相続の話し合いが辛いときの対処法
本当に御無沙汰しております。
弁護士の荻原です。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
当事務所は、これまで多くの困難な業務を抱えておりましたが、
少しずつ解決に向かってきております。
さて、今回のコラムでは
「いまからできる!自筆証書遺言の作成」と題して、
簡単な自筆証書遺言の作り方を教えていきます。
なお、民法が改正され、
2019年1月13日に自筆証書遺言の作成方法が緩和されました。
このコラムではその内容・方法を取り入れています。
1.(遺言作成のメリット)
詳しくはこちらをご覧ください。
https://mbp-japan.com/kyoto/ogihouritu/column/2607211/
簡単にいえば、相続人同士の争いを減らし、
スムーズな財産の承継を実現させることがメリットになります。
2.(自筆証書遺言と公正証書遺言の違い)
詳細は省略しますが、簡単にいえば、自筆証書遺言は、
「自分で無料で作ることができる(きっちり作らなければいけない)」
遺言書です。
公正証書遺言は、逆に、
「公証人にきっちり作ってもらうことができる(但し有料)」
遺言書です。
ですので、自筆証書遺言は、「きっちり作ってみよう」という意欲があり、
かつ、無料で作成することを希望する方に向いています。
(意欲があれば、きっちり作ることはそれほど難しくありません)
3.(自筆証書遺言の作成の心構え)
遺言書は、何度でも作ることができます。
そして、内容を変更した場合、後に作った遺言のみ効力を生じます。
ですので、「まず、遺言を作ってみる」ことが重要です。
あとで変更できるのですから。
4.(具体的な方法(1)自分の財産のリストアップ)
まず、自分の財産をリストアップして、「財産目録」を作成します。
この「財産目録」は、パソコンで作っても構いません。
専門家の方に作ってもらっても構いません。
(今回の改正によって認められました)
財産としては
(1)不動産
(2)預貯金
(3)動産(いわゆる「物」)
等が考えられます。
なお、いわゆる生命保険金は、法律上は「遺産」ではなく、
遺言書に書いても書かなくても、
保険契約で定められた受取人が遺産とは別に取得します。
(1)についてですが、特に不動産をお持ちの方は、
ここの記載をしっかりしておかないと、
相続登記ができないので注意が必要です。
法務局で「全部事項証明書」を入手し、その記載を元に作成します。
記載すべき事項と記載例(あくまで一例です)は以下の通りです。
(戸建の場合)
1 所 在 京都市伏見区竹田久保町
地 番 21番
地 目 宅地
地 積 100㎡
2 所 在 京都市伏見区竹田久保町
家屋番号 21番
種 類 居宅
構 造 木造草葺平家建
床 面 積 60.00㎡
(マンションの場合)
1.一棟の建物の表示
所 在 京都市伏見区竹田久保町21番7号
建物の名称 ビル・マルジョウ
2.専有部分の建物の表示
家屋番号 竹田久保町21番7号
建物の名称 ビル・マルジョウ
種 類 居宅
構 造 鉄骨鉄筋コンクリート造4階建
床 面 積 3階部分60.00㎡
3.敷地権の目的である土地の表示
所在及び地番 京都市伏見区竹田久保町21番7号
地 目 宅地
地 積 300㎡
4 敷地権の表示
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 20分の1
不動産の表記の話が長くなってしまいました。すみません。
なお、財産目録(不動産)部分だけ専門家に作成してもらうこともできますので、
活用されることをお勧めします。
5.(具体的な方法(2)誰に相続・贈与させるかの検討)
次に、誰に相続・贈与(遺贈といいます)させるか、を検討します。
法定相続人に相続させる場合が多いと思いますが、そうでない場合もあるかと思います。
ご自身の意思に基づき決めるのが良いです。
ただ、法定相続人のうち、配偶者・子・直系尊属には、
遺留分(法定相続分の2分の1)が認められています
(遺言があっても取得できる範囲の財産のことです。詳細な説明は割愛します)。
ですので、配偶者・子・直系尊属に一切財産を相続させないという内容の遺言は、
将来、紛争を生じさせる可能性が高いと思われます。
6.(具体的な方法(3)誰にどの財産を相続・贈与させるかの検討)
次に、相続・贈与させる者のうち、誰にどの財産を相続・贈与させるかの検討を行います。
遺言作成の中で最も難しい作業です。
基本的には、不動産がある場合は今後不動産に居住する可能性が高い者に相続させるのがベストだと考えられます。
ただ、例えば配偶者に不動産を相続させ、子供に預金を相続させた場合、
配偶者の生活資金が不足する、といった事態も考えられます。
そのため、相続法の改正により、
「配偶者には配偶者居住権のみ遺贈して、居住を確保し、預金は他の相続人で分ける」
という方法が取れるようになりました。
しかし、この方法を取ることができるのは、2020年(令和2年)4月1日からです。
ですので、この方法を希望する場合は、自筆証書遺言の作成は、少し待った方が良いこととなります。
なお、先程の説明の通り、法定相続人のうち、配偶者・子・直系尊属には、
遺留分が認められています。
ですので、配偶者・子・直系尊属に遺留分(法定相続分の2分の1)
を下回る相続しかさせないという内容の遺言は、
将来、紛争を生じさせる可能性が高いと思われます。
7.(具体的な方法(4)具体的な遺言書の文言の作成)
ここまで来ればあと一息です。
具体的な遺言書の文言の作成を行います。
(1)1名にのみ相続させる場合
「別紙財産目録記載の遺産を含む一切の遺産を○○に相続させる」
のみで構いません。
(2)Aに不動産を相続させ、その他のB~Dに他の預金を相続させる場合
1 別紙財産目録1及び2記載の不動産はAに相続させる
2 別紙財産目録3ないし5記載の預貯金は、BないしDに、それぞれ3分の1の割合で相続させる。
3 別紙財産目録6記載の動産、及び別紙財産目録に記載のない一切の相続財産はAに相続させる。
などという記載が考えられます。
また、遺言は、遺言を実現させるために
「遺言執行者」を指定しておくことが有益です。
遺言執行者は単独で預金の引出しなどを行うことができるからです。
現行の制度においては、遺言執行者は、
最も多くの遺産を遺言によって取得する者を指定しておくのが
良いかと思います
(遺言執行の負担が大きければ、弁護士などに
遺言執行業務の代理を依頼することもできます)。
他方、。弁護士を遺言執行者に指定した場合、
その弁護士は中立公正な立場で業務を行いますので、
特定の相続人がその弁護士に相談や依頼をすることができなくなります。
8.(具体的な方法(5)遺言書の作成)
まず、先程作った内容で、遺言書の本文を作成します。
用紙はどのような用紙でも構いませんが、
メモ用紙や裏紙などは避けた方が良いです。
本当に遺言書を書くつもりだったのか争われるからです。
遺言書の本文は、すべて、自署(自ら書く)しなければなりません。
最後の署名部分だけ自署すればいいのではなく、全部自署することが必要です。
遺言書は何枚に渡って書いても構いません。
記載を間違えた場合は、訂正を行うこともできますが、要件が厳しいので、
素直にもう一度書いた方が良いかもしれません。
本文を作成すれば、以下の順序に従って、要件を整えていきます。
(1)本文の末尾に作成した日付(正確な日付。「吉日」はだめ)を記載
(2)本文の末尾に署名捺印(印鑑は認印で良いです)
(3)作成した財産目録を印刷
(もちろん自署でも構いませんが、
パソコンで作成するか作成してもらったものを印刷する方が遙かに楽です)
(4)財産目録に1枚ずつ署名捺印を行う
(署名も捺印も必要です。1枚ずつ必要です)
(5)(表紙)→本文→財産目録の順にホチキスなどで綴る
なお、表紙は要件としては不要ですが、
表紙をつけた方がわかりやすくなります。
なお、記載例は法務省のホームページにも掲載されていますので、
参考にして頂ければと思います。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html
取り急ぎ、上記の通り、自筆証書遺言の作成の解説を行いました。
是非、遺言の作成の参考にして頂けますと幸いです。
もちろん、どの段階においても、
私(弁護士荻原卓司)に相談することもできますので、
遠慮なくご相談願えますと幸いです
(相続に関する法律相談については、初回30分無料で実施しています)