尋問事項

中隆志

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 自分の手控えの尋問事項は作成するが、依頼者には渡さないことにしている。
 以前、どうしても不安だという方から懇請されて尋問事項を渡したところ、記憶に基づいて話すのではなく、尋問事項でどうであったかというように考えて、頭が真っ白となり、尋問が失敗に終わったことがあるためである。
 そもそも、記憶に基づいて話をするので、その場で考えて答えてもらえばよいというように話をしている。
 さらにいうと、事務所で打合をしても、現場では緊張があったりしてその通りに答えられないことも多いので、尋問をする私の方はその場で質問を組み替えて質問していくので、尋問事項の手控えは、聞き漏らしがないようにする程度のものでしかないのである。

 以前、弁護士が訴えられた事件で、当該弁護士を本人尋問したことがあるが、打合とは異なり、聞いていないことばかり話をするため、その場で尋問事項を大幅に組み替えざるを得なかった。裁判官も、おそらく、内心は「そんなこと聞かれてないでしょう」と思っていたのだと思うが、事件自体が当方が勝訴することは確実な事件でもあり、当該弁護士が大ベテランであったということもあり、黙っていてくれた。
 相被告の代理人として聞いていた故中村利雄先生は、尋問終了時、「あの先生、尋問むちゃくちゃやったな。人の子やったんやな。」とニヤリと笑っていた。
 日本語の特質として、結論だけ答えるのはそもそも難しいところもあるのだが。
 何年やっても、尋問は難しい。

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