【最新】令和7年度 宮城県の社会福祉法人立保育園の決算分析|他事業比較と3つの経営チェックポイント

日下聡

日下聡

テーマ:保育園決算分析

当事務所S.W.C.A.仙台が、社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム(https://www.wam.go.jp/wamnet/zaihyoukaiji/pub/PUB0200000E00.do)の公表情報をもとに、宮城県内の保育園(117施設)および社会福祉法人全体(262法人)の最新決算(令和7年度)を独自に集計・分析いたしました。

宮城県内で保育園を運営する社会福祉法人の理事長、園長、事務長の皆様に向けて、自園の経営診断や次年度に向けた予算編成、中長期的な経営計画の指標としてご活用いただけるよう、重要指標と実務上の分析ポイントを詳しくまとめました。


1. 令和7年度 宮城県の社会福祉法人立保育園の決算概況(中央値)


宮城県内の社会福祉法人立保育園(集計対象 117施設)における令和7年度の決算データ(中央値)の概況は以下の通りです。

ぜひ、自園の「拠点区分事業活動計算書」(社会福祉法人以外の法人は該当する決算書)の数値と見比べながら、本記事をご活用ください。

財務指標R07宮城県中央値計算式
① 経常増減差額率6.74%経常活動増減差額 ÷ サービス活動収益
② 当期活動増減差額率4.78%当期活動増減差額 ÷ サービス活動収益
③ 人件費率71.4%人件費 ÷ サービス活動収益
④ 事業費率12.1%事業費 ÷ サービス活動収益
⑤ 事務費率9.8%事務費 ÷ サービス活動収益


  • サービス活動収益:委託費収益などの本業による収益
  • 人件費:職員給料、賞与、法定福利費等
  • 事業費:給食費、保健衛生費、保育材料費、水道光熱費等
  • 事務費:旅費交通費、通信運搬費、業務委託費等
  • 経常活動増減差額:毎年の経常的な活動(本業+財務活動など)から生じた損益(一般企業の「経常利益」に相当)
  • 当期活動増減差額:特別増減の部(臨時的、例外的な損益)も含めたその年度の最終的な損益(一般企業の「当期純利益」に相当)


宮城県内の保育園では、サービス活動収益に対して人件費が7割超(71.4%)を占める構造となっており、高い人件費率を維持しながらも、経常増減差額率6.74%と堅実な利益率を確保していることが分かります。


2. 社会福祉法人全体(宮城県中央値)との比較から見る保育事業の特徴


社会福祉法人立保育園(集計対象 117施設)と、高齢者・障害者施設などを含めた社会福祉法人全体(集計対象 262法人)の各指標の中央値を対比することで、保育事業特有の財務傾向が見えてきます。

収益性の比較:社会福祉法人立保育園は高い利益率を維持

  • 経常増減差額率: 保育園中央値 6.74%(社会福祉法人全体の中央値: 1.82%)
  • 当期活動増減差額率: 保育園中央値 4.78%(社会福祉法人全体の中央値: 2.03%)


社会福祉法人全体と比較して、社会福祉法人立保育園の経常増減差額率は約3.7倍と非常に高い水準となっています。保育事業は公定価格(施設型給付費等)に基づき安定した収益基盤が確保されているため、他事業に比べて利用率や収支の予測が立てやすく、手堅い利益率を維持しやすい傾向にあります。

黒字割合の比較:約77%の保育園が黒字経営を確保

  • 黒字の割合: 保育園 76.9%[90施設 / 117施設](社会福祉法人全体: 67.2%[176法人 / 262法人])


当期活動増減差額がプラスである「黒字法人・施設」の割合を見ると、社会福祉法人全体では67.2%であるのに対し、社会福祉法人立保育園では76.9%と約10ポイント高くなっています。近年の物価高騰や光熱費上昇といったコスト増加要因が存在する厳しい環境下でも、宮城県内の社会福祉法人立保育園の多くが健全な損益を維持できていることが窺えます。

費用構造の比較:人件費率の高さ(71.4%)とコストバランス

  • 人件費率: 保育園中央値 71.4%(社会福祉法人全体の中央値: 67.4%)
  • 事業費率: 保育園中央値 12.1%(社会福祉法人全体の中央値: 11.5%)
  • 事務費率: 保育園中央値 9.8%(社会福祉法人全体の中央値: 12.3%)


費用面では、社会福祉法人立保育園の人件費率の中央値が71.4%となっており、社会福祉法人全体よりも4.0ポイント高い傾向にあります。保育事業は年齢ごとの配置基準(児童数に対する保育士数)が細かく定められている典型的な労働集約型事業であり、人員配置の手厚さや処遇改善加算への取り組みが人件費率の高さに反映されています。一方、事務費率は9.8%と抑制されており、効率的な事務運営を行っている園が多いことが分かります。


3. 自園の決算書チェック!経営判断に活かす3つのポイント


保育園決算分析表見本

当事務所(S.W.C.A.仙台)では、上記のような「決算分析表」を用いた財務診断を【1保育園あたり5,000円(税込)】というご利用いただきやすい料金で承っております。視覚的にも分かりやすく自園の立ち位置や課題を可視化できますので、経営改善の第一歩としてぜひお気軽にご活用ください。

また、今回算出した宮城県の中央値(人件費率71.4%、経常増減差額率6.74%など)を踏まえ、自園の決算書を見直す際のアクションポイントを3つご提案します。

ポイント1:人件費率(71.4%)の適正バランスと見直し手順

自園の人件費率が県内中央値の71.4%から大きく乖離していないか(例えば、75%を超えていないかなど)を確認しましょう。人件費率が過度に高い場合、以下の手順で要因を特定します。

  1. 配置基準以上の超過手厚配置になっていないかの確認(必要配置数と実績のギャップ)
  2. 非常勤職員・派遣職員の活用割合とコストパフォーマンスの検証
  3. 処遇改善加算額と職員への賃金改善のバランス点検


ポイント2:加算の取りこぼしチェックと利用定員の見直し

経常増減差額率が中央値(6.74%)を大きく下回っている場合や赤字傾向にある施設では、委託費収入(公定価格)の仕組みを最大限に活用できているかを検証することが有効な改善策となります。

具体的には、以下のような加算について算定漏れや要件の認識不足が起きていないかを確認します。

  • チーム保育加配加算
  • 主任保育士専任加算
  • 1歳児配置改善加算


また、盲点になりやすいのが「利用定員の見直し」です。公定価格は、利用定員が少ないほど児童1人当たりの基本単価が高く設定される仕組みになっています。そのため、実際の園児数が定員を慢性的に下回っている場合は、実態に合わせて利用定員を減少させる(適正化する)ことで単価が上がり、収支が改善するケースがあります。

加算要件の定期的な見直しと、実態に即した定員設定が、収益改善にダイレクトに直結します。

ポイント3:自園の過去データとの比較(3〜5年の経年変化)

県内中央値と比較するのと同時に、自園の過去3〜5年の決算推移を比較・検証することが重要です。

  • 園児数の変動に対して、人件費や給食費・事業費の調整が適正に行われているか
  • 電気代・ガス代などの水道光熱費の上昇がどの程度事業費率を圧迫しているか
  • 将来の大規模修繕や設備投資に向けた積立ができているか


時系列で傾向を把握することで、早期に経営上の変化や課題を発見することができます。


4. 宮城県の保育園決算に関するよくある質問(FAQ)


Q. 保育園の適正な人件費率はどのくらいですか?

A. 保育園の特性(定員規模や年齢構成など)によって異なるため一概に適正水準を示すことはできませんが、一つの目安として75%程度に抑えることが望ましいと考えております。
実際に、今回の集計でも宮城県内の保育園の概ね3分の2の施設が、人件費率75%以下に収まっています(中央値は71.4%)。
75%を超える場合は、損益バランスを圧迫している可能性があるため、配置人数の見直しや加算の算定状況の確認をおすすめします。


Q. 赤字傾向から抜け出すために、まず何から着手すべきですか?

A. まずは収入の柱である委託費収入について、以下の3点から着手するのが鉄則と考えております。
①公定価格の加算取得状況の再点検
②実態に合わせた利用定員の見直し
③利用定員充足率の改善
コスト削減(事業費や事務費の削り込み)には限界があるため、まずは収益を最大化させることが赤字脱却への最短ルートとなります。



まとめ


宮城県内の社会福祉法人立保育園は、高い人件費率という特徴を持ちつつも、公定価格のもとで安定した利益率と高い黒字割合を確保しています。まずは自園の決算数値と地域の中央値を照らし合わせ、客観的な財務状況の把握から始めてみてください。

今回集計したデータの一部は、S.W.C.A.仙台の公式ホームページ内の「保育園の決算分析」として公開しております。令和7年度以外の決算指標や他指標を確認したい方は、ぜひ以下のリンクより併せてご活用ください。
保育園の決算分析

また、決算分析に関するご相談や、処遇改善加算額と職員への賃金改善のバランス点検のご相談は、S.W.C.A.仙台へのお問い合わせ・ご相談フォームからお気軽にご連絡ください。

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日下聡
専門家

日下聡(会計支援・事務支援)

S.W.C.A.仙台

社会福祉法人、とりわけ保育園に特化した会計支援で20年近い実績があります。会計事務所と社会福祉法人の双方での実務を経験し、会計支援から事務支援(処遇改善等加算の相談など)まで幅広く対応します。

日下聡プロは河北新報社が厳正なる審査をした登録専門家です

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