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喜ぶ能力が培われるとき

菊地茂

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 今日は、金藤晃一先生の言葉のご紹介です。

 苦しみを感じることなく、喜びだけ感じて生きることができたならなんと楽な人生でしょうか。現代は、苦しみを経験しないように生きることが、いいことであるかのような風潮があります。ある精神科医の先生はこの風潮を「無痛文化」と言いました。
 わたしもそのひとりですが、なるべく苦労を避けて楽な方に逃げたくなる誘惑に、現代人は常に駆られているのではないでしょうか?しかし、苦しみを避ければ避けるほど、喜びもまた反比例するかのように遠ざかっていくものです。最近の医学や大脳生理学の発展は目覚しいものがありますが、ある本にこのような一節を見つけました。
 「人間には喜びの感覚だけを運ぶ神経細胞はない―自然はそんなに気前よくない。喜びを経験するためには、痛みや感触、熱さや冷たさという感覚を伝える神経細胞を『借用する』のである」。
 しっかり人生の苦しみを味わって生きるとき、私たちは同時に人生の喜ぶ心の筋肉が培われるのです。極論を言えば、苦しみをしっかりと味わうことができる人のみが、人生の真の喜びをしっかり味わうことができるのです。苦しみをさけ、楽しみだけを追い求める生き方は結果的に、人生の真の喜びから自分自身を遠ざけていることになります。
 苦しみに出会ったときこそ、喜ぶ能力が培われる最高のチャンスです。

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