコロナ禍が明けても法事の少人数化は続くと予想していましたが、最近は逆に割と大人数の法事が多く見受けられます。ここ3年ほど呼びたくても呼べなかったご親族や孫・ひ孫。「こういう時でないとみんなあえないよね~」という微笑ましい近況報告の会話。
 どうやらコロナにズタズタにされたように見えていた、寺離れ・仏教離れは深刻化していない、むしろ復活している様にも見えます。


 今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
 また次回(完全不定期)もお楽しみに。 (了)

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若松慶隆
専門家

若松慶隆(住職)

朝日寺

元銀行員という異色の経歴を持つ住職。多様な価値観でそれぞれの家庭事情に真摯に向き合い葬式や法事などを執り行う。寺の歴史や伝統行事などをHPやSNSで情報発信し、檀家外の人も集う開かれた寺を目指す。

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