読書日記「街とその不確かな壁(上)(下)」

中隆志

中隆志

 新潮文庫。村上春樹。

 文庫版が出たので、ハードカバーでは読んだのであるが、再読しようと購入しておいた。
 いい物語には、人の心を癒やす力があると思っていて、これも再読しようと思っていたうちの一つである。

 そして、人間の記憶力というのは不確かなものであり、しばらくすると、下手をするとすっからかんに話を忘れていたりするものなので、間を空けて読むと、再度楽しめたりもする。
 この物語は、話の大枠は覚えていたのであるが、細部になるとやはり忘れていて、かつ、ハードカバーで読んだ時は、村上春樹の久しぶりの長編ということで乾いた地面が水を吸い込むように勢い込んで読んでいたため、今回は表現一つ一つまで味わいながら読んだ。
 
 いろいろとこうではないか、ああではないか、街で図書館を開ける役割の少女は現実世界では死んでいるのではないか、しかしそちらが影だとするとどうなのだとか、イエローサブマリンの少年はどうやって自宅から抜け出し、実際の身体を現実世界に置いてきたのか、読んだ後でも謎は残ったままの部分も多々あるが、それが村上春樹作品の特徴である。

 文章のリズムも読んでいて心地よく、リズムが合わない作家の作品は読んでいてつらいので、そういうところでも多忙な12月の中、心が癒やされた。

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