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新築平屋の家づくりで失敗前に気付いておきたい間取りの注意点

栗山琢磨

栗山琢磨

テーマ:間取り・インテリア

新築注文住宅のマイホーム計画には色々な間取りの工夫がありますが、平屋の間取りでの家づくりもそうした選択肢のひとつに挙げられるでしょう。
新築一戸建てのマイホームは2階建ての建物が大勢ですが、平屋間取りの家づくりは常々一定層から強いこだわりと支持を集めます。
確かに平屋の住まいは2階建ての新築一戸建てと比較すると、上下2層が1層で階段も無くなる事で、例えば同じ30坪台の間取りであったとしても間取り構成も外観デザインも大分変わってきます。
そうしたものから生まれる独自の効果が、平屋での注文住宅を希望される方を引きつけるのでしょう。
しかしながら、平屋の間取りでの新築計画には2階建ての家づくりとは異なる注意点もあります。
そこを読み誤り思わぬところで失敗を招いては大変です。
そもそも新築注文住宅というものは平屋、2階建て、3階建てを問わずオーダーメイドの住まいですから、施工するハウスメーカーに発注した段階ではその住まいは現存しません。
それ故にイメージ不足や見込み違いでの失敗談は時に起こりがちです。
平屋建ての住まいは大勢を占める2階建てと比較しレアな存在とも言え、新築事例の見聞も限られる事からより注意深く家づくりを進める事が失敗回避には不可欠です。
今回は新築平屋の間取りで失敗しない為の注意点についてのお話です。



・新築平屋のメリット、デメリット

新築平屋の間取り
平屋の新築注文住宅には根強いファンがいる事は先にも触れました。
但し平屋で新築すると言っても、一般的に見られる2階建てが実に多様な間取りのバリエーションを持つ様に、平屋においてもそれは同様です。
上の間取り図はその一例ですが、基本的に家族4人の核家族世帯であれば3LDKないしは4LDKの間数が中心となる点も平屋、2階建てにおいての差異は無いはずです。
それでは平屋の間取りで新築するメリットとはどの様なものが挙げられるのでしょうか?
はたまた平屋特有のデメリットもあるのでしょうか?
平屋の間取りの注意点を考える前に、まずはここから整理していきましょう。


 

平屋間取りのメリット

まず始めに平屋で新築した住まいのメリットを挙げてみましょう。

①階段が無い

平屋建て住まいの最大の特徴は階段が無く全ての部屋が同一フロアである事です。
マイホーム購入世代の中心となる30代の方々といえどもやがては誰もが年老いていきます。
新築時点だけでは無く将来的な事も念頭に置くと階段の昇降が負担になった場合も見越せば、全室の管理がし易い平屋建ての間取りはこの点で理に適っており、一番のメリットといると言えるのではないでしょうか。

②家族との距離感

一般的な2階建ての間取りは1階にリビングをはじめとしたパブリックスペース、2階に各個室のプライベートスペースが馴染みのスタイルですが、同一フロアに集約する事でこうした距離感を縮めたいと言う考えに平屋の間取りはマッチします。

③屋外との距離感

全室が1階部分に位置しているという事は屋外とのアクセスも容易になりお庭との距離が縮まります。
自然環境との接点を密にする希望があればこれを叶え易い事も平屋の間取りの特徴でありメリットのひとつと言えるでしょう。

④独特なデザイン性

2階建てと平屋の住まいを比較した場合にそのデザイン性にも特徴が現れ、特有なおしゃれな家づくりへのアイデアが考えられます。
室内デザインにおいては全室の天井部分が屋根の直下にあるので、小屋裏部を利用した吹き抜け空間の演出が容易に採用できます。
外観デザインにおいても縦横の比率が2階建てとは異なる平屋は、工夫次第で個性的おしゃれなデザインを試せるのもメリットに挙げられるでしょう。

平屋間取りのデメリット

一方で平屋はメリットばかりではありません。
新築後に初めて気付く失敗を避ける為に、デメリットも併せて整理しておきましょう。

①間取りが案外難しい

例えば4LDKの間取りで新築した場合、1、2階に分散すればLDK含む全5室を日当たりの良い南面に配置する事はさほど難しくは有りませんが、平屋の間取りとなると敷地の制約、廊下の肥大化等から気軽に対応仕切れず、陰部屋や暗い廊下になってしまう失敗が起き易い事は注意点です。

②プライバシーが保ちにくい

平屋のメリットで挙げた家族との距離感も、時に家族の成長と共にプライバシーが保ち難くなり窮屈さを感じる要因になり得る事は注意点として挙げられます。

③防犯性の問題

平屋の間取りは原則として全ての部屋が地表面に近く、それは前述の通りメリットになり得ますが、防犯面では外部からの侵入が容易とも言え、この点ではデメリットになります。
特に間取りの構成次第では、見通しの効かない部屋を換気する為の開口部や洗濯物の管理にも注意を払わねばなりません。

④コストが割高である

平屋建ての住まいは2階建てと比較し、同じ設備、仕様を選択したとすれば同じコストになりそうにも思えますが、両者を同じ規模で新築した場合、通常基礎や屋根工事は平屋建ての方が工事面積が多くなります。
総2階建てと比較すれば単純にその部分の工事量は2倍になりますね。
また、それは敷地に対しての占有面積も大きくなるので、土地購入も合わせた新築計画の場合には購入土地の面積も広めにしなければならず、その分のコストがかさんでしまう事もデメリットとして挙げられます。
また、一般的面積観念で土地購入をしてしまい、間取りづくりで土地が狭過ぎることに気付くという失敗談も注意点と言えるでしょう。

⑤参考になる実例が少ない

新築注文住宅で家づくりをする際、色々な実現したい希望やハウスメーカーからの提案を基に間取りを含む企画案が練り上げられていきますが、こうした中で平屋建ての新築住宅は実例が乏しくアイデアやイメージを検証しにくい事もデメリットに挙げられます。
一般に新築された住まい、建売住宅、ハウスメーカーの住宅展示場と全てにおいてレアな存在であり、見聞を深めるのは少々厄介な作業となります。
また、それ故にハウスメーカー側も平屋の企画に対応出来るスキルに差があり、乏しい会社に任せては思わぬ失敗も招きかねません。
ハウスメーカー選びにおいても注意が必要です。

・平屋間取りで起こりがちな失敗はコレ

平屋建て新築住宅の特徴をメリット、デメリットから整理してみました。
マイホーム計画を進める皆さん全てがこれらメリット、デメリットを理解した上で平屋建ての住まいを選択し、新築した住まいで期待通りの暮らしを享受できるのが望ましいのですが、残念ながら時に失敗談も起こりがちです。
特に最近よく見られる新築平屋間取り案にこうした失敗に至る要素を見つけることが出来ます。
ここからはそうした失敗を避ける為の注意点を見ていきましょう。

よく見るコンパクト設計平屋間取りの新築住宅

本来平屋建ての間取りは決して真新しいものでは無く、一戸建ての本流は寧ろ平屋の住まいと言えるでしょう。
しかしながら、核家族化が進み、間取りの様式が変化し、宅地小規模化の流れから、効率性に勝る2階建て住宅が主流となりました。
それに呼応し、平屋の間取りも時代に沿ったスタイルが採用され、特に昨今よく見られる形としてコンパクト設計の新築平屋が目にとまるのではないでしょうか。
例えば下図のような間取りはその一例です。
コンパクト設計平屋
極力無駄な廊下スペースを排除し効率良い動線を意識すると共に、その動線の中心にLDK空間を充てる事で家族の接点も必然的に増え、住まい全体に目配りが容易となるコンセプトが示される様です。
また、コスト高が問題となる平屋の新築ですが、コストの割高要素に対して面積の圧縮で補えるのもこうしたスタイルのメリットとして謳われます。
そう考えますと先に挙げたメリットの多くを享受しデメリットも「概ね」解消しているようにも思えますが、前項で取り上げた「プライバシー」の問題は棚上げされたままです。
ここに気付かずにコンパクト設計の評価を誤ってしまう失敗談は実は結構多い話なのです。
具体的にはどんな不具合が失敗談につながるのでしょうか?
生活シーンでの注意点を挙げてみましょう。

新築完成後に気付く平屋間取りの失敗談

先程のコンパクト設計の間取りを例にどんな部分が失敗につながる恐れがあるのか?どの様に読み取れば良いのか?失敗回避の注意点を整理しましょう。
失敗要素として考えられるものも、全てが新築完成後直ぐにマイナス面が浮上する訳ではありません。
寧ろ平屋のメリットを享受していたはずなのに、いつしかマイナス面が頭をもたげ出すという構図であったとしたならば、新築時には気付けず無警戒であり当然対策も成されないでしょう。
平屋間取りのウィークポイントにもなり得るプライバシーの課題はこうした側面を持ち合わせる所が厄介な問題です。
まず一番は音の問題が挙げられます。
先の間取り図からも読み取れる通り各室とLDKの間は扉1枚で隣接しています。
そうなると、特別な防音対応の建具でも採用しない限りは相互の室間の音はほぼ筒抜けになります。
「勉強しているのにテレビがうるさい」
「早く就寝したいのにリビングの会話がうるさい」
「自宅にいるのに音楽はヘッドホンで」
「早起きすると家族を起こしちゃうから…」
子供が小さいうちは気にならなかったものも、成長と共に生活のスタイルが変化していく過程でこうした現象を日々感じる様になり始めます。
また、家族同士の接点の多さも時には負担に感じる事もあるのではないでしょうか?
ひとりになりたい時にも常に互いの気配から距離が取れないというのでは窮屈に感じることもあるでしょう。
こうした諸々が新築完成後の暮らしの中で家族相互のストレスの種となり、寧ろ我が家が居心地の悪い場所になってしまったら・・・
勿論、全ての方々がこうした現象をマイナスと捉えるか否か評価は一様ではないはずです。
しなしながら、新築完成後に時を経てこれらを失敗と気付いたとしたならば、それはやはり残念な話です。
予め自分自身の生活に置き換えてみてはいかがでしょうか。

生活シミュレーションで見える間取りの注意点

家づくりの中で間取り図を検討していると、どこに注目すれば良いのか迷ってしまう事は無いでしょうか?
部屋の数や広さ、対面キッチンや洗面所への動線には注意深く目を向けたつもりでも、新築完成後の暮らしの中で初めてアレコレ失敗に気付いてしまう事は大なり小なりよく起こりがち。
今回取り上げた平屋の間取りの注意点も同じ話です。
予め注意すべき点が分かっているのであれば熟慮の余地もありますが、どこに注意を払えば良いのかも気付かなければ対処のしようもありません。
そんな時に試してみたいのが間取り図から新築完成後の暮らしの様子をイメージし、生活シミュレーションを立ててみる事です。
間取り図上で朝起きて洗面し〜朝食を食べ〜着替えて…といった様に生活の流れをイメージしてみます。
そうしたシミュレーションの中で
「週末の夜はリビングで映画を楽しみたいけどうるさいかな」
「子供の受験勉強の時には気遣いが大変そうかも」
こんな間取りに起因する課題が発見できるかもしれません。
特に平屋を希望される方によくみられる傾向として、先にメリットでも触れた様に子供の幼年期と自らの老後期のイメージに集中し過ぎる余り、家族の成長過程への目配りがバランスを欠く事も起こりがちです。
予期せぬ失敗や後悔を避ける為には家族の成長節目節目をイメージしながら、こうしたシミュレーションを立ててみる事で間取りに潜む注意点が見えてくる事でしょう。

・失敗しない家づくりとは?

新築平屋間取りの外観
誰もがマイホームの家づくりを失敗や後悔など残さずに満足できる形に成功させたい気持ちは同じはずです。
しかしながら、残念な事に時に失敗談や後悔話が聞こえてくるのも事実です。
こうした失敗の原因は一口に言い表せるものではありませんが、今回のテーマである平屋の間取りに関連する要因として「思い込み」に端を発する失敗に注意喚起したいと思います。
冒頭にも触れた通り平屋の住まいはコアな支持層を持つ反面、メリット、デメリットを精査すると必ずしも万人向けな間取り形態とは言えない部分も持ち合わせています。
つまり住まう人の暮らし方によって合うケース合わないケースに分かれるという事です。
しかしながら、新築平屋のメリット部分のみに評価が集中してしまいデメリット部分が見落とされれば判断を誤る事も起きてしまいます。
こんな失敗事例が「新築するなら平屋の住まいがベストだ!」と強い支持から家づくりが始まる平屋の新築計画には多くみられ、よくよく精査してみれば「必ずしも平屋の住まいで無くとも良かった」という思い込みは起こりがちです。
「こうすべき」「ああすべき」という強い思いは自らの家づくりへの「こだわり」とも言えますが、ややもすると「思い込み」の面が先行してしまう事は注意点です。
思い込みが前面に出すぎてしまえば、本来手段の一つに過ぎないものが目的化してしまい、イタズラに選択肢を狭める結果となってしまいます。
特に住まう人の暮らし方によってメリット、デメリットが色濃く現れやすい平屋の住まいは、冷静に皆さんの生活との相性を確認しながら選択をしていく事が失敗しない家づくりの秘訣ではないでしょうか。

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専門家

栗山琢磨(住宅購入・家計設計コンサルタント)

パートナーズライフプランニング

ハウスメーカーでの経験とファイナンシャル・プランナーの知見から、住宅購入をサポート。将来を見通した資金計画から、土地探し、間取り図作成、住宅会社選びまでトータルで相談に応じ家づくりの満足度を高めます。

栗山琢磨プロは河北新報社が厳正なる審査をした登録専門家です

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