忘れ去られた地震対策(1)

杉田昌穂

杉田昌穂

テーマ:英才教育

ご存じのように日本は地震大国です。ところが残念なことに、日本ではまともな地学教育がなされていません。

私が幼稚園に入る直前に奈良市東部山間地区から西部地区に転居しました。そこは広大な雑木林に囲まれたのどかな小さい住宅地でした。やがて小学生になる頃からその雑木林を切り開いて住宅開発が始まりました。夕方になると犬を連れて散歩ついでに、作業員が帰った後の開発地に入り込んでいました。
そこで目についたのは地層です。毎日毎日重機が地面を削っていますから、新鮮な地層の断面を見ることができます。大阪層群と呼ばれる約300万年前~数十万年前の堆積層が目の前に広がっていました。まだ地層という言葉も知りませんが、そこには粘土だけの層があり、砂だけの層があり、黒っぽい粘土の層には植物の化石があることにも気づきました。普通の葉もありましたが、少し変わった形の葉もありました。後にその変わった形の葉が「メタセコイア」という木の葉であり、1941年に化石植物として発表され、1946年に中国四川省で自生しているのが発見され、やがて世界に移植され広まりました。今この文章を書いている教室の前にある公園にもメタセコイアが数本そびえています。

小学5~6年の担任は専門家ではありませんが、地学にある程度の素養を持つ先生で、学校近くの開発地で魚の化石が見つかったということで、放課後連れて行ってくださいました。
中学校では生物地学クラブで活動しました。ラッキーなことに教育実習に地学の研究者である人見功先生が来られて、岩石採集や化石採集など、いろいろな場所に連れて行ってくださいました。時には学校教師のための研究ツアーに紛れ込ませてくださって、京都府の大谷鉱山(既に閉山)を見に行ったこともあります。人見先生が「マチカネワニ」(1964年に大阪府豊中市の待兼山丘陵にある大阪大学豊中キャンパスの新校舎建設現場から発掘された。)の研究者だということは10年ほど前にある人から聞きましたが、この文章を書くに当たってウィキペディアで「マチカネワニ」の項目を見ていて驚きました。人見先生はその化石の発見者だったのです。

さて高校に入り、地学の授業を楽しみにしていたのですが、あろうことか、その高校には地学の講座がありませんでした。
地震大国の日本であるのに、地学の研究者が少ないため、高校には地学の講座がほとんどありません。そのため地学の研究者が少ない・・・。つまり悪循環が起こっています。ネット情報によると、「生物」の講座を開設している高校は87.7%、「物理」は81.0%、「化学」は78.2%なのに対して、「地学」科目を開設している高校は、なんと7.4%しかありません。裏返せば、92.6%の高校では「地学」の授業が取れない、つまり、ほとんどの高校で「地学」が学びたくても学べない状況になってしまっているそうです。(ブルーバックス通信https://gendai.media/articles/-/144012?page=2)また能登地震があった石川県の隣、富山県の公立高校では地学の講座が全くないそうです。

さらに悪いことが続きます。その頃「プレートテクトニクス」という新しい地学の学説が発表されたのです。科学雑誌でそれを読んだのですが、それまでの学説しか知らなかった私には全く理解できませんでした。今から思えば地学の先生でもおられたら、その助言によって理解できたと思うのですが、当時の私にとって衝撃でした。さらに生物の授業がとてつもなく魅力的だったので、そちらに傾倒していくことになり、地学から距離を置くことになります。

地学とは、固体地球の科学(地震、火山、レアアース、鉱物資源など)、海洋や大気の科学(台風、気候変動、気象現象など)、天文・宇宙の科学など、日本人だけでなくこれからの人類にとって欠かせない大切な科学です。

政府は真剣に対策を練る必要があると思います。

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杉田昌穂
専門家

杉田昌穂(教師)

青穂塾(せいすいじゅく)

読み聞かせ、野外体験を重視し、勉強を楽しめる子どもへと育みます。物事に興味を持ち、小さな頃からコツコツ取り組む姿勢を身につけた子どもは、自然と高度な課題にも取り組み、努力を続けるようになります。

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