家づくりの流れ 13
前回ご紹介したバウビオロギーについてですが
昨年、長野へ柿渋体験に参加しました。
柿渋は、柿の実が青い7月~8月くらいに収穫して搾り
その潰した実と汁を樽に移しておもりを載せて1年から2年寝かせます。
その汁を柿渋と言って木材に塗ると
防腐や防虫効果があり耐久性が増します。
この昔ながらの自然の防腐剤、防虫剤を木材に使う事で
健康的な住空間になります。
このワークショップの後
日本バウビオロギー協会の理事
坊垣先生よりバウビオロギーの話を聞くことができました。
そして、夕方からは参加者全員でバベキュー懇親会をしましたが
話の中で、坊垣先生は、
2回も美々津重要伝統的建造物群保存地区街並みを見に行ったそうです!
(日本バウビオロギー協会ホームページより)
バウビオロギーについてですが
「バウビオロギー(Baubiologie)」は、
「建築(バウ)」と「生命(ビオ)」と「学問(ロゴス)」からなるドイツ語の造語であり、
日本語では建築生物学・生態学と訳しています。
ドイツにおけるこの分野のパイオニア的存在アントン・シュナイダー氏は、
バウビオロギーを「住環境と人間との全体的諸関係についての学」と定義しており、
バウビオロギーは人間本性と気候風土を科学するなかで、
健康や環境に配慮した、人間味あふれた、「巣」としての住まいづくりを目指します。
私は住まいを生活のパートナーと呼んでいます。
ですから、建築のデザイン、美学的な視点のみならず、生物学的な視点を重視しています。
つまりバウビオロギーは、
肉体と魂と精神を持った人間という生物が、
いかに元気に暮らせるか、
住環境や地域環境(コミュニティ)といった外界が、
どれほど人間の健康に重要な役割を演じているかということに関して、
目指すべき指針を表しています。
バウ(Bau):空間、巣、館、ふるさとの意
ビオ(Bio):生命の意
ロゴス(Logos):論理、すなわち自然の秩序=調和の意
すなわち、バウビオロギーとは
「私たちの生活空間は、自然な秩序のうちにありますか? 調和がとれていますか?」
という問いかけを意味しているとも言えるのであり、
もしNOの答えが返ってきた場合には、
この秩序を再び見出すために、何ができるが真摯に考えなければなりません。
リスク要因をできるだけ減少させ、
自然の規範にできるだけ近づくことが目標です。
・より少ないエレクトリック・スモッグ、
・より少ない放射能、より少ない騒音、
・より少ないアレルゲン、
・より少ないカビ・ダニ、
その方が居心地が良いに違いありません。
病んだ住まいを元気にすること。
健康な住まい、健康な地域環境をつくること。
これがバウビオロギーの課題です。
●バウビオロギーの考え方による住まいづくりのポイント
デザインとは、本来目に見えない部分にいかなる配慮をするかということですが、
健康な住まいづくりには、様々な要素のバランスが大切です。
バリアフリー、防犯性、防火性なども大切であることは言うまでもありませんが、
健康な住まいのための設計ポイントは、
例えば次のような“ほどほど”の視点が大事なのではないでしょうか。
そして調和がとれているということは、
自然と結ばれているということであり、人間味があるということなのです。
①地域の自然風土(風の強さ・方向、土地の湿気、積雪量、雨量、方位など)とのバランス
②健康を阻害しない建材の選択と、資源を傷めない建材の選択のバランス
③吸放湿性のある建材による、室内の湿気の調和(快適な室内環境のために)
④空気温度と周壁面温度とのバランス(感覚を麻痺させる一本調子を避けるために)
⑤断熱と蓄熱のバランス(壁体の性能と配置の検討)
⑥適切な(太陽)熱取得と最小限の熱損失とのバランス(ガラス面の検討)
⑦色彩、照明、自然採光(透過と遮蔽)のバランス
⑧居室における木質系素材と左官系素材のバランス(多様な知覚体験を促すために)
⑨調和的なプロポーション、フォルム
⑩コスト・バランス(初期投資と運転・維持管理費のバランス)
●日本の民家と共通するバウビオロギーの考え方
日本の伝統建築=民家は、南北に長い日本のその土地の気候や風土に合うように、
長年にわたって培われてきた住まいづくりの技術の総合です。
その美しさは、その地で産する材料への対応の結果として生み出されたものにほかなりません。
戦後の住宅大量生産は時代の必然があったにせよ、
すべて統一されてしまった、いわゆるオール・ジャパン的な発想が、
地域の特性を失わせたことは否定できません。
そして工業化にともなって、職人の手仕事が失われていき、
民家も急速に失われていきました。
しかし、京都議定書の発効に伴う二酸化炭素排出規制に取り組む必要に迫られた現在、
単なる高断熱・高気密による省エネだけでは十分とは言えません。
例えば、群馬の高山長五郎によって伝えられた養蚕農家における「清温育」では、
養蚕に適した建物について、具体的に五つの要項をまとめています。
1 土地高燥にして排水良好なこと
2 蚕室は南に面して建築すること
3 必ず南北両面に3尺以上の廊下を付すること
4 奥行き深からざること
5 構造設備の厳密窮屈ならざること
これらの意味することは、自然のシステムを無駄なく利用するということです。
民家や農家に蓄積された仕掛け、
例えば、
風を防ぐ工夫、
逆に風を導く工夫、
高湿から室内を守る工夫、
暗さを補う天窓の工夫といった仕掛けは、
私たちにスロー・ライフの暮らし方を見直すことを教えてくれます。
これは、過去への回帰を意味するのではなく、未来の住宅のために、
伝統技術を見直し、継承し、新しい知恵を加えるということなのです。