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荻原卓司プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

【相続】空き家問題の原因と相続の対策

荻原卓司

荻原卓司

暑くなったり冷えたりして
体調を崩しやすい時期ですが、
皆様、いかがお過ごしでしょうか。

今回のコラムでは
現在問題になっている「空き家」問題について
私なりに原因を分析し、
併せて対策を考えてみたいと思います。

現在誰も居住しないまま長期間放置されている「空き家」は
平成20 年住宅・土地統計調査によると,
全国で約757万戸、京都府で17万戸であり、
京都府では、13.1%が空き家とのことです。

どうして空き家が生じるのか、その原因は、
様々な分析がなされています。

私は、大きな原因の一つとして
「空き家の所有者の死亡後、長期間、遺産分割協議がなされていないこと」
が、あるのではないかと思います。

空き家を使用・処分するためには、
法律上、所有者全員の同意が必要です。

空き家の所有者が死亡した場合、
その所有者の相続人全員の同意に基づいて
遺産分割協議を実現させる必要があります。

ところで、法定相続人(遺言が存在しない場合の相続人)は
(1)配偶者(常に相続人)
(2)第1順位
   →子(子が死亡している場合は孫・曾孫等)
(3)第2順位(=被相続人の死亡時に子・孫・曾孫等がいない場合)
   →直系尊属(ほぼ100%父母の双方又は片方)
(4)第3順位(=被相続人の死亡時に子も直系尊属もいない場合)
   →兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合はその子)
です。

多くの事案で配偶者と子が相続するのですが、
子がいない家庭も珍しくありません。
そうすると、(4)の兄弟姉妹が相続人になるケースも多いです。

そして、被相続人が死亡し、その後、法定相続人のうち1名死亡した場合は、
さらに、「被相続人の法定相続人たる地位」を、
死亡した者の法定相続人が、法定相続分の割合に従い、相続することになります。

書いていて、とてもややこしくなってきたので、
相続人が多数になってしまう場合を、事例で説明します。

【登場人物】
 X1・・・男性。不動産の所有者。89歳。平成25年3月1日死亡
 X2・・・女性。X1の妻。87歳。平成27年4月1日死亡
 X1とX2の間の一人娘はすでに死去。子はいない。

 A1・・・X1の兄。平成24年すでに死亡
 A2・・・A1の子
 A3・・・A1の子

 B1・・・X1の弟

 C1・・・X1の父親の子(母親は別)

 D1・・・X1の父親の子(母親は別)平成20年すでに死亡 
 D2・・・D1の子
 D3・・・D2の子

 E1・・・X2の母親の子(父親は別)平成21年すでに死亡
 E2・・・E1の子。平成18年死亡
 E3・・・E2の子
 E4・・・E2の子 
 E5・・・E2の子

この時点で、「しまった、事例にしてもややこしかった」と思いましたが、
せっかくですので、解説を続けます。

上記の事案で、平成27年4月14日現在、
この不動産は、
誰が、どの割合で、相続していることになるのでしょうか。

まず、X1の死亡時の相続人は、
X2(配偶者)
A2(兄弟姉妹(A1)の子)
A3(兄弟姉妹(A1)の子)
B1(兄弟姉妹)
C1(兄弟姉妹。なお、異母兄弟も相続人ですが、相続割合は半分です)
D2(兄弟姉妹(D1)の子)
D3(兄弟姉妹(D1)の子)
になります。

法定相続分に基づく持分割合は
X2(配偶者)       =4分の3
A2(兄弟姉妹(A1)の子)=4分の1(兄弟姉妹全体の法定相続分)
               ÷6(兄弟姉妹数+2)
               ×2(異母兄弟姉妹の2倍取得できるので)
               ÷2(子2名)
              =24分の1
A3(兄弟姉妹(A1)の子)=24分の1(計算は同様)
B1(兄弟姉妹)      =12分の1
C1(異母兄弟)      =24分の1(B1の2分の1)
D2(兄弟姉妹(D1)の子)=48分の1
D3(兄弟姉妹(D1)の子)=48分の1
となります。

さて、その後、X2が死亡していますので、
この分の相続が発生します。
X2の法定相続人は、X2の兄弟姉妹のE1の孫であるE3~E5です。
法定相続分に基づく持分割合は
E3 = 4分の3(E1が相続したX2の持分)÷3=4分の1
E4 = 4分の1
E5 = 4分の1
です。

よって、まとめますと、本件不動産は、以下の者が、以下の持分に基づき相続分を有していることになります。

A2:24分の1
A3:24分の1
B1:12分の1
C1:24分の1
D2:48分の1
D3:48分の1
E3: 4分の1
E4: 4分の1
E5: 4分の1

この9人で、上記の持分を踏まえた遺産分割協議を実現させないと、
本件不動産を売却することができないのです。

本事例は、実際にあったケースを『簡略化』したものです。
簡略化したケースであっても、
X1(夫)とは父親が違う兄弟及びその子であるC1・D2・D3と、
X2(妻)の兄弟の孫であるE3,E4、E5とは
面識もなく、話し合いを行うことは極めて困難であることは
お分かりいただいたのではないでしょうか。

このように、遺産分割協議が困難な「ややこしい」事例は、
それほど、珍しくなく、よくあるケースだと思います。

では、どうすれば、このような「ややこしい」事例でも
空き家の処分などの対策を行うことができるのでしょうか。

それは、遺産分割協議を成立させるために
専門家に依頼することが、もっとも費用対効果が良いと思います。

専門家に依頼すると、どのような活動を行うか、ご説明いたします。

例えば、私が上記の事案でA2から依頼を受けた場合、
以下の活動を行うことが考えられます。

(1)まず、X1,X2の相続人の調査を行います。
(2)次に、依頼者と協議し、本件不動産の価格を決定します。
   ここでは1200万円としておきます。
(3)次に、相続人全員に、
   『金銭と引き換えにA2が単独で不動産を取得する』
   という遺産分割協議に同意してほしいとお願いします。
   例えば、E3には、不動産の価格の4分の1に近い
   金銭の支払いを提案します。
(4)その結果、全員の同意が得られた場合は、
   遺産分割協議を実現させ、A2が不動産を単独で所有することになります。
(4)同意が得られない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立を検討します。

依頼者が所有権者となった後、空き家を処分する場合は、
京都市から一定の要件のもとに補助もございます。
http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000167423.html

今後の固定資産税の負担や、
空き家を処分せず老朽化していくことによる損害賠償の危険なども考えると、
専門家による遺産分割協議の実現を経て、
いまのうちに、空き家を処分しておくことが
有益であると考えます。

相続人間での円満な解決が実現し、
「空き家」を解消させて、
関係者のみんなが幸せになれば、と思います。

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荻原卓司
専門家

荻原卓司(弁護士)

オギ法律事務所

当事務所は、これまでの1000件以上の解決事例を踏まえ、弁護士の熱意と迅速な事務処理能力を活かし、特に住宅を残して借金を減額できる個人再生等の借金問題や交通事故の問題につき、力を入れております。

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