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設計の「なぜ」を残していますか

葛井信行

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テーマ:技術、設計、業務

納入先から、過去に設計された現行品の変更依頼を受けたことがありました。

内容自体は一部の仕様変更。しかし検討を進めるうちに、ある疑問に突き当たりました。

「なぜ、現行品はこの仕様になっているのか?」

変更依頼とも関係する重要な部分でしたが、その理由が分からないのです。

設計はずいぶん昔のもので、当時の担当者はすでに退職。社内に残っていたのは、最終仕様書と最終図面のみ。そこには“結果”はあっても、“経緯”はありませんでした。

納入先にも確認しましたが、状況は同じ。当時の担当者は既に在籍しておらず、現在の担当者では経緯は分からないとのことでした。

結局どうなったか。

変更箇所だけでなく、関連する部分も含めて一から再検討することになりました。安全性、性能、コスト、規格適合性――すべてを改めて確認し、納入先の了承を得ながら仕様を再決定。単なる「変更対応」のはずが、実質的には「再設計」に近い作業となり、多くの時間と労力を要しました。

■ この経験から得た教訓

仕様決定や設計フィックスまでの「なぜ」を必ず残すこと。

 ・なぜこの方式を採用したのか
 ・なぜこの数値にしたのか
 ・なぜ他案を採用しなかったのか
 ・どんな懸念があり、どう判断したのか

議事録や打合せ記録だけでなく、検討過程のメモや考察も重要な技術資産です。
設計の成果物は図面や仕様書ですが、本当に価値があるのはそこに至るまでの思考の履歴です。

たとえ担当者が在籍していても、数年後に詳細を正確に説明できるとは限りません。時間が経てば経つほど、記憶は薄れます。そして人は必ず異動し、退職します。

特に人事異動の多いこの時期こそ、注意が必要です。

「今わかっているから大丈夫」
この油断が、将来の大きな手戻りを生みます。

設計の“完成”とは、図面を出図することではありません。
設計意図を次世代に渡せる状態にして、はじめて完成だと私は考えています。

あなたの設計には、「なぜ」が残っていますか。

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葛井信行
専門家

葛井信行(電気技術コンサルタント)

オフィスKZI

ファクスのメンテナンスやセキュリティー機器、エンクロージャーなどの設計業務に45年従事。培った電気技術の知見を研修やコンサルティングで中小企業や個人事業主に還元し、社員教育や新規事業立ち上げを支援する

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