借金が返せなくなりそうなとき、どうすればいい?
気温が上がったり下がったり不安定な今日このころですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
今回のコラムは、私、荻原が平成26年10月から平成28年9月まで
2年間取り組んできた
家事調停官(非常勤裁判官)に関する
任期満了のご報告と御礼をさせていただきたく存じます。
そもそも、家事調停官とは
弁護士の職務を行いつつ、
週に1回、家庭裁判所に出勤し、家事調停のみを担当する調停官のことを指します。
家事調停は、通常、裁判官1名と民間の方から選ばれる調停委員2名の
合計3名の調停委員会によって進行します。
ただ、裁判官は、多くの事件を担当し、
また多くの裁判官は家事調停以外の仕事も行っているため、
調停に立ち会うことは多くありません。
その結果、大部分の家事調停が、
裁判官ではない調停委員によって進行されていることになります。
他方、家事調停官は、実際に調停委員2名と共に調停に立ち会い、
当事者の声に耳を傾け、
調停を解決するようにしていくことが期待されています。
ですので、私はできる限り調停に立ち会い、
当事者の方々や調停委員の方々と共に、解決の方法を考えるようにしていました。
私が立ち会った家事調停の9割以上が離婚調停またはそれに類するものでした。
当事者の方々の多くは、夫婦の生活において、
様々なつらい体験をされて来られました。
その気持ちを受け止め、感情を否定しないことを心がけました。
ただ、調停ですので、双方が合意しなければ成立いたしません。
お互いの当事者が主張が対立したままですと、調停は成立しないので、
そこをどうするか、いつも考えておりました。
私が調停成立のために心がけていたこととして、以下の3つがあります。
1.事実関係を確認すること
2.1.の事実関係を踏まえ、調停が成立しなかった場合、
訴訟や審判でどのような結果になることが予想されるかを
常に考え、当事者に情報提供すること
3.1.の事実関係と、2.の結果の予測を踏まえ、
当事者双方にとって、デメリットよりもメリットの方が
上回る調停の内容はどのようなものかを考えること
です。
具体例を挙げて説明いたします。
例えば、他に好きな人ができて別居を始め、
早期の離婚を主張する会社員の夫と、
離婚するかどうか迷っている妻の場合
1.まず、夫の収入や貯金、および妻の感情などの事実関係を確認します。
2.その上で、調停が成立しなかった場合は
(1)妻は夫に対し離婚成立まで婚姻費用を支払わなければならない
可能性が高いこと
(2)夫が訴訟を提起しても離婚の認容判決がなされる可能性は低いこと
などの情報提供を行います。
3.その上で、「妻にとっては離婚と婚姻費用の終了というデメリットを
上回るほどの金銭的な保障がなされるメリットがあれば、
離婚に応じる可能性がある」
ことを、夫に説明し、
夫は、離婚というメリットを得るため、どこまでの金銭的給付(デメリット)
を行うことができるかを
考えてもらうことを勧めていました。
私は、人の価値観は多様であると思っています。
自分の価値観を押し付けてはいけないと思います。
ですので、上記の事例において、
夫に「離婚したいなんて虫が良すぎる」ということをいうことはありません。
また、妻に「こんな男とは離婚するのがよいと思います」
ということもいたしません。
多くの人は、価値観を押し付けられても和解に応じることはなく、
デメリットを上回るメリットがあって、初めて、和解案・解決案に応じます。
ですので、どのような和解案であれば、当事者全員にとって
デメリットを上回るメリットを感じることができるか、ということを
常に考えることが、
紛争を解決する立場の者としては重要であると考えております。
このことは、家事調停官に就任する前から心がけていたことですが、
家事調停官に就任し、多くの事件に立ち会い、
より一層、大切な事だと気づき、実践していくことができました。
私は、「できるだけ調停を解決させ、多くの人を幸せにする」という志望動機で
家事調停官を始めました。
そして、多くの調停に立ち会い、調停委員や裁判官と協力し、がむしゃらに考え、
走ってきました。
不十分なこと、力不足なこと、反省すべきことも多かったですが、
多くの調停を解決でき、また解決に近づけることができたと思います。
そして、平成28年9月30日をもって、
家事調停官としての2年間の任期を終えることになりました。
無事に任期満了の日を向かえられたのも、
裁判官・書記官・調停委員・調査官など、京都家庭裁判所の皆様や
当事務所のスタッフ、そして、家族の支えなど、
多くの方の支援があったからにほかなりません。
心から、感謝いたします。
「勉強になるから」「経験になるから」という志望動機で
調停官になる方が多い中、
私は違う志望動機で調停官になり、必死に事件解決に取り組みました。
そして。。。本当に、勉強に、経験になりました!
これからも、この経験を生かし、さらに弁護士業務に精進いたしますので、
皆様、今後とも、よろしくお願いいたします。