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葛井信行プロは三重テレビ放送が厳正なる審査をした登録専門家です

コストダウンと改善・改良の余地を残した設計

葛井信行

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テーマ:技術、設計、業務

設計を一旦フィックス(確定)しても、その後に「もっとコストを下げられそうだ」「こうすれば性能が上がる」といった改善・改良のアイデアが浮かぶことはよくあります。
本来であれば、それらを反映して再設計するのが正論です。
しかし、現実には 「本当に今、やり直すべきか?」 を冷静に判断する必要があります。

1.要求仕様を満たしていない場合

この場合は、当然ながら再設計すべきです。
ただし、設計変更には時間とコストが伴うため、関係者間でスケジュールやコスト負担を詰めることが重要です。

2.時間的制約がある場合

要求仕様を満たしているなら、まずはその設計で製品化するのが現実的です。
コスト目標を達成できていない場合は、関係者との調整や対応策の検討が必要となります。

3.コストが目標を上回っている場合

もし時間に余裕があるなら、再設計を検討する価値があります。
ただし、改善効果と再設計に要するコスト・期間を天秤にかけ、最終判断を行うことが肝要です。

4.要求仕様とコスト目標を達成しており、時間にも余裕がある場

私の考える「正解」は、いったん現行設計をフィックスし、思いついたコストダウンや改良案を別途検討することです。
つまり、将来のコストダウンや改善・改良の余地を残した設計にしておき、次期モデルや改版時に活かせるようにしておくのです。

将来の改善に向けて

製品を市場に出すと、想定外の問題や新たな要求が発生することは珍しくありません。
そのため、要求仕様を満たしているなら、まずは製品を世に出すことを優先し、
設計段階で思いついた追加改善は、後の改良フェーズでまとめて行うのが現実的です。

納期遅延による失注リスクや、市場投入の遅れによる機会損失も考慮すべきです。
最初から100点満点の製品を目指すより、合格点の設計でタイムリーに製品化し、その後改良を重ねる方が結果として良い成果につながる場合が多いでしょう。

将来のコストダウン要求に備える

コストダウンの要求は、社内から出る場合もあれば、納入先などの社外から出ることもあります。
経験曲線効果による自然なコスト低減もありますが、それだけでは対応しきれない場面も多いものです。

そのため、優れたコストダウン案を思いついたら、すぐ実行せずに温存しておくのも一つの戦略です。
将来、コストダウン要求が出た際に、あらかじめ用意していた改善策で即応できるようにしておくのです。

「納入先からの強いコストダウン要求に応じるため、泣く泣く利益を削る」という話はよく耳にします。
そうならないためにも、コストダウンの“引き出し”を準備しておくことが、設計者・技術者としての重要な備えだと思います。

まとめ

設計段階で大切なのは、
今すぐできる最善」と「将来の改善の余地」を両立させることです。
柔軟性を持たせた設計は、将来のコストダウンや改良への道を拓きます。

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葛井信行
専門家

葛井信行(電気技術コンサルタント)

オフィスKZI

ファクスのメンテナンスやセキュリティー機器、エンクロージャーなどの設計業務に45年従事。培った電気技術の知見を研修やコンサルティングで中小企業や個人事業主に還元し、社員教育や新規事業立ち上げを支援する

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