人工膝関節じゃ嫌な人へ骨切り手術のお話
みなさま今年はコラム頑張りますよ!
今回は骨粗しょう症についてです。骨粗しょう症の好発年齢と人工関節手術を受けられる患者様の年齢層が重なる部分があり、手術前にしっかり検査をしておくことが大事となります。骨粗しょう症の有無が手術のあとの成績を左右すると言ってもいいかもしれません。そこで今回当院でおこなった調査について報告いたします。
人工関節周囲骨折(執刀医としていちばん見たくないレントゲン画像です)
1.はじめに
当院ではロボット支援人工関節手術の導入の反響もあって、2023年は1年間に300例の人工関節置換術(股関節・膝関節)をおこないました。そのなかには骨粗しょう症をお持ちの患者様も結構な確率でいらっしゃいました。わが国における50歳以上の女性の有病率は24%程度とされております。骨粗しょう症は人工関節手術中、術後の人工関節周囲骨折や人工関節のゆるみの危険性を増加させるといわれております。今回当院にて変形性膝関節症に対して人工関節を予定された女性患者様の骨粗しょう症の有病率を調査いたしましたのでご報告いたします。(この内容は2024年2月に京都で開催されました第54回日本人工関節学会にて筆者が発表いたしました)http://www.congre.co.jp/jsra2024/
2. 対象患者様
対象は2022年4月から9月の期間に人工膝関節置換術を受けた女性患者様56人(平均年齢73.8歳)です。
3.調査方法
手術術前検査で骨密度検査(腰椎、左大腿骨)施行し、有病率について調査いたしました。
4.結果
骨粗しょう症をお持ちの患者様は腰椎で1人(1.7%)、大腿骨で11人(20%)で合計12人(21.4%)でありました。報告されている我が国の有病率と同様な結果と思います。手術前検査ではじめて診断された方が12人中7人いらっしゃいました。
5.考察
今回骨粗しょう症治療適応の患者様も多く含まれていることが分かりました。しかし骨粗しょう症と診断されているのに、有効な治療を開始していない患者様も多く、今後は骨粗しょう症治療介入がスムーズに行える病院のシステム作りが必要であると思いました。我々人工関節を専門とする整形外科医は手術は大好きなのですが、骨粗しょう症治療にはあまり興味ない医者が多い印象です(私は違いますが・・・)。でも、人工関節は硬い岩盤の上(硬い骨)に家を建てる(人工関節をのせる)ことで長期に安定した成績が得られる手術ですので、岩盤(骨)が丈夫なのかどうかは非常に大切なことになります。今後人工関節を受ける予定がある方は手術の前に、一度主治医に骨粗しょう症の検査だけでも提案してみるといいと思います。
手術前の骨密度検査で骨粗しょう症が見つかった患者様