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青木紘

ペットとオーナーの絆を深める獣医療のプロ

青木紘(あおきひろし) / 獣医師

平野町ペットクリニック

コラム

戌年に考える愛犬家とは

2018年3月16日 公開 / 2018年12月16日更新

テーマ:長崎の動物病院

コラムカテゴリ:医療・病院

久しぶりの更新になってしまいました。
新しい年を迎え早3ヶ月が経過しましたが、お正月の初詣で感じた大事なことを書きたいと思います。

初詣は家族と一緒に諏訪神社で参拝するというのが、我が家の恒例行事となっています。今年も2日に行ったのですが、今年は戌年ということもあったのかわんちゃんを一緒に連れた参拝客の方を例年よりも多く見かけました。

そこで私が感じたことを、これを読んで頂いた方に今一度考えて頂きたいと思います。

獣医師の仕事には病気を治すことだけではなく、動物の適正飼育を指導するということも含まれます。これはわんちゃん猫ちゃんだけでなく、鳥やその他の動物を飼育するにあたり、その対象動物が肉体的・精神的に健康でいられるような飼育方法を指導するという当たり前のことですが、それだけではありません。指導する範囲は動物だけに対してのことだけでは無く、飼育するその飼育環境に対してもその内容は及びます。

ここで挙げられる飼育環境とは、対象動物に対する飼育環境のことだけではありません。その周辺に対する飼育環境、すなわち飼育・移動・生活する全ての場所における適正飼育を考える必要があります。

回りくどい言い方をしてしまいましたが、今回私が感じたことで伝えたいことを些か乱暴な言葉で言い換えますと、

「世の中の全ての人が犬を好きなわけでは無い」ので、それを踏まえた適正飼育をしましょう。

と、いうことになります、些か乱暴な言葉ではありますが。

毎年、わんちゃんを連れた参拝客の方を見かけますが、今年は特に多く感じました。正月2日の諏訪神社です。出店の屋台も多く、人でごった返しています。小型犬を複数頭抱きかかえている方、中型犬を抱えて階段に並んでいる方、大型犬を2頭つれて来られて、柱につないで参拝をしている飼い主の方もいました。県図書館から諏訪神社までの通りを、ノーリードで歩かせているミニチュアダックスも見かけました。

連れてきている飼い主の方に共通していることは、皆一様に「うちの子可愛いでしょう?」といった表情に見えます(私がそのように感じてしまっているだけかもしれませんが)。

出会ったわんちゃん達は皆当院の患者様ではありませんでしたが、これを読んで頂いている飼い主の方で思い当たる方はいないでしょうか?

一つ注釈を加えるならば、決して「一緒に参拝に行かないようにしましょう」ということではありません。「人でごった返すことがわかっている正月2日に諏訪神社に参拝に行くことが、他人にとって、わんちゃんにとっても、如何なものか考えてみましょう。」ということです。

上で書いたように、世の中にはわんちゃんが苦手な人も多くいらっしゃいます。それは犬の大きさに関係ありません。噛まれた経験から恐怖を憶えている方もいるでしょう。匂いが苦手な方もいるでしょう。猫ちゃんが好きでわんちゃんが好きではない方もいるでしょう。大型犬などはその固体の性格を知らなければ、私でも近づきません。

うちの子はおとなしいから、シャンプーをこまめにして香水をかけているから、今まで人を噛んだことなど無いから、などと考えた方は大きな間違いです。

大型犬の飼い主が飼い犬に噛み殺される事件は頻繁にニュースになります。一昨年でしょうか、今まで人を噛んだことが無いゴールデンレトリーバーが、飼い主のお孫さんの赤ちゃんを噛み殺した事件などもありました。我々のような小動物臨床獣医師の中には、中型犬に指を噛みちぎられた獣医もいます。小型犬に噛まれて指が動かせなくなった話など、ニュースにもなりません。参拝するために諏訪神社の階段で私も子供を抱っこして並んでいましたが、抱きかかえる子供の顔のすぐそばに、抱きかかえられたわんちゃんの顔がありました。普段絶対に噛まないからと飼い主の方が考えられていたとしても、わんちゃんもそれまで見たことのないくらいの大勢の人が集まるなかで、極度の緊張・興奮状態のなかで突然知らない手が目の前に来たとしたら、、、私は万が一のことが起こらぬよう手で子供をガードして階段を並んでいましたが、もし知らずに近くにいたわんちゃんを触ろうと子供が手をのばした場合、突然触られたわんちゃんが驚いて反射的に噛み付いてしまう恐れもあるでしょう。大型犬をつないで参拝をしている間に、わんちゃんが好きな方が近よってくることもあるでしょう。誰か一人がついていたとしても、何かの拍子に犬との接し方を知らない人が背後から触ろうとすることもあるかもしれません。絶対に何もおこらないなど、わんちゃんを知っている人ほど理解できると思います。

それでも「うちの子だけは大丈夫」と考えた方がもしいるとしましたら、

あなたは犬を飼う資格はありません。

想定されるリスクはそれだけではありません。混雑した中でわんちゃんはどこで排泄をするのでしょう。水をかけて流せば良い?おしっこに水をかけた上を歩くことを良しとする人はいるでしょうか。晴れ着の方も多くいます。足元で気づかないままおしっこをかけてしまったとしたら、わんちゃんのすることだからと笑ってすませられるでしょうか。晴れ着で無くても込み合った中で並んでいる隣の人に毛をつけてしまうということは当然おこっているでしょう。犬が好きな方でも、そうでない方でもどう感じるでしょうか。

またリスクは他人に迷惑をかけるということだけではありません。人ごみの中でわんちゃんが足を踏まれてしまうこともあるでしょう。わんちゃんの指は簡単に折れます。可哀想なのは、正月などわからず人ごみの中飼い主の満足のために連れてこられ足を踏まれ折られたわんちゃんと、隣にいただけで不幸にもわんちゃんの指を折ってしまった方です。わんちゃんと踏んでしまった方に罪は何一つありません。

全ては自己満足のために連れてきた飼い主の責任です。

繰り返しますが、決して一緒に参拝に行くべきではないということではありません。少し日をおいて、参拝客が少なくなってから行くのでは駄目なのでしょうか。それとも見せびらかしたいだけでしょうか。

ノーリードでミニチュアダックスを歩かせていたわんちゃんの飼い主には、抱っこしてもらえないでしょうかと注意?をしました。

不幸にも他人を噛んでしまったわんちゃんは、相手の障害の程度や状況によっては殺処分されることもあります。

これを読んで頂いて、思い当たる方はいますでしょうか。

もしいたとしたらば、今一度愛犬家という意味を考えていただければと思います。

わんちゃんを好きな方もそうでない方も、共存できる社会を作るために、

愛犬家がすること、しなければならないこと、

考えて頂ければ幸いです。



長文を最後までお読みいただきありがとうございました。


→ 病院ブログに裏ばなしも書きましたので、宜しければこちらもどうぞ。

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