下顎前歯部へのインプラントを通して

堀克昌

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テーマ:インプラント


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下顎前歯部にインプラントを行なうことは、他の部位と比較すると頻度はそれほど多くはありません。

他の部位の歯牙がなくても、下顎前歯部には歯が残っている方も少なくないくらいです。

(上顎前歯部だけ歯が残っている患者さまがいてもよさそうですが、個人的にはあまりそのような方にお会いした記憶がありません。)


それでは、なぜ下顎前歯部には歯が残りやすいのでしょうか。

一般に、歯が残るかどうかは、歯磨きの上手下手だと考えられます。

でも、それだけで歯の寿命が決定されるのであれば、上顎前歯部は下顎前歯部よりも歯磨きが難しいのでしょうか。

個人的には、歯が残るかどうかには、歯磨き以外の要因も絡んでいると考えています。

たとえば、噛みしめを行なった場合に、上下の歯牙には当然のことながら、同じ量の咬合力がかかります。

しかしながら、上顎前歯部と下顎前歯部では歯の生えている方向が異なります。

また、歯牙は基本的には横向き方向の力には弱いという特長があります。

こうして考えると、噛みしめを行った場合(真っすぐ咬んだ場合)では、上顎前歯部には下顎前歯部よりも、歯の長期保存にはマイナスとなる横方向の力(負担の重い力)がかかります。

でもこの時点では、実は上顎前歯部にはさほど大きな影響はありません。

これは上顎前歯部が下顎前歯部よりも形態学的に有利であることで説明が付きます。

上顎前歯部は下顎前歯部よりも、歯根の直径は太く、歯根の長さが長いために、下顎前歯部から受ける”突き上げ”に耐えられるようになっているのです。

しかしながら、そこを基準に歯ぎしりをする動きを行なった場合、上顎前歯部には咬みしめを行なった時よりも、多くの横方向の力がかかります。

これはすなわち、歯ぎしり癖がある方では、上顎前歯部は選択的に歯牙がなくなる運命にあるということになります。

また仮に歯牙を喪失する結果にならなくても、上顎前歯の唇側には、平均で0.9ミリの歯槽骨しか存在していないので、歯槽骨の吸収とそれに伴う歯肉の後退が生じやすいです。








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