ご相談前に知っておきたい「お問い合わせから相談までの流れ」

従業員から「がんと診断されました」と告げられたとき、会社として何をすべきか、すぐに答えられるでしょうか。
日本人の2人に1人が生涯でがんに罹患すると言われる時代、これは他人事ではありません。従業員20名の会社なら、在職中に誰かががんの治療をしながら働く場面は、確率の問題として十分に起こり得ます。私はがん専門のファイナンシャルプランナーとして、患者さんご本人のお金の相談を受けてきましたが、近年は「経営者側」からのご相談が増えています。
そして2026年4月、この分野で大きな法改正がありました。今回はその内容と、大分の中小企業が今できることをお伝えします。
2026年4月から「努力義務」になりました

改正労働施策総合推進法の施行により、2026年4月1日から、病気の治療と仕事の両立支援に取り組むことが、すべての企業の努力義務となりました
(労働施策総合推進法第27条の3)。あわせて厚生労働省から「治療と就業の両立支援指針」が示され、相談窓口の明確化や、柔軟な勤務制度・休暇制度の整備などが求められています。
努力義務なので罰則はありません。ただ、これまで「取り組むことが望ましい」だった支援が、法律上の企業の責務に格上げされた意味は小さくありません。採用面でも、「病気になっても働き続けられる会社かどうか」は、求職者が企業を見る目線として確実に強まっています。人手不足に悩む大分の中小企業こそ、対応する価値のあるテーマです。
注意:ネットで出てくる「両立支援の助成金」は終了しています
ここで一つ、重要な注意があります。「治療と仕事の両立支援 助成金」で検索すると、今でも次の2つの制度を紹介する記事が数多く出てきますが、どちらもすでに新規受付を終了しています。
- 障害者雇用安定助成金(障害や傷病治療と仕事の両立支援コース)→平成31年3月末で新規受付終了
- 治療と仕事の両立支援助成金(労働者健康安全機構)→令和4年4月で受付終了
現在、国の産業保健関係の助成は、商工会議所などの事業主団体を経由する「団体経由産業保健活動推進助成金」に形を変えており、個別の会社が直接申請して受け取る形ではなくなっています。古い情報をもとに申請準備を進めてしまうと、時間だけが失われます。ご注意ください。
大分の中小企業は何を使えるのか

助成金がないなら自腹で全部やるしかないのか、というと、そうではありません。
まず、無料で使える公的支援があります。大分産業保健総合支援センターでは、治療と仕事の両立支援について、事業所向けのセミナーや相談対応に加え、専門家が会社に出向く個別訪問支援、本人・会社・主治医の間の調整を手伝う個別調整支援まで、無料で提供しています。従業員50人未満の事業場であれば、地域産業保健センターの窓口も利用できます。就業規則にどんな休暇制度を入れるか、主治医との情報のやり取りをどうするか、といった実務は、まずここに相談するのが近道です。
次に、北九州市など福岡県内に事業所がある場合は、福岡県独自の「がんの治療・介護と仕事の両立支援事業費補助金」が使える可能性があります。常用労働者50人未満の福岡県内の事業所が対象で、在宅勤務の環境整備に上限20万円、がん患者の新規雇入れや代替職員の雇入れに上限30万円などが、補助率10分の10(全額)で助成されます。ただし、県のサポート事業所登録など3つの登録が要件で、採択枠は在宅勤務の環境整備が年2事業所、がん患者の新規雇入れにいたっては年1事業所と、極めて少ない制度です。筆者が2026年7月21日に県の担当課へ確認したところ、令和8年度も実施中で、現時点ではどの枠もまだ埋まっていないとのことでした。検討される場合は早めの相談をおすすめします。大分県には現時点で同種の企業向け補助金は確認できていません(2026年7月時点・筆者調べ)。
制度づくりと同じくらい大事な「お金の備え」
両立支援の体制づくりと並行して、経営者に考えていただきたいのが、お金の面の備えです。
従業員側には、傷病手当金や高額療養費制度といった公的保障があります。ただ、これらは「知っていて、正しく手続きできて」初めて機能します。診断直後の混乱の中で、本人任せにせず会社側が案内できる体制があるかどうかで、従業員の安心感はまったく違います。
そして見落とされがちなのが、経営者自身ががんになった場合です。従業員には傷病手当金がありますが、経営者の治療期間中の役員報酬、借入の返済、事業の継続をどう支えるかは、会社ごとに設計しておくしかありません。両立支援を「従業員のための制度」で終わらせず、経営リスク対策として捉えることをおすすめしています。
法改正をきっかけに、就業規則の整備、公的制度の社内周知、そして経営者・従業員それぞれのお金の備えを、一度セットで点検してみてはいかがでしょうか。がんとお金の専門家として、大分の経営者の皆さまのご相談をお受けしています。
※制度の内容・受付状況は変更される場合があります。申請等の際は必ず各窓口の最新情報をご確認ください。


