借金が返せなくなりそうなとき、どうすればいい?
猛暑が去り、涼しくなったのを喜んでいたのもつかの間、肌寒いと感じる日も多くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
どんどん寒さが増すこれからの季節、風邪を引かぬよう、気を引き締めて頑張っていきたいと思います。
さて、法律相談において、よく「借金の返済に行き詰まり、困っているが、破産すると家を失うので避けたい」「破産しないで、個人再生を行いたい」とのご相談をお聞きします。
このようなご希望を伺った場合、そのような方法が可能かを含め、一緒に考えさせていただくことになります。この場合に、個人再生が可能かを判断するについて、ポイントとなるのが「履行可能性」です。
以下、(1)そもそも個人再生手続とはどういった手続なのか、メリットは何か、について述べた上で、(2)履行可能性の判断基準や、弁護士がどのように手続に関与するか、についてお話ししたいと思います。
1 個人再生の概要
個人再生とは、大まかに言うと
①借金のうちの一定額(事案によりますが、最低でも100万円になります。減額されるのは正確には借入金のみならず、立替金や保証債務なども含まれますが、わかりやすいように借金といいます。)を
②原則として3年で返済する計画(再生計画)を立て、
※この計画について、裁判所や債権者が認める必要があります。
③計画通り返済できれば残額は免責される(払わなくて良くなる)という制度です。
例えば、借金が400万円あり、財産が100万円以下の場合、100万円を3年で支払うことができれば残額の300万円は払わなくてよくなります。また、破産にはない個人再生の利点として、住宅ローンに関する特則の要件を満たせば、住宅ローンの支払いを続けながら、居住している建物を手放さずに済むことができます。
2 履行可能性とは
(1)履行可能性の意義
前述の通り、個人再生では、(減額した)借金の一部を、3年かけて支払う、という再生計画を立てます。
履行可能性とは、「再生計画で定めた通り、一定額を支払っていける見込み」のことを指します。
(2)履行可能性の重要性
履行可能性は、個人再生において、非常に重要です。なぜなら、「履行可能性があると裁判所が判断しないと、個人再生の手続きが進められない」からです。
せっかく費用と時間をかけて個人再生を弁護士に依頼したにもかかわらず、履行可能性が確保できなければ、手続きが進められないのです。
このようなリスクを考えた場合、「本当に再生計画の履行可能性があるのか」という判断は極めて重要と言えます。
3 履行可能性の判断基準
(1)履行可能性の判断要素について
さて、履行可能性があるか否かを判断する要素としては、「弁済原資」がポイントとなります。
「弁済原資」とは、毎月の収入から、生活費等を支払ったあと、いくら弁済に回せるかです。
一般的には、弁済原資が、弁済額より高ければ高いほど履行可能性は高くなります。
(2)履行可能性と、弁護士の関与について
ア 履行可能性があるか否かの検討におけるアドバイス
個人再生を希望される場合、弁護士が助力できることとしては、履行可能性があるか否かを検討していくことが考えられます。家計の状況や、収入、支出など、様々な要因を聴き取り、考慮して、仮に個人再生を行った場合、どの程度の弁済原資を確保できるかを判断いたします。資料が十分でなく、判断できない場合は、資料等の収集をお願いすることもあります。
また、関係資料から、個人再生は難しそうだ、という場合には、破産手続のご検討を提案させていただくこともあります。
イ 履行可能性についての、裁判所への説明
次に、履行可能性がある、と判断した場合、再生手続の中で、裁判所に対して、「本件はこのような事情があり、家計はこのような状況で、弁済原資はこの程度確保できるから、きちんと支払っていける」ことを書面等で説明していきます。裁判所に対し、今後はきちんと支払っていけるのだ、と納得してもらえるよう説明を行うことを心がけております。この説明をきっちり行うことによって、円滑な個人再生の実現をしていくことができます。
4 終わりに
個人再生における履行可能性は、相談者様ごとの家計収支や、家族構成など、諸般の事情を総合的に判断することになります。
個人再生を検討されている方は、今後どの程度の金額であれば返済が可能なのかということも含め、是非一度弁護士に相談されることをおすすめいたします。